2020年9月11日

『反省記』西和彦・著 vol.5596

【これは読まなきゃ。】
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本日ご紹介する一冊は、マイクロソフト本社の初期のボードメンバーとして「帝国」の礎を築き、創業したアスキーを史上最年少で上場、にもかかわらずマイクロソフトからもアスキーからも追い出された天才起業家、西和彦さんによる、半生の『反省記』。

パソコン黎明期の起業物語を読みながら、処世術について学べるという、じつにユニークな一冊です(笑)。

マイクロソフトの初期のボードメンバーということは、著者がビル・ゲイツと喧嘩せずに上手にやり過ごせていたら、今頃、資産数千億円の大金持ち。

ひょっとしたら、ZOZOの前澤さんのようにお金配りをしていたかもしれませんが、著者が本書で配ってくれるのは、貴重な体験記(笑い)と処世術です。

ところどころ「バカだなあ」と笑いながらも、こんなに真っ直ぐ生きられる著者が、本当に羨ましく思えてきます。

ビル・ゲイツやポール・アレン、孫正義など、時代を創った名起業家たちとのエピソードも刺激的で、最後まで飽きずに読むことができました。

<“女神”が2度サイコロを振ったような気がしてならない>という著者の言葉通り、マイクロソフトの成功は、本当に偶然がもたらしたものでした。

でも、その裏には、著者ら若き起業家の、ひたむきな努力があったのです。

他の起業物語同様、読者に生きるエネルギー、挑戦するエネルギーをくれる、魅力あふれる一冊。

さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

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「過去を否定」することは、自分の足めがけて「弾」を撃つこと

人生には、必ず感動がある。僕は、その感動こそが、よい仕事の出発点にあると思っている

理想のパソコンを作りたい──。この思いが、10代後半から20代を通じて、僕を突き動かしていた原動力だった

それでも、僕は諦めなかった。今度は、電動ミシンのモーターを使うことを考えた。モーターをテレビのチューナーにつければ、ミシンのフット・コントローラーを使って、チャンネルが変えられると思ったのだ。(中略)これは、家族にも大好評だった。面白さも手伝ってか、みんながフット・コントローラーを操作して、チャンネルを変えるようになった。僕もご機嫌だった。ようやく「チェンネル変え」の役目から解放された喜びもあったが、自分の「創意工夫」によって家族が喜んでくれたのが嬉しかった

今思えば、目の前で動いている機械のアナロジーを新しいことに応用するのが好きな子どもだった。出発点は「何かを実現したい」というパッションであり、「これは凄い」という感動だ。そして、その願望を実現するために、すでにあるモノや機械を応用しようとする。これが、僕の基本的な発想法だったと思う

1キロワットの電灯でも、3キロメートル先を照らすことはできない。3キロメートル先を照らすことができるのは、レーザー光だけである。では、レーザー光は何ワットか? たった1ワットに過ぎない。トイレの電球は10ワットで薄暗いのに、なぜ1ワットの光が遠くまで届くのか?それは、光を一点に集中させているからだ

僕たちは、世界初のウィンドウズ・マシン「PC-100」に全身全霊をかけて、無惨な失敗に終わった。しかし、それこそが「ウィンドウズ」の苦闘の歴史の序章だったのだ

彼は表情を緩めてこう言った。「考え直せ」僕は努めて冷静にこう言った。「人間の心はお金では買えないよ」すると、ビルが怒った。「ユー・アー・クレイジー!」

要するに、僕は脇が甘かった。公私混同のそしりを受けるようなことをして、自ら「付け入る隙」を与えていたのだ

社長の最後の仕事は、社長を辞めることである

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何を持って人生、成功というのかは人それぞれですが、お金持ちになって城を築いた人だけを成功者と呼ぶのでは、ちと寂しい。

誰が城の土台になったのか、石垣を作ったのかを知ることで、世の中は見え方が大きく変わってくるものだと思います。

著者は、本書の208ページで、「MSXの名誉のために言っておきたいことがある」と前置きした上で、こんなエピソードを紹介しています。

<MSXから10年以上も過ぎてからのことだ。僕は、世界中の若くて優秀なプログラマーと知り合ったが、多くの人がこんな話をしてくれた。「私が初めて出会ったコンピュータは、父親が買ってくれたMSXでした。あの出会いがなければ、私はコンピュータの仕事をしていません」>

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上」

著者の西和彦氏は、紛れもなく人を遺した方であり、コンピュータの未来を創った方です。

ワクワクするパソコン創世記の物語を、ぜひお楽しみください。

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『反省記』西和彦・著 ダイヤモンド社

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◆目次◆

序 章 遭遇
第1章 萌芽
第2章 武器
第3章 船出
第4章 ゲリラ
第5章 進撃
第6章 伝説
第7章 開拓
第8章 対決
第9章 未完
第10章 訣別
第11章 瓦解
第12章 暴落
第13章 ブラック
第14章 造反
第15章 屈辱
第16章 陥落
第17章 撤退
第18章 負け犬
終 章 再生 

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