【孫泰蔵氏が提唱する、未来の教育】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296000772
本日ご紹介する一冊は、連続起業家、投資家として知られる孫泰蔵さんが書いた、未来の教育の話。
「父からの手紙」と題した冒険者へのメッセージから始まり、古今東西の思想家たちの教えを経て、われわれの教育がどうあるべきか、われわれ自身が人生や学び、挑戦とどう向き合うかが書かれた、未来志向の啓発書です。
現在の固定的な教育がどこから、なぜ生まれてきたのかを丁寧に紐解き、将来はどうなっていくのが理想なのか、著者自身の考え方が説かれています。
こうしてみると、われわれの思考はかなり工業化時代の産物だということがわかりますね。
著者は本書で、従来の教育に批判を加えながら、新しい時代に適合した考え方を説いていきます。
・「ならない」にしたがうのは思考停止のあらわれ
・才能は百害あって一利なし
・評価ではなくアプリシエーション
・親の言うことは聞くな
・自立するとは、頼れる人を増やすこと
これまでにない、斬新な教育論と未来志向の生き方の知恵が説かれており、じつに清々しい一冊です。
大人に向けては、内村鑑三の『後世への最大遺物』で、未来の冒険者に向けては作家ダニエル・クインの言葉で最後を締めており、いずれにしろ、これからどう生きればいいかの良い指針になると思います。
内容だけでなく造本も凝っており、読者の冒険心を刺激する、面白い作りになっています。(カバー絵は『すずめの戸締り』に関わったコミックス・ウェーブ・フィルムのメンバーが手掛けています)
これから中学生、高校生、大学生になる子どもたち、教育者、そして親たちに、ぜひ読んで欲しい一冊だと思いました。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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やりたいことがあるなら、なぜガマンをする必要がある? 好きなことがあるなら、なぜそれだけを一日中やれるように環境を変えない?
教師だけじゃなくて、詳しい人から学んでもいいじゃない
教育の本当の問題は、私たちが「教育サービスのお客さん」になっていることにある
「囚人を監視するのに最も効率がよく、最も安上がりで優秀な刑務所。それがパノプティコンだ。いいかい。学校もこれと同じだ。学校は、監視・賞罰・試験という3つのメカニズムの複合体だ。規律や訓練で子どもたちを秩序の中にはめ込み、生徒が自ら服従するよう、巧妙にできているのだよ」(ミシェル・フーコー)
「10年でガラリと景色が変わってしまうくらい変化の激しい世の中で、子どもたちが今学ぶべきことってなんだろう。それは『世界を良くしていくために必要なこと』だ。(以下略)」
「基礎」という考えが、学びを「型」にはめ込んでつまんなくしている
「学校は、学ぶことを『教育』と定義しなおすことによって、学校の外で学んだ人に『無教育』のレッテルをはることになるのだ」(イヴァン・イリイチ)
子どもと大人が区別され、遊びと学びと働きが区別され、それが法律など制度によって固定されたことで私たちの社会は貧しくなった
結果論で失敗をこきおろす社会では、人々はリスクをとって大胆な決断や行動をすることをためらうようになる
人は誰しも、アプリシエイトされるとうれしくなって、ますますがんばろうという気持ちになります
「自立するとは、頼れる人を増やすことである」(シンイチロウ・クマガヤ)
「世界は自ら変えられる」とはどういうことでしょうか。それは「自分自身が変わること」だと僕は考えています。対話の相手の知性を心から信じ、自らの大事にするコードを破り、相手の息づかいや体温を感じられるところまで思いきって飛び込む時、私たちはすでに以前の自分とは変わっています。そして相手も変わります
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昔、横浜の塾経営者の依頼で子どもたちと親の前で講演したことがありますが、冒頭で申し上げたのは、「親と学校の先生の言うことだけは聞くな」でした。
本書にも似たメッセージが書かれていて、大変感銘を受けました。
ぜひ子どもたちには(大人たちにも)、本書を読んで、前向きな人生を歩んでいただきたいものです。
表紙や中身のメッセージも相まって、じつに清々しい気分になりました。
おすすめの一冊です。
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『冒険の書』孫泰蔵・著 日経BP
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◆目次◆
はじめに
父からの手紙
第1章 解き放とう 学校ってなんだ?
第2章 秘密を解き明かそう なんで学校に行くんだっけ?
第3章 考えを口に出そう なぜ大人は勉強しろっていうの?
第4章 探求しよう 好きなことだけしてなぜいけないの?
第5章 学びほぐそう じゃあ、これからどうすればいいの?
おわりに 新しい冒険へ
旅の仲間たちへの謝辞
世界に散らばる冒険の書たち
本書の問い
参考文献
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