【ハリウッド、ベガスを創った知られざる大富豪。】
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本日ご紹介する一冊は、MGMグランドホテル&カジノ創業者、カーク・カーコリアンの貴重な評伝。
著者は、元「ロサンゼルス・タイムズ」紙記者で、作家・報道作家のウィリアム・C・レンペル氏です。
著者は本書を書き上げるにあたって、カーコリアンの生前のインタビュー音声、ドキュメンタリー、裁判の記録などを丹念に調べ、関係者に取材を申し込み、その多くは断られながらも粘り強く本書をまとめました。
メディアや人前に出ることを嫌い、世界の富裕層の中でもとりわけ謎めいた人物であったカーコリアンの素顔に迫る、興味深い一冊に仕上がっています。
最終学歴「中学中退」、アルメニア移民の一文無しから身を立て、ハリウッドとラスベガスを創った男、純資産は200億ドルと言われている成功者の、生涯全取引の記録と、そのビジネス哲学、決して幸せとは言えなかったプライベートが綴られています。
ビジネスノンフィクションとして企画されたものではないので、ビジネスパーソンが読んだら物足りない部分もありますが、行間から読み取れる著者の人柄、哲学が氏を成功に導いたことは間違いないでしょう。
ビジネスでもプライベートでもギャンプルを愛した氏が、どうやって短期間で大成功を収めたのか、知りたい方には興味深い評伝です。
さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。
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「決して振り返ってはいけない」。カークは人によくそう言っていた。だが結局彼が考えていたのは、自分の人生で何がいちばん重要かということだ。それは成功でもなければ失望でもない。危険をおかすスリルだ。「人生はビッグなクラップスだ」と『ロサンゼルス・タイムズ』紙に語っている。「それをずっと楽しんでいるのだ」と
多くの点で、ダンドロスはカークが手本とすべき人物だったかもしれない。ふたりともギャンブラーとして紳士だった。人当たりがよく、親切で、容姿端麗。どちらもチップを気前よく差し出した。勝っても負けても穏やかな物腰を崩さなかった。金に無頓着なところがあった。金は賭けの元手にすぎず、人間性や人の真価を測るものさしではない。賞金を勝ち得たときも、損をしたときも、ダンドロスは「ただの金だよ」と気にしなかった
交渉の途中で退席するというカークの理論は、ほぼどんな場面でも応用できた。「また戻ればいいだけさ」とよく言っていた
古く疲弊したMGMに、カークは投資家の評価を超える、隠れた価値を見た。1株当たり25ドル前後のきびしい数字で市場価格が推移するなか、すでに巨額の損失をこうむった投資家たちは好転の可能性を微塵たりとも考えることができなかった。しかしカークとバウツァーは、同社の実価は4億ドル、あるいは1株69ドル近いと判断した。ふたりが目にしたものは、『風と共に去りぬ』『雨に唄えば』『オズの魔法使い』をはじめとする膨大な名作映画コレクションだった
カークは「わたしはどんな『物』とも結婚していない」とよく口にした。危機に陥ったときも勝負に出るときも人生を通じてほぼすべての「物」が売りに出された
カークにはアイデアがあった。多角経営を始めたらどうだろう。娯楽産業の映画分野とギャンブル分野を一体化させるのだ
カークが昔から備えていた辛抱強い特徴のひとつで、友人たちに何より好感をもたれていたのに、恨みをあまり引きずらないということがあった
勝てないギャンブルはするな
しゃべりすぎるな。手の内を明かすな
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最後のパートに、カーク・カーコリアン「7つの成功の秘訣」がまとめられており、成功本としても読めるように工夫されています。
ノウハウ書ではありませんが、行間を注意深く読めば、カーコリアンの成功の秘訣が浮かび上がってくるはずです。
ぜひ読んでみてください。
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『ザ・ギャンブラー』ウィリアム・C・レンペル・著
上杉隼人・訳 ダイヤモンド社
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◆目次◆
プロローグ 人生はビッグなクラップスだ
第I部 人間創生
第II部 億万長者誕生
第1章 ギャングたちとのトラブル
第2章 大富豪vs大富豪の覇権争い
第3章 7300万ドルの賭け
第4章 世界に名を知られる
第5章 カーク・カーコリアンとエルヴィス・プレスリー
第6章 笑うコブラ
第7章 挫折
第8章 敵兵去る
第9章 活動再開
第10章 深淵に広がる光景
第11章 特別なリスク要因
第12章 パンチの応酬
第13章 MGMの大惨事
第14章 保険を食い物にする悪人
第15章 ひと振り100万ドルのダイス
第16章 テッド・ターナーの時限爆弾
第17章 海上での埋葬
第18章 億万長者のひとりとして
第III部 伝説創生
第19章 打席に立つベーブ・ルース
第20章 やっかい者のアイアコッカ
第21章 彼女はあくまで固執した
第22章 ライフル・ライト、マイク・タイソンを受け入れる
第23章 大量虐殺と寛容さ
第24章 勝って負ける
第25章 致命的誘引
第26章 取引仲介人たちの神
第27章 わが道を行く
第28章 大理石のアッパーカット
エピローグ カーク最後の取引
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