【日本経済の本質的課題がわかる名著】
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本日ご紹介する一冊は、東京大学、大蔵省、エール大学博士号(経済学)を経て、一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任したファイナンスの専門家、野口悠紀雄さんによる注目の論考。
若い頃アメリカに留学し、50年以上にわたって、「アメリカはなぜ豊かなのか?」を考え続けてきたという著者が、政治面、経済面、その他から、アメリカ成功の要因を解き明かした、興味深い内容です。
本書によると、アメリカと日本の賃金の差は、2022年時点のOECDの統計で約1.9倍。ソフトウェア・エンジニアの給与で見ると約4倍。金融専門家の初任給で見ると、なんと7.5倍もあります。
なぜこの差は縮まらないのか?
なぜ現在産業界が賃上げをしているのに、人々の暮らしは楽にならないのか?
なぜ熊本にTSMCの工場ができ、全国でインバウンドが盛り上がっても、経済は良くならないのか?
なぜ好調だった日経平均は下がってしまったのか?
本書には、これらすべてに対する答えが書かれています。
もともとは、「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「ビジネス+IT」「ダイヤモンドオンライン」「時事通信 金融財政ビジネス」に公表した記事をもとにしているらしいですが、これはぜひ読むべき一冊だと思います。
これから行われるアメリカ大統領選がどう経済に影響を与えるのか、日本の自民党総裁選で、どんな人が選ばれるべきなのか、その詳細がわかる内容でもあります。
現在、多くの人が気にかけている為替レートに関しても、適正なのはいくらなのか、それはなぜなのかが書かれており、今後の経済をジャッジする上で、貴重な道標となるでしょう。
政治家・企業リーダーにとっては、今後の日本の課題が明確になるという点で、必読書と言えると思います。
さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
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U.S.News誌によると、アメリカのビジネススクール卒(MBA:経営学修士号の保有者)の初任給年収(サラリーとボーナス)は、2022年で平均11万5000ドルだ。1ドル=145円で換算すると、1668万円になる。大学によってかなりの差があり、序列も公表されている。トップはハーバード大学とスタンフォード大学で、初任給が19万6000ドルになる
賃金が経済成長を牽引するのではない。経済を牽引するのは、新しい技術やビジネスモデルだ。それらが、新しいタイプの企業活動を実現し、経済が成長する。その結果として賃金が上がるのだ
アメリカの主要産業は、ガソリン車メーカーでもなく、製鉄業でもなく、テック産業と医薬品産業、そして金融業
日本では、大学や大学院レベルでの教育の水準が低く、十分な専門的教育を行なっていない。このため、人材の質が低下している
半導体生産企業で半導体指数に入っているのは、ソニーグループとルネサスエレクトロニクスだけだ。前者はイメージセンサーの生産、後者は車載用半導体の生産を行なっている。両者の株価上昇率は高くない
必要なのは、「技術と投資と人材」
「通信・コンピュータ・情報サービス」で日本は世界最大の赤字国
マイナンバーカードで事務負担が増えた
円安になれば、円ベースでの輸出企業の売上げが増える。一方、企業は、原価上昇分を製品価格に転嫁する。したがって、利益が自動的に増える。そのため、株価が上がる。しかし、転嫁された原価上昇分は、最終的には消費者物価に転嫁されるので、実質賃金が下落する
円安が、今後も続く保証はない。今後、FRBが金利を引き下げたり、日銀が金融正常化を進めたりすれば、円高が進んで企業利益は減少するかもしれない。だから、株価上昇の基盤はきわめて脆弱
つまり、日本は、労働力を安売りして、企業利益を増やしてきたのだ
円安とは、痛みどめの「麻薬」のようなものなのである。本当に必要だったのは、技術開発による生産性の向上という「手術」だった
ビッグマックによる比較では1ドル=79円が適切なレート
円安による訪日観光客増加は、生産性向上に寄与しない
安全保障の費用分担について、アメリカに対してひたすらお願いするというだけでは能がない。取引しうる何らかの材料があることが望ましい。つまり、日本は守る価値がある国であることを、アメリカに納得させる必要がある
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発売があと1カ月早かったら、多くの投資家・起業家を救えたのに、と思う内容ですが、それでも現在の日本経済の本質的課題を明らかにした点で、価値ある一冊だと思います。
世界のトップにあるアメリカと日本の差は何か。
これがわかれば、取り組むべき課題がわかります。
政治家も経営者もサラリーマンも、全労働者が読んで勉強すべき内容だと思います。
ぜひ読んでみてください。
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『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』野口悠紀雄・著 幻冬舎
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◆目次◆
はじめに
第1章 日米給与のあまりの格差
第2章 先端分野はアメリカが独占、日本の産業は古いまま
第3章 円安に安住して衰退した日本
第4章 春闘では解決できない。金融正常化が必要
第5章 アメリカの強さの源泉は「異質」の容認
第6章 強権化を進める中国
第7章 トランプはアメリカの強さを捨て去ろうとする
おわりに
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