2024年9月24日

『グローバルで通用する「日本式」マーケティング』中島広数・著 vol.6567

【味の素流。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4800591767

本日ご紹介する一冊は、味の素で低迷していた看板事業の「Cook Do」を任され、「Cook Do きょうの大皿」(「豚バラ大根用すき焼き煮」「ガリバタ鶏(チキン)用ガーリックバター醤油炒め」など)はじめヒット商品を次々と生み出した、元・味の素マーケティングマネージャーによる一冊。

「これからはアジアの時代」と言われて久しいですが、著者はアジアでの味の素のマーケティングにも携わっていた人物。それだけに、アジアのマーケット事情にも詳しく、アジア進出を考える方にとっても参考になる一冊だと思います。

自分の妻が自社商品を使わず、他社商品を使っていたという苦いエピソードから始まり、妻へのn-1調査、そこからインスピレーションを得て商品開発につなげていったプロセスは、一読の価値があると思います。

もともと「Cook Do」は、「中華」ジャンルでの展開をしていた商品ですが、リサーチの結果、消費者は中華に重きを置いていないことを発見。軸を「かんたん」「おいしい」にシフトし、商品展開していったプロセス、そしてそれを海外展開していった点は注目に値します。

どうやって消費者調査からインサイトを発見し、商品開発に繋げ、マーケットで展開していくか、マーケティングの基礎が実践例とともに書かれた読み応えのある内容です。

奇をてらった戦術は一切なく、紹介されているマーケティング手法も極めて王道。

しかしながら、エピソードは読み応えがあり、「これぞ生きたマーケティングの教科書」といった趣です。

著者が考える「ヒットの法則15原則」も、極めてベーシックですが、実践するのは難しい。

マーケティングのチェックリスト代わりに、ぜひ押さえておきたい内容です。

市場には必ず競合がいて、お客様の気持ちは簡単には変わらない。そんな実務家が直面する困難な状況が登場し、著者がそれをどう乗り越えていったかが書かれています。

ヒット商品を開発したい方、海外進出を考える方には、特に勉強になる一冊だと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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日本と台湾、香港と中国では、食べたり飲んだりした時のお金の価値がほぼ同じくらいになったことで、それぞれの国でヒットしたものが、ほとんど時差なく輸出され、受け入れられやすくなった

著者が理想とするマーケティング「『こういうものがあったら、このような行動が起こるのではないか』という仮説とかアイデアが、情熱をセットになった時、それは仕組み化して事業化できる。今までに見たことがない商品が世に生み出されることによって、新しいバリューチェーンをつくり出す。これが本来のマーケティングである」

味の素の成功は「アンゾフの成長マトリクス」の、まさに縦と横の両方をやり遂げたからこそ

外食市場相手のビジネスを本格化したところ、『味の素』の偽物がたくさん出回っていることに気づきました(中略)そこで、外食商圏に強い力を持つ問屋の社長を探り出し、偽物の『味の素』の代わりに、少し高いけれども本物の『味の素』を販売してもらえないかを、駐在員である自分が率先して説得して回りました

チキンパウダーが売れるのは、インドネシアなどのハラル文化圏

カンボジアはタイヤラオス、ベトナムなどと同じメコン文化圏に属しています。米食で汁物を好み、一番馴染みがあるのは鶏だしではなく、豚だしです

私の師匠でもあるマーケターの先輩たちは今でも海外に出張する時には、スーツにネクタイを締めて、革靴を履くのではなく、ビジネスカジュアルとでも言える格好をして、靴も汚れてもいいものを履き、リュックを背負っています。言わば、「どこにでも見に行くよ」というスタイル

『きょうの大皿』の場合は、「子どもも大人もみんなが喜ぶ、抜群のおいしさの和風メインおかず」がポジショニング

特にグローバルマーケティングにおいては、たとえば「フィリピンの人たちにとって5ペソはどんな意味を持つのか」まで理解したうえで、ものづくりに強みを持つ我々日本人ならではのコスト設計をすることが大切

競争環境はもちろんのこと、社会環境や、消費者の知覚構造も全部分析したうえで、マーケターは自分が企画する商品について「唯一」や「絶対」、英語なら「オンリー」という言葉を使えるかどうかが「お客さまに選んでいただけるかどうか」の決め手

いきなり新しいものをつくるのではなく、まずは今あるものをちゃんと売れるようにする

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ここ1年間でカンボジア、ベトナム、韓国、ベルギー、インドネシアなどに立て続けに行きましたが、どこの店頭でも、味の素が目立っていたように感じます。

競合品、模倣品にまみれながら、なぜ同社の商品が店頭で存在感を保っているのか、その努力を垣間見た気がします。

実践家にしか書けない、マーケティングの生きた教科書です。

ぜひ、読んでみてください。

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『グローバルで通用する「日本式」マーケティング』中島広数・著 日本能率協会マネジメントセンター

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◆目次◆

はじめに
Chapter1 2050年はアジアの時代
Chapter2 新事業・新バリューチェーンの創造
Chapter3 マーケター力=思考力×対人力×人間力
Chapter4 はじまりはいつも仮説
Chapter5 ヒットの法則 15原則
Chapter6 ブランドと社会価値・存在意義
Chapter7 事件は現場で起こっている
Chapter8 イノベーター理論の実験場 中国市場
本書の理解を深めるために 著者のおすすめ書籍
おわりに

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