【思考力より強力な「知覚力」の磨き方】
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以前、美大に入学した長女と、代官山蔦屋書店のカフェに行った時、彼女と自分の「知覚」の違いに気づかされ、愕然としたことがあります。
帰宅後、彼女はカフェの風景をスケッチしていたのですが、そこには、カフェの様子がリアルに再現されている。
一方、同じ風景を見ていたはずの土井は、照明の数やそこにあったはずのオブジェなどを、まったく認識できていなかったのです。
以前、デザイナーのウジトモコさんとお話していた時も、同様のことに気づかされました。
「言語の人って、観察する時に、言語以外が抜け落ちちゃうんですよね」
そう、言語で世界を認識しようとすると、世界をありのままに観ることができなくなってしまう。
人間は、インプットが間違えばどんなに優れた思考力があっても間違うわけですから、これは問題です。
そう、われわれは思考力以前に「観る力」、「知覚する力」を養わなければならないのです。
本日ご紹介する一冊は、この「知覚力」を鍛えるための方法論を、法人教育コンサルタントで、美術史学者の神田房枝さんが述べた、注目の一冊。
著者は、イェール大学大学院で美術史学の博士号を取得後、ニューヨークのメトロポリタン美術館でキュレーターアシスタント、ボストン大学で講師を経た後、ボストン美術館の研究員となった人物です。
本書では、著者が企業に提供している、知覚力を高めるトレーニングのエッセンスを、一般の読者にもわかりやすく伝えた、有用な一冊。
著者によると、現代人の目は「検索モード」に囚われ過ぎていて、「純粋によく見る」ことができていない。
皮肉なことに、われわれは「発見しよう」とすると、「発見できなく」なってしまうのです。
では、どうすればありのままに見ることができるようになるのか。知覚力を向上させることができるのか。
さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。
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人間の知的生産には、「知覚→思考→実行」という3つのステージがあります
「純粋に見る」機会が減ると、人間の知覚力は低下していきます。どんなに高い思考力を持っていても、最初につかんだ知覚が著しく貧弱だったり、歪んでいたりすれば、その先には悲惨な結果が待っています
五感を集中させて対象を観察するとき、人間は「見えないもの」を観ます。これは決してオカルトめいた話ではなく、人間の脳には「眼で見えていないもの」を補いながら観ようとする機能(これを「マインドアイ」といいます)があるということです
知覚とは、自分を取り巻く世界の情報を、既存の知識と統合しながら解釈すること
新しいものは「誰かの主観」から生まれる
知覚の価値は、他人とは異なる意味づけそれ自体のなかにあります。専門家であろうと門外漢であろうと、知覚にはその人なりの独自性があります。他人と異なる解釈にはつねに創造性のポテンシャルが秘められており、これこそが知覚が持つ絶大な意義なのです
◆知覚を磨く方策
1.「知識」を増やす
2.「他者」の知覚を取り入れる
3.知覚の「根拠」を問う
4.見る/観る方法を変える
リベラルアーツとは「幅広い教養の習得」ではない
学生たちが文法学で取り組んでいた課題は、いわば徹底したパターン認識トレーニングでした
文法学は、言語学習でありながら、その実質は、情報に溢れたコンテクスト内で、「部分」をじっくりと観察したうえで、それを「全体」へと関連づける能力を育てることを兼ねていました
現代人の眼は「マルチタスクに心を奪われてそもそも見ていない」「何かを探して/期待して見ている」「なんとなくぼーっと見ている」という3つのモードに支配されています
「絵画を観察するように世界を見る技法」を実践するときに押さえておくといい4つの技術
1.全体図を観る
2.組織的に観る
3.周縁部を観る
4.関連づけて観る
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デキる編集者に話を聞くと、みなさんこの知覚力を高めるために、意味不明な試みをしているわけですが、本書を読んでその理由がよくわかりました。
ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンは、晩年、アインシュタインが統一場理論を確立できなかった理由について、「イメージで考えることをやめ、方程式を操作するようになったからではないか」と指摘したそうですが、同様の危険は、どんなに優秀な人にでも訪れます。
自身の知的生産力を向上させ続けるために、学んでおきたい「知覚力」の鍛え方。
ぜひ読んでみてください。
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『知覚力を磨く』神田房枝・著 ダイヤモンド社
<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆
第1章 すべては知覚からはじまる
──あなただけが観ている世界
第2章 観察する眼──知覚力の源泉
第3章 見えない世界を観る
──マインドアイの系譜
第4章 何を観るか
──絵画を観察するように世界を見る技法
第5章 どう観るか
──知覚をブーストする4つの技術
第6章 知覚する組織へ
──リベラルアーツ人材の時代
終 章 さあ、曖昧な世界で「答え」をつくろう
──The Age of Perception
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