【世界の仕組みを物語で学ぶ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492444688
本日ご紹介する一冊は、物語形式で地政学が学べる、話題の書籍。
著者は、大学時代にボスニア内戦を現地で研究し、その後新聞記者として政治部、経済部、国際部、モスクワ特派員など20年以上のキャリアを持つ、国際政治記者の田中孝幸氏です。
県内の進学校に通う高校一年生の大樹(だいき)と、地方の公立中学に通う中学一年生の大樹の妹、杏(あん)が、怪しい店主「カイゾク」のいるアンティークショップに入り、そこに置かれていた古い地球儀「ディプロマット」に関心を持ったことから、物語が始まります。
その怪しい風貌から、近所の子どもたちに「カイゾク」と呼ばれていた店主は、大樹が地球儀に興味を持ったのを見て、こう話を持ちかけます。
「ああ、値段か。そこに時価と書いてあっただろう。100万円にすることもあれば、タダにすることもある」(中略)「ならば、こうしようか。10日、いや7日間でいい。夏休みの間、7回ここにきて、わしの話を聞く。最終日にわしの出す問題に答えられたら、この地球儀をさしあげよう」
店主「カイゾク」による地政学のレッスンは、子どもたちに世界を理解する、強力な手掛かりを与えるもので、話は歴史、地理の基礎知識はもちろん、人間理解、国際理解にまで発展していきます。
なぜ世界貿易にとって海が大事なのか、なぜ国際法は破られるのか、国の豊かさや運命はどうやって決まるのか…。
大人もわかっていない地政学の世界にグイグイ引き込まれ、あっという間に読了してしまう、知的好奇心を刺激する一冊です。
最終日、テストに出された問題の難解さと、それに対する2人の解答が素晴らしくて、本当に感動しました。
これは「買い」の一冊ですね。
本文のなかから、さっそく気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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実は世界中の貿易は9割以上が海を通っている。つまり船で運ばれている。特に日本は海に囲まれた島国だからその比率が高くて、99%が船による貿易だ
アメリカが超大国と言われているのは、世界の船の行き来を仕切る国であるからだ。アメリカは世界最強の海軍を持ち続けるために、毎年10兆円以上のお金を投じていて、世界各地の海に軍艦を展開している
データが送られる速度は人工衛星よりも海底ケーブルのほうがずっと早いし、これらのケーブルなしにはインターネットは成り立たない。そしてアメリカは世界で一番多くの海底ケーブルを張りめぐらせている。2番目がイギリスだ
情報というのは集めすぎると、それは持っていないことに近くなっていく。それに、どんなに質が高い情報分析ができても、それを受け取るトップがうまく使わなければ、なんの意味もなくなる。情報は情報機関が取るが、それをどう使うかを決めるのはリーダーで、彼らはいつも賢い使い方をするわけではない
価値の高い情報ほど衝撃的だから、よほど厚い信頼を得ていない限り、信じてもらえない
核兵器は、いつまでももぐっているための原子力潜水艦、海の中からミサイルを発射する力、それに潜水艦を隠すための深く、自分の縄張りにできる安全な海という3つを確保できて、初めて最強のアイテムになる
昔の中国の言葉で『遠交近攻』という言葉がある。その字の通り、遠くと交わって仲良くしたうえで近くを攻める。ひいては攻められないように準備するという意味だ
一番大事なのは口も利きたくないほどいやな敵をつくらないことだ
国の経済が大きく豊かになるためには、物を作ったり天然資源を外国に売ったりして得たお金を、自分の国の将来のために使う必要がある
異常に安くて良い物は、なんらかの人々の犠牲がともなっている物だと考えてみてもいい
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しばらくコロナで引きこもっていましたが、本書を読んで、また海外に行きたくなってきました。
子どもの視野を広げ、大人も楽しませてくれる、素晴らしい一冊です。
人の上に立つ人は、教養として読んでおいて損はないでしょう。
ぜひ、読んでみてください。
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『13歳からの地政学』田中孝幸・著 東洋経済新報社
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◆目次◆
プロローグ カイゾクとの遭遇
1日目 物も情報も海を通る
2日目 日本のそばにひそむ海底核ミサイル
3日目 大きな国の苦しい事情
4日目 国はどう生き延び、消えていくのか
5日目 絶対に豊かにならない国々
6日目 地形で決まる運不運
7日目 宇宙から見た地球儀
エピローグ カイゾクとの地球儀航海
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