【攻略不能な城などない。】
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本日ご紹介する一冊は、コロンビア大学ビジネススクール教授のジョナサン・A・ニー氏が、無敵と思われている巨大テック企業(FAANG)の思わぬ弱点を指摘し、その収益性と競争優位の源泉、将来的な見通しを述べた一冊。
「バリュー投資の殿堂」コロンビア大学ビジネススクールの教授であり、かつてゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、エバコーア銀行などで投資部門につとめた著者だけに、投資家目線に立った巨大テック企業の分析には、目を見張るものがあります。
なかでも注目なのは、いわゆる「プラットフォーム信仰」にメスを入れ、その真の競争優位性とネットワーク効果を冷静に分析している点。
FAANGに加え、これまで彗星のように現れては消えていった数々のスタートアップを分析しており、プラットフォームと一口に言っても、それぞれ事業や扱う製品によって競争優位性やネットワーク効果が変わってくることがよくわかります。
なぜブッキング・ホールディングスは、エクスペディアよりも価値が高いのか、なぜエアビーアンドビーは、つねにウーバーよりもいいビジネスなのか、なぜエッツィはアマゾンに負けないのか…。
競争優位や高収益を生む強固なビジネス構造を学べるとともに、巨大テックが参入できない、あるいは強くなれないビジネス領域を探し出すヒントになります。
「規模」や「ネットワーク効果」が醸す雰囲気に、完全にやられていた中小企業経営者、起業家に、希望の光をもたらす良書だと思います。
投資家にとっては、市場の評判の裏をかく、正しいビジネス理解の方法を学べる、素晴らしい教科書。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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固定費の相対的な優位性は、最も重要な規模の優位性をもたらす。費用の大部分が変動費である場合、規模が最大であってもあまりメリットがなく、コミュニケーション、経営、調整などがより複雑になる分、かえって障害となることがある
ある分野において、市場シェアが5パーセントあればやっていけるのであれば、その市場では20社が生き残ることができる
参入障壁が高ければ高いほど、年間の市場シェアの変動は少なくなる。高い障壁、がある場合の利点は、シェアの変動が、2、3年で5パーセント以内というのが常態化していることだ。損益分岐点に達するには15パーセントのシェアが必要な市場に新たに参入する企業は、年間3パーセント以上シェアが変動しないと、5年以内に採算性を確保することは望めない
「顧客の囲い込み」を形成するのは、切り替え費用と検索費用
アマゾンは、いくつかの製品カテゴリーや地域では明らかに支配的な企業だが、多くの製品や地域においては規模の大きい数社の小売業者のうちの一社
ブッキング1社で、GDS(グローバル流通システム)業界全体だけでなく、OTA(オンライントラベルエージェンシー)部門のそのほかの公開会社をすべて合わせた規模を凌駕しているのには、主としてひとつの要因がある。それは、ホテルと航空会社の違いだ。(中略)OTAにはネットワーク効果があるが、その効果がどんな影響力をもつかを決める鍵となるのは、製品の複雑性だ。買い手が購入を
決める前に検討する特性が多いほど、ネットワーク運営者にとっては、期待に沿うサービスを提供するために、供給側のニーズの蓄積を多様化する必要がある
配車サービスでは、価格を別にすると、3分から5分で配車する能力が、最も重要な顧客の関心事項となっている(中略)この基準を満たすために必要な数のドライバーをそろえることができる企業ならば、価格を適正に設定さえすれば、どこが相手でも十分に戦うことができるだろう。それに対し、短期賃貸の市場では、製品の特徴と市場の区分が数多く存在する
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内容がだいぶディープなのと、翻訳が若干わかりにくいため、読むのに骨は折れますが、それだけの価値はある一冊だと思います。
巨大テックのなかで、これから凋落するのはどの企業か、今は不振でもこれから浮上しそうなのはどの企業か、投資家なら読んでおきたい内容ですね。
ちなみに著者によると、FAANGのなかで最強なのは、フェイスブックとグーグルの2社だそうです。
どちらの企業も、インターネットが可能にした新しい分野で事業を展開している、というのが理由だそうですが、詳しくは本文を読んでみてください。
起業家にとっては、資金力がモノを言うデジタルの世界で、生き残り領域を見つけ出す、至高のテキスト。
これは必読の一冊です。
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『巨大テック企業 無敵神話の嘘』ジョナサン・A・ニー・著 小金輝彦・翻訳 CCCメディアハウス
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◆目次◆
はじめに
第一部 デジタルのメリットとデメリット
第1章「プラットフォームの妄想」に関する4つの中心的な考え
第2章 ネットワーク効果ーーデジタル時代における規模
第3章 いくつもの力が必要だーーデジタル競争優位の源泉
第二部 巨人の国
第4章 フェイスブックーー究極のネットワーク
第5章 アマゾンーー過ぎたるはおよばざるがごとし?
第6章 アップルーーその中心にあるのはなにか?
第7章 ネットフリックスーーコンテンツが王様だったことは一度もなく、いまも違う
第8章 グーグルーー完璧なアルファベット
第三部 大企業の陰で
第9章 eコマースーーアマゾンがエブリシング・ストアであるならば、ほかになにを売ればいいと言うのか?
第10章 私を月に連れて行ってーー飛行機旅行がデジタル化すると誰が儲かるのか?
第11章 「旅をするのは生きることだ」ーープライスラインはいかにして1000億ドル企業になったか
第12章 ときにはシェアするのもいいものだーーなぜエアビーアンドビーは、つねにウーバーよりもいいビジネスなのか
第13章 マッドメン(MAD MEN)とサッドメン(SAD MEN)ーー広告・アドテックとインターネットとの出会い
第14章 ビッグデータと人工知能ーーいつ重要で、いつそうでないか
エピローグ
謝辞
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