2023年4月28日

『徳川家康 弱者の戦略』磯田道史・著 vol.6227

【家康に学ぶ、弱者の戦略】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166613898

本日ご紹介する一冊は、『武士の家計簿』『日本史を暴く』などのベストセラーを持つ歴史家の磯田道史さんによる、徳川家康論。

※参考:『武士の家計簿』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106100053

※参考:『日本史を暴く』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121027299

元々、地政学的に不利な位置にあった三河で生まれた家康が、どうやって「弱者の戦略」でトップに上り詰めたのか、じつに興味深い論考が展開されています。

・よそ者が入り込むのに適した環境とは
・弱者のためのイメージ戦略
・大国に囲まれた弱小国が取るべき外交戦略
・文化的権威による支配vs軍事力による支配
・「物見」の重要性
・ナンバー2の活用法
・敵の最強軍団をリクルートする人事
・相手の機動力を失わせる方法
・武闘派の弱点を突く戦略
・中央集権化を進めるポイント
・「安心」によるマネジメント

興味の尽きない歴史物語に引き込まれながら、これだけの戦略が学べてしまう、まさにリーダーのための教養書。

これは読まない手はないと思います。

徳川家康に関して書かれた本は数多くありますが、本書ほど面白い本もなかなかないと思います。

なぜ徳川の世が260年も続いたのか、そのシステムを家康はどう学び、構築して行ったのか。

その秘密がぼんやりとですが、見えた気がします。

歴史書として読んで面白いのはもちろんですが、戦略本、人事・リーダーシップの本として見ても、じつに示唆に富んだ本です。

これはリーダー必読の書ですね。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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東側の勢力と西側の勢力がせめぎあう断層線では、つねに激しい抗争が生じます。すると、争いに備えて人手を求めていたり、ぽっかり主のない空間が生まれたり、と、よそ者が入り込むのに適した環境になっていました

もともと山里の豪族だった松平家には、中央に何のつてもありません。では、どうやって足がかりをつくっていくか。いきなり将軍家や管領家などとはつながれるはずもありません。そこで三代目の当主、松平信光は、幕府の中枢で実務を担っているのは誰かと考えました

逆説的ですが、三河の人たちが少年時代の家康を知らないことが、かえってカリスマ性の獲得にプラスに働いたのではないでしょうか

ーー競合相手とはなるべく「棲み分け戦略」をとる。
ーー棲み分けが無理とみた時にだけ、徹底して戦う。
これは家康生涯の戦略思想の基本になりました

武田軍の明らかな長所は、まず物見のレベルが高い点です。偵察・警戒がきわめて優れていました

敵の最強軍団をリクルートしてきて、自軍の中核に据える大胆な軍事改革の人事は、家康しかやっていません

お家の事情のために、相手の状況や力関係、外部環境を無視した外交や戦争を行ってしまうミスは、実際の歴史によくあること

これは歴史の教訓ですが、武闘派は強さゆえに戦いすぎて滅びます。機動力を誇る武田軍は、これまでの家康との戦いで、うまく野戦に持ち込み、敵に強く攻めかかれば必ず勝てる、という成功体験を重ねてきました。それに対して、信長・家康は武田軍の勝ちパターンをあえてつくり、相手が野戦を挑んでくるように仕掛けたのです

天下を取るには、誰もが認める形での武威を示さなくてはならない

一般的に、平野部は中央集権的な支配がしやすく、山間部など入り組んだ地形は分権的になりやすいものです。関東平野や信長の出た濃尾平野は集権に向いています

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戦略を学べば、敵の長所を弱点に変え、不利な立場でも戦いに勝利することができる。

徳川家康が戦略を駆使し、強敵・武田家を攻略して行くくだりは、特に好奇心を刺激されます。

こんなに面白い戦略書も珍しいですね。

ぜひ、読んでみてください。

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『徳川家康 弱者の戦略』磯田道史・著 文藝春秋

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◆目次◆

はじめに 家康はどうしたのか!
第一章 「境目の土地」三河という運命
第二章 信長から学んだ「力の支配」とその限界
第三章 最強の敵・信玄がもたらした「共進化」
第四章 二つの滅亡 長篠の合戦と本能寺の変
第五章 天下人への道

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