【築地本願寺、再生の物語】
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本日ご紹介する一冊は、400年の伝統を誇る、築地本願寺のイノベーションとリブランディングに挑んだ、企業再生物語。

著者は、築地本願寺代表役員・宗務長の安永雄彦さんです。

安永さんは、開成高校、慶應義塾大学経済学部卒業を経て、ケンブリッジ大学大学院博士課程修了（経営学専攻）、その後、三和銀行に21年間勤務し、2015年７月から築地本願寺の改革に挑んでいます。

エンディングステージのワンストップ拠点化、ヴァーチャル・テンプル構想、カフェや宿泊施設、婚活サービスなどなど、これまでのお寺の常識を覆す、斬新な取り組みが目を引きます。

本書には、著者が、伝統的組織をどのように改革し、イノベーションを実行したのか、その過程が描かれています。

斬新な理論があるわけではありませんが、経営の基本を忠実に実践すると、どれほどのことが可能になるのか、見せてくれる面白い事例です。

お寺に限らず現在、コロナ禍により、多くの企業がデジタルシフトを迫られていますが、古い組織の場合、なかなか変われずに苦しんでいるのが現状でしょう。

お寺の世界でも、現在、年収1000万円を超える寺院はおよそ20％。45％のお寺は年収300万円未満。コロナに関わらず、少子高齢化で、あらゆるビジネスは危機に瀕しているのです。

そんななか、築地本願寺では、オンライン法要やオンライン勉強会など、デジタルシフトを強力に推し進め、成果を上げています。

オンライン法要で集客力が向上、30万円からできる合同墓が予約殺到、1800円で朝食が食べられるカフェがインスタ映えで大行列……と、着実に成果を上げる築地本願寺から学ぶことは多いと思います。

さっそく、本文の中から、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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新たに発足した会員制度「築地本願寺倶楽部」は現在会員数が２万400人、2023年から24年にかけての親鸞聖人ご誕生850年・浄土真宗立教開宗800年までには10万人を目指しています。会員が生前に申し込み可能、永代供養冥加金が30万円からの「築地本願寺合同墓」は現在ご契約数が約１万人ですが、予約が殺到しています。ペーパーレス化やフリーアドレス制、ノートパソコン１人１台の新たな寺内システムも動き出し、オンライン法要を始めるなど築地本願寺は確実に変わりはじめているのです

今の時代、場所はもはや問題ではない。むしろ場所は足かせにもなります

事業計画の第１期は「築地本願寺自らが改革し、首都圏の門信徒を拡充する」を主眼とし、築地本願寺がもっと開かれたお寺になることを目指しました。そこで私たちが立ち上げたのが「『寺と』プロジェクト」です。スローガンは「ひらけ!!築地本願寺。」でした

私は、人と寺院の「新しいつながり」を提案しようと思いました。私の考えるステップは、「まずご縁をつくる、そしてご縁をつなげる」であり、まずはご縁を「つくる」ことから始めようと考えました。そこでステップ１として、築地本願寺が開かれたお寺になり、広く一般の人たちに「足を運んでみよう」と思ってもらう。（中略）ご縁ができたらステップ２です。「お墓についてわからないことがある」「家族が重い病気になって、余命宣告を受けたので誰かに相談したい」という時、「あのお寺なら相談しやすそうだ。話しに行こう」となれば、関係が深まっていきます。（中略）その関係が継続したら、ステップ３です。「せっかくなら浄土真宗の教えを学びたい」「うちのお墓と葬儀や法要は、築地本願寺にお願いしようか」という気持ちが芽生えた人たちに、門信徒になっていただく

３つのステップを実現するにあたって、具体的には５つの改革案をつくりました。
１．インフォメーションセンター
２．築地本願寺合同墓
３．会員制度「築地本願寺倶楽部」
４．気軽に電話相談、法要予約や合同墓説明会資料請求・予約ができる「築地本願寺コンタクトセンター」
５．サテライトテンプル「築地本願寺GINZAサロン」

大人の学びについては築地本願寺やGINZAサロンで提供する講座のほか、ウェブを活用したオンライン講座にも力を入れています

結婚相談所「築地の寺婚」で縁結びをお手伝い

科学と仏教がタックを組むーーグリーフケアがスタート

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古い体質のお寺であっても、本気でやれば、ここまで改革できるという、生きた事例。

古い組織の再生やリブランディングに挑もうとしている方には、参考になる一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

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『築地本願寺の経営学』安永雄彦・著　東洋経済新報社

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◆目次◆

第１章　新たな時代に変わらない価値をつくる
第２章　開かれたお寺の「顧客創造」
第３章　お寺は「人生のコンシェルジュ」
第４章　目標を共有できる仕組みをつくる
第５章　なぜ働くのか、なぜ生きるのか
終　章　なぜ「新たな時代」に仏教が必要なのか