2021年2月22日

『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』 野口悠紀雄・著 vol.5700

【祝・5700号】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166612921

人を幸せにする文章というものがあるとしたら、きっとこんな文章なんじゃないか。

話し手がテーマを愛していて、素材を楽しんでいて、実際にそれに長年取り組んでいる…。

そんな文章に出合った時、僕らは幸せを感じる生き物なのかもしれません。

本日ご紹介する一冊は、まさにそんな幸せなエッセイを集めた一冊。

家族や恋愛、友情がテーマではありません。よくある感動話でもありません。

物理学の話です。

本書『物理学者のすごい思考法』は、大阪大学大学院理学研究科教授の橋本幸士さんが、『小説すばる』の連載「異次元の視点」と、ブログ「Dブレーンとのたわむれ」に書いていた内容を、大幅加筆修正した一冊。

ビジネスの現場では、よく「数字で考えろ」ということが言われますが、日常のあらゆるものを数字で捉えるとどうなるか、まさに『物理学者のすごい思考法』を紹介した一冊です。

物理学者の目には、世界がどう見えているのか、どう考え、問題を解決しているのか(あるいはこじらせるのか)。

物理学の視点を手に入れることで見えてくるものを、ユーモラスに綴った、珠玉のエッセイ集です。

人生や仕事上の問題のなかには、考え方を知っておくだけで解決できるものが多々ありますが、この『物理学者のすごい思考法』を知っておけば、物事を考え抜く際のヒントになること、間違いなしです。

基本、ゆるーい文章なのですが、それが意外とクセになる。

さっそく、本文の中から、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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物理学的思考法は、物事を抽象化し、奇妙な現象が発生する理由を論理的に推察するところから始まります。次に、自分で仮説を立て、それを実証するために実験や観測をします。自分の仮説が検証されると、物理学者は満足感を覚え、そして新しい現象を予言します。こういった一連の物理学的思考法が物理学者の間で伝承されているのです

問題と同時に答えがある、と数学者は言う。その境地に達することは難しくても、例えば、逆に、解法が先にあり、解ける問題を探す、ということもあり得よう。世の中には無限種類の問題があって、解法は自分にしかわからないのだから。たまたま自分が解けて、しかもその問題が他の人にも重要だったら、運がいいのだ

スーパーにおよそ1000種類の食材があると近似しよう。そのうち、例えば5品を手にとって、それを順番に組み合わせて料理にしたとする(きっと料理人には大変失礼な近似だろうが、気にしないことにする)。すると、その組み合わせの数は10の15乗、つまり1000兆通りになる。ばく大な数字だ

物理学者というのは、常識が破綻している現象のウラに潜む法則を見つけるのが好きな人種だ

最短距離で、スーパーのすべてのレーンを歩くにはどうすればいいのか? 僕は瞬間的に解に達した。それは「一筆書き」である。スーパーの平面図を書き、それを一筆書きする方法を探せばよいのだ

時間は1次元しかない。それは時刻で決められる。(中略)1次元なら、方向は選べない。では、時間が2次元なら、同じように、どちらの「方向」へ自分が進めるのかを選べるのではないか。後戻りはできない。なぜなら、それは「時間」だからである。こんな風に考えて出来上がったのが、「時間2次元小説」だった

この世界の自然現象は左右対称なものが多いから、形も左右対称だ。だから、漢字に左右対称なものが多い、というのは納得できるのだ。自然現象はなぜ左右対称なのか? それは、地球上の重力のためであることは疑いない

人間が造り出す形状は、その簡素な法則をそのまま利用するため、直線的になるのだ。ではなぜ、その直線的な自然法則に支配されているはずの自然は、「曲線を創る」のだろうか。実のところ、法則は直線的であっても、それらをいくつかつなげると、複雑で予想もできないような曲線が生まれることが知られている

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通勤やスーパーマーケットでの最適ルート、具材を余らせないギョーザの適切なつくり方、調理可能な料理の数、巨大な昆虫を作り出す考え方…。

著者が何気ない日常で気づいたこと、妻とのユーモラスなやり取りなどから、物理学者の思考法が学べてしまう、じつに楽しい読み物です。

ぜひ、読んでみてください。

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『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』
野口悠紀雄・著 文藝春秋

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166612921

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◆目次◆

第1章 中国急成長の秘密はリープフロッグ
第2章 ヨーロッパ最貧国が世界のトップに
第3章 世界最先端にいた中国は、リープフロッグされた
第4章 リープフロッグが次々に起きた大航海時代
第5章 産業革命をリードしたイギリスが、リープフロッグされる
第6章 リープフロッグにはビジネスモデルが必要
第7章 日本は逆転勝ちできるか?

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