【起業家、CFO必読の財務本】
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本日ご紹介する一冊は、日本電産の創業者で、同社を連結売上高1兆8000億円の大企業に成長させた、永守重信氏による財務論。
経営者が数字を理解する必要性について、著者は序章でこう書いています。
<キャッシュが尽きるから企業はつぶれる。極端に言えば、どんなに多額の赤字を出していたとしても、キャッシュに余裕があるなら絶対つぶれない。だからこそ、バランスシートの資産サイドには現預金がいくらあるのか、すぐに現金化できない売掛金や在庫が膨らみすぎていないか、一方の負債サイドで1年以内に返済する必要のある借入金の規模はどれくらいか、などといった基本の数字を常に把握しておく必要があるのだ>
経営者がお金について語った本といえば、稲盛和夫氏が書いた『稲盛和夫の実学─経営と会計』が名著として知られていますが、本書も実践的で素晴らしい内容です。
※参考:『稲盛和夫の実学─経営と会計』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532190061
もともとは、『技術ベンチャー社長が書いた体あたり財務戦略』というタイトルで出されていた本が底本となっていますが、これに最新の状況を踏まえて、全面的に書き改めたのが、本書『永守流 経営とお金の原則』です。
著者が、創業当時に掲げた方針、金融機関との付き合い方、資金繰り、徹底したコスト削減、そして攻めのファイナンスとM&A…。
特に、<これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」>と言い切る著者のM&Aの方針、アフターM&Aの徹底した経営改善策は見ものです。
細かな数字の話があるわけではなく、あくまで考え方が示されている本なので、数字が苦手な経営者でも読めると思いますが、ある程度財務がわかっている方が読めば、さらに心に響くと思います。
経営は情と理のバランスが大事だと思いますが、本書では著者がそのバランスをどう取ってきたのか、体験談を踏まえて書かれているので、現役の経営者にとって参考になると思います。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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私は今でもM&Aで企業を傘下に収めるとき、バランスシートへの影響をまず考える。自己資本比率はどうなるのか。負債は増えすぎないか
回収は早く、支払いは遅く
売り上げより利益、利益よりキャッシュ
売値はマーケットで決まる、原価は自ら決められる
これまで60社以上の企業をM&Aで傘下に収めてきたが、とりわけ国内の場合、その多くは経営が悪化した赤字企業だった。こうした企業に共通しているのがコスト意識の低さである。コストに対する意識を浸透させるために、例えばこんなことをやる。まず部屋にあるゴミ箱の中のものを新聞紙の上にすべて出してもらう。まだ使えるものが捨てられたりしていないか、チェックするのである
原価を決めるのは技術である、と私は言っている。例えば、競争相手の部品点数が25だとする。それを18に減らす。それが技術の力である
ベンチャー企業の優先命題はなんといっても「成長すること」である。(中略)まとまった注文が見込まれ、今生産能力を高めればもっと成長できるという局面で、「借金が増えると自己資本比率が低下してしまう」と考えて投資を抑えていたら企業は飛躍できない
手形、特に一流企業の手形は絶対に割引に出さないという原則である。それはなぜか。窮地に陥ったときに資金繰りをつなぐ時間を稼ぐためである
お金も借りにくいところから借りるべきなのと同様、注文もとりにくいところからこそ、とるべきである
創業期に一流の企業と取引しようとするのは一見すると「分不相応」のように思われるだろうが、それは逆である。自社が小さいからこそ、自分の持っていない資金を持っている企業、自分たちが持っていない技術を持っている企業と取引するべきだ。そんな発想こそが必要なのである
機械を現金で買う目的で1億円の借り入れができたとして、実際の支払いを48回の分割で行えば、手元の現金には余裕ができる
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日本電産が実践していた「1円稟議」や「Kプロ」「Mプロ」などのコスト削減の手法、「井戸掘り経営」「家計簿経営」「千切り経営」の3つの経営手法など、実際の話が多く書かれているので、経営者にとっては「即」役に立つ内容だと思います。
これから起業する人には、転ばぬ先の杖として、絶対オススメの内容です。
『稲盛和夫の実学─経営と会計』、『「守り」の経営』と併せて読めば、さらに力がつくと思います。
※参考:『「守り」の経営』
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ぜひ、読んでみてください。
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『永守流 経営とお金の原則』永守重信・著 日本経済新聞出版
<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆
まえがき
序 章 お金の戦略が必要だ
第1章 キャッシュこそ企業価値の源泉
第2章 会社を成功へ導く財務戦略
第3章 創業期の資金の集め方
第4章 金融機関とどう付き合うか
第5章 取引先を見極める方法
第6章 チャレンジと財務バランス
第7章 いざ株式上場 規律の中で鍛える
第8章 M&Aをどう活用するか
第9章 海外展開は飛躍のチャンス
第10章 波乱の時代をどう乗り切るか
あとがき
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