2024年8月29日

『在庫管理の魔術』エリヤフ・ゴールドラット・著 岸良裕司・監訳 三本木亮・訳 vol.6551

【『ザ・ゴール』シリーズ最後の一冊】
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本日ご紹介する一冊は、シリーズ累計1000万部を突破した、『ザ・ゴール』シリーズ最後の一冊にして、著者エリヤフ・ゴールドラット博士の遺作。

元々、『ザ・クリスタルボール』というタイトルで出されていたものを、改題し、新装して発行したものです。

それゆえに、BBMでも一度書評しているのですが、当時はこれが遺作になると思っていなかったこと(ゴールドラット博士はこの作品の2年後に逝去)、あれから土井も少しは成長したことを考慮して、再度ご紹介することにしました。

このビジネス小説の舞台となるのは、インテリア用のファブリックを扱う小売チェーン「ハンナズショップ」。

売上不振に悩む主人公のポール・ホワイトは、このハンナズショップ社長の義理の息子で、不振を続けるハンナズショップボカラトン店の店長。

妻はこのハンナズショップの仕入責任者を務める敏腕バイヤーにして社長の娘、キャロライン・ホワイトです。

『ザ・ゴール』シリーズは、大体主人公の苦境から話が始まるのですが、この『在庫管理の魔術』でも話は同じ。

主人公ポールの店は、利益率でチェーン10店舗中、8位に転落しますが、そこに追い打ちをかけるように、事故が起こります。

なんと、ショッピングモールの水道管が破裂し、モールの地下倉庫が使えなくなってしまうのです。

ポールは、やむなく在庫を20日分だけ残し、残りを会社の地域倉庫に戻す。

しかし、この判断が、のちに奇跡を生むのです。

これをきっかけに、なぜかポールの店は、売上、利益、回転率すべての指標が向上し、チェーントップへとのし上がる。

──在庫を減らしたはずなのに、売上が伸びる。

一見不可解な現象を分析してみると、そこから意外な事実が見えてきたのです。

オペレーションに関して世界トップクラスの日本人が、どこまで感銘を受けるかわかりませんが、在庫管理やオペレーションを学びたい小売業経営者には、とっかかりとして良いと思います。

一店舗の最適化が、チェーン全体の最適化へと進展する過程はとてもワクワクしますし、会社全体を俯瞰する広い視野が身につくと思います。

お客様が幸せになり、取引先が幸せになり、そして自社の業績が上がる。

在庫管理は、地味なテーマではありますが、優秀な経営者人材になるためには、避けて通れないスキルだと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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「つながり」と「ばらつき」がある仕事の流れには、必ずどこかに制約があり、その制約に集中して助け合うことで全体最適になる(岸良裕司氏)

これまでに一度しか起きなかったことを基準に考えていてはダメだ

自分の本能をコントロールすることを学びなさい。目の前の好機に惑わされてはいけない。多くの場合、そういうのは見せかけだけの罠にすぎないんだ

投資収益率がどれくらいかで、どれだけ早く会社が拡大できるかが変わってくる

問題は、スペースだけじゃない。フォークリフトのキャパシティも問題なんだよ

本当に必要な在庫は、次に商品が補充されるまでに売れる分だけでいい

「店に二週間分の在庫しか置かなかったら、商品の陳列棚は半分空になってしまうんじゃないですか」
「その場合は、他のSKUで埋めればいいのです」

グプタにとって毎週少しずつ商品を送るのは、何もキャロラインに恩を売るようなことでもない。むしろ双方にとってとても有益なことなのだ。キャロラインにしてみれば、必要な商品を早く受け取ることができ、グプタにしてみても、三か月待って一度に大金が入ってくるのではなく、少しずつでも早めに毎週お金が入ってくるのだ。つまり、キャッシュフローがずっと円滑になることを意味している。融通を利かせたくなるのも当然なのだ

「クロスシッピングは、在庫を余っているところから足りないところへ移動させることです。店舗レベルではクロスシッピングは、スタート時点でミスがあったことを意味しています。スタート時点で商品を送りすぎていたんです。でなければ、在庫が余ったりはしません。新しいやり方では、まず地域倉庫から店舗への補充時間がとても短いことに着目して、店に在庫を溜め込んでおくのはやめたんです」

「もし、すべてのSKUを一か所にまとめて置いておくことができれば、社内のロジスティックスの問題を解決できるだけでなく、キャロラインが抱えている問題も半分は解決できます」(中略)「そうなると、商品の購買依頼を起こすのは、中央倉庫だけでよくなります」

「キャロライン、お前は、もうすぐ仕入れ担当ではなくなるんだ。だから、いつもいつも相手から一セントでも多く捻り出そうと考えるのは、やめてもらいたい。いま、お前は言ったじゃないか。サプライヤーに、パートナーになってほしいと持ちかけているところだと。パートナーというのは、利益を分かち合うものだ」

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今になってわかるのは、本書は、在庫管理の本であると同時に、事業継承の物語でもあるということ。

ネタバレになるので書きませんが、経営者あるいはその後継者であれば、ジーンとくるシーンがラストに待っています。

この話を最後にしてこの世を去ったゴールドラット博士も、とてもかっこいいと思いました。

一度読んだ方も、ぜひ、再読してみてください。

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『在庫管理の魔術』エリヤフ・ゴールドラット・著 岸良裕司・監訳 三本木亮・訳 ダイヤモンド社

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◆目次◆

はじめに 岸良裕司
I 魔法のクリスタルボール
II 緊急事態発生
III 予期せぬ知らせ
IV 渦巻く疑念
V 説得工作
VI 次なる戦略
エピローグ

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