【恐竜は滅びても、雑草は繁栄する】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453405792X
最近、長崎の自宅の庭の雑草取りにハマっているのですが、雑草のことを知れば知るほど、恐ろしいことに気づいてきました。
今、土井は庭を見ると何が雑草なのか、瞬時にわかるほどの雑草のスペシャリストですが、先日代々木公園に行ったら、1200km離れた土地に、土井の庭と同じ雑草が生えていたのです!!
「奴らは、ここまで勢力を拡大しているのか…」
すごいのは、その勢力分布の広さだけではありません。何しろ奴らは「しぶとい」のです。
庭の雑草の葉っぱを抜くと、じつはその下に根があることがわかる。ここまでなら誰でも予想できます。雨の日に抜くと、かなり広範囲に根が広がっていることがわかるでしょう。
では、これを根こそぎ取ったら、雑草を駆逐できるのでしょうか?
じつは、彼らは仮に根っこごと抜かれてもいいように、球根や種などのバックアッププランを用意しています。しかも取り切れないほど大量に。
つまり、奴らを完全駆逐することなど、到底無理なのです。
本日ご紹介する一冊は、こんなしぶとい雑草の生存戦略を、ビジネス戦略として解説した、異色の一冊。
著者は、静岡大学教授で農学博士の稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)さんです。
この手の本は、切り口だけ斬新で中身が薄っぺらいことが多いのですが、本書に関しては、恐れ入りました。
ものすごく秀逸な経営戦略書です。
名のある経営学の教授に推薦をもらって、丸善丸の内本店で積極展開すべき本と断言しておきましょう。
本書によれば、雑草は、「大きいことこそが、良いことだ」という従来の価値観を完全に覆すことで、世界を支配しました。
本書には、その雑草の生存戦略の秘密が事細かに書かれています。
コロナ禍で苦しむ企業や個人にとっては、まるで光が差したかのように感じられる「救いの書」となるに違いありません。
さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。
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「大きいことこそが、良いことだ」という従来の価値観を、草というイノベーションは、完全に覆した
ビジネスの場面で用いられる「ニッチ」という言葉は、もともと生物学の用語である。それが、次第にビジネスの世界でも使われるようになったのだ。生物学では、「ニッチ」は「生態的地位」と訳されている。私は、これを「ナンバー1になれるオンリー1の場所」と呼んでいる
じつは、ナンバー1になる方法は1つではない。あるエサを巡ってはナンバー1、ある生息場所を巡ってはナンバー1、ある季節であればナンバー1、ある時間であればナンバー1、というように、同じ場所であってもナンバー1になる方法はいくらでもあるのだ
雑草は弱い植物である。まともに戦ったのでは、勝ち目がない。そこで、競争力を求められない予測不能な変化の起こる場所を選んでいるのである
競合型戦略に求められるものは「サイズ」である。大きい方が競争に強い。つまり大きい方が有利なのだ
ストレス耐性型戦略にとって重要なことを一言で言うとすれば、それは「蓄積」である。サボテンは丸々と太った茎の中に水を蓄積している
ルデラルな撹乱適応型戦略はどうだろう。変化を乗り越えるためにもっとも必要なことは「スピード」である
もう一つルデラルな植物にとって重要なことがある。それは、「次への投資」である
植物の成長点は、茎の先端にあって新しい細胞を作りながら上へ上へと伸びていく。しかし、それでは茎の先端を食べられると成長点も失ってしまい、ダメージが大きい。そこで、イネ科植物は、成長点を低い位置に構える形に進化させた
雑草は立ち上がるような無駄なことはしない
雑草にとって、もう一つ重要なポジショニングの軸がある。それが「遷移(Succession)」である。遷移とは、時間の経過による植物の移り変わりのこと
自殖を続けていれば、多様性を維持することが難しくなる。そのため、雑草の多くは自殖だけに頼るのではなく、他殖も自殖もどちらも行うことができるという「両掛け戦略」をとるものが多い
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いや、久しぶりに読みごたえのある経営戦略書を読んだ、という感じです。
競争することだけで勝つのではなく、ストレス耐性によって勝つ、ルデラル(荒地に生きる)戦略で勝つ。
また、あえて「成長点を低く持つ」戦略も、変化の激しい時代にあっては有効です。
ぜひ本書を読み込んで、雑草の「戦略コンセプト」を盗んでみてください。
庭の雑草取りをした後なら、より理解が深まること請け合いです(笑)。
これは8月イチ押しの一冊ですね。
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『雑草という戦略』稲垣栄洋・著 日本実業出版社
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453405792X/
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◆目次◆
I 「雑草」という戦略
第1章 植物という世界のイノベーション
第2章 生物にとって「強さ」とは何か?
第3章 ルデラルという戦略
II「雑草」の成功法則
第4章 雑草の成功法則「逆境」
第5章 雑草の成功法則「変化」(1)
──変化するために必要なもの
雑草の成功法則「変化」(2)
──変化とはチャンスである
雑草の成功法則「変化」(3)
──時代の変化に対応する
第8章 雑草の成功法則「多様性」
第9章 雑草の成功法則とは何か?
第10章 雑草の特徴的な戦略
III「雑草」という哲学
第11章 雑草と日本人
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