2024年6月10日

『サイゼリヤ元社長が教える年間客数2億人の経営術』堀埜一成・著 vol.6495

【良本です。】
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本日ご紹介する一冊は、年間客数2億人、国民的人気を誇るイタリアンレストランチェーンに成長した、サイゼリヤの経営の秘密に迫った一冊。

著者は、創業者・正垣泰彦氏に口説かれ、2009年から2022年まで13年間社長を務めた、堀埜一成氏です。

京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科を修了し、味の素で発酵技術研究所の研究室長まで行った著者が、正垣氏に口説かれて入社するのですが、そのエピソードが既に面白い。

「食堂業の産業化をやってくれ」と言われ、入社したらなぜか農業をやらされ、のちに「おまえみたいなやつは、デカい話をしたら来るんだよ」と言われたという話は、噴飯ものでした。

ちなみに、この時連れて行かれた1人数万円はする高級ホテルのディナーで、正垣氏は「これ、うまくないだろ?」と言って、著者を驚かせたそうです。

要するに、「売るための料理」と「毎日食べるための料理」は違う。おいしさの定義が違うというわけです。

まさにポジショニングの違いですね。

サイゼリヤは、創業者・2代目ともに理系出身の経営者ですが、そのロジカルを極めた経営術が、本書では公開されています。

なぜ広告を打たないのか、なぜミラノ風ドリアを税込300円で出せるのか、なぜキッチン面積を最小化し、客席を最大化できるのか、なぜ大企業なのに社内政治が存在しないのか……。

創業者、正垣氏の本も驚きの連続ですが、2代目社長・堀埜氏の経営アプローチも負けないぐらいぶっ飛んでいて魅力的です。

読んで初めて知ったのですが、じつは土井プロデュースの書籍『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》 視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』が、サイゼリヤの経営に影響を与えていたとのことで、嬉しく思いました。

ぜひ、創業者・正垣氏の名著『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない売れているのがおいしい料理だ』と併せて読んでみてください。

『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453219802X

『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》 視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4887596456

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

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広告に回すお金があったら、少しでもいい食材を使って、お客さまに還元する

一度会長に「なんで社内政治がないんですかね」と聞いたことがあります。すると、「上に行けば行くほど、しんどくなるようにしてあるから。人間、暇になると政治をするから、暇がないようにしておけばいいんだよ」と言っていました

店を視察に行ったとき、パートさんに「なんで社員にならないの?」と聞くと、「ペーパーテストがあるから」という答えが返ってきたので、「じゃあ、それなくすわ」というわけで、パートやアルバイトが社員になるときのペーパーテストを廃止し、学歴も不問にしました。そのかわり、職場の仲間5人の推薦状を持ってきたら社員にするということにしたのです。(中略)入社してから、仲間に書いてもらった推薦状を本人に渡すと、みんな涙を流します。自分のことを、こんなふうに思っていてくれたんだということがわかって、スタッフ同士の結束が固まるという思わぬ効果もありました

サイゼリヤには原価計算がない、ノルマがない、社内政治がない

サイゼリヤの基本理念は「人のため」「正しく」「仲良く」という3つの言葉からなっています

厨房は利益を生まないコストゾーンなので、狭いに越したことはない。浮いた面積をプロフィットゾーンである客席に充てれば、その分、儲けが出やすくなります

特定の地域にまとめて出店すると、その分、商圏が狭くなるため、利用頻度が高くないと成り立ちません

そこで、いままで1週間しか使っていなかったコンバインをせめて3カ月は使おうと考えました。全部一斉に植えて一斉に刈り取るのではなく、時期をずらして稲刈りするように変えるのです。そのために、北海道の早生種を持ってきたら、ちゃんとお盆には収穫できるところまで稲穂が育ちました

田植え機も使用期間の短い機械ですが、コンバインのように使用期間を延ばす方法は採らず、田植えそのものをなくすことを考えることにしました

どうやって開店準備作業を短縮化するのか。まず目をつけたのが掃除機です。(中略)掃除機は結局、何をしているかというと、ゴミを移動させているわけです。ゴミを移動させるだけやったらモップでもええやろ、ということで、1メートル幅のモップを導入しました

目視確認が必要なものは、目の高さに置くのが基本

役職に「長」がつくと、人に命令することが仕事だと勘違いする人がいる

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商品開発から出店戦略、コスト削減の工夫、マネジメントまで、数ページ読む度に「へえー!」「ほう!」が連発する、THEビジネス書でした。

正垣氏の本ではわからなかった、正垣氏の思想や言葉、エピソードが紹介されており、読み応えのある内容です。

経営人材になるために、どんな思考が必要か、その要諦がわかると思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『サイゼリヤ元社長が教える年間客数2億人の経営術』堀埜一成・著 ディスカヴァー・トゥエンティワン

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◆目次◆

プロローグ サイゼリヤはなぜ定期的に「炎上」するのか
第1章 「ないない尽くし」からのスタート
第2章 入社してはじめてわかったサイゼリヤの真実
第3章 プロパーではない「外様」社長として
第4章 サイゼリヤ流「負けない戦略」
第5章 次の「ミラノ風ドリア」を開発する
第6章 サイゼリヤはなぜ中国で受け入れられたのか
第7章 何があっても従業員を守る
エピローグ 社長業の13年を振り返って

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