2020年7月7日

『ワークマンはなぜ2倍売れたのか』 酒井大輔・著 vol.5551

【今年のベストビジネス書になるかも。】
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本日ご紹介する一冊は、作業服専門店から一夜にしてアウトドアショップに変身、あのユニクロをも脅かすアパレルブランドに成長した、ワークマンのケーススタディ。

ちなみに、ワークマンの株価は、新業態「ワークマンプラス」を打ち出す2018年には2000円前後を行き来していましたが、現在は約1万円と約5倍に。

このコロナ禍でも、海外展開をしなかった点が功を奏し、また作業服を扱う社会インフラだからと店を開けていたことから、既存店売上高は2020年4月に前年比5.7%増、5月は同19.4%増と着実に業績を伸ばしています。

本書では、この華麗なる業態転換を成し遂げた土屋哲雄専務はじめ、当事者たちのインタビューをもとに、ワークマン躍進の裏舞台を徹底検証。

<全社員がエクセルの達人>
<出店も加盟店募集も「ABテスト」>
<全量買い取りの「善意型SCM」>
<「売れているものが安い」という逆転の発想>

など、知られざる同社の経営のしくみを、日経クロストレンド記者の酒井大輔氏が、丸裸にした内容です。

優れた経営のケーススタディであるのはもちろん、投資家目線でワークマンの今後を知りたい方、起業家として新規ビジネスのヒントが欲しい方などにも自身を持ってオススメできる内容です。

さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

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ワークマンプラスを見たとき、誰もがこう思っただろう。ワークマンが、カジュアルウエアの新ブランドを開発した。ワークマンプラスという全く新しい店をオープンしたのだと。実際に、あまりのイメチェンぶりに、昔からのファンは衝撃を受けた。「悲報!俺たちのワークマンはどこに行った」というつぶやきがネット上に飛び交った。しかし、そうではなかった。並んでいる商品は、すべて既存のワークマンで扱っているアイテムだった

「小売業の場合は、常識的に考えた大きさよりも、一段大きくしたほうがいい結果を出す。これは、これまでの私の経験から言える。これに対してフードサービスの場合は、一段小さくしたほうがいい」(土屋(※嘉雄)氏)

土屋(※哲雄)氏はこの一見すると飽和状態のアパレル業界で唯一、競合不在の「ブルーオーシャン」を発見した。高いか安いかという価格軸に加え、機能性という軸を1本加え、4象限でライバル候補をポジショニングした。すると、低価格かつ高機能を両立させたブランドが、市場からすっぽりと抜け落ちていることに気づいたのだ。耐久性や防水、はっ水など、作業現場で磨いてきた機能性を売りにすれば、ユニクロとも差別化でき、なおかつ圧倒的な安さを押し出せば、スポーツメーカー、アウトドアメーカーとの競争も避けられる。そしてこの発見したブルーオーシャンの市場規模を4000億円と見積もった

「コンビニのようにムチのSCMではなく、お互いにウィンウィンになれるサプライチェーンをつくりたい」。そう考えて生まれたのが、善意型SCMという仕組みだった。ワークマンは国内31の主要メーカーとの間で、全量買い取りを約束している

我々は『安いから売れている』というよりも、『売れているものが安い』という発想に立っている

世界中のメーカーをすり減るまでベンチマーク

ワークマンを愛用してやまないブロガーやユーチューバーといったインフルエンサーを「製品開発アンバサダー」に任命し、社員と机を並べて共同開発

「ワークマンプラス」の開業からちょうど1年がたった2019年9月5日、ワークマンは東京・新宿のルミネゼロを貸し切り、秋冬の新作発表会を開いた。ただの発表会ではない。「過酷ファッションショー」という名の、サブタイトルがついていた(中略)実は、舞台袖に暴風を吐き出すブロアーや降水機、降雪機を持ち込み、考え得る限りの荒天を再現していたのだ。過酷な環境に強いワークマンを、目に見える形で発信した、実にユニークな試みだった

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戦略が鮮やか、商品開発が骨太、サプライチェーンが非常識、マーケティングがユニーク…。

でも、そのすべてにシンプルな軸が通っていて、じつに美しい経営の教科書です。

プロショップとしての強みと誇り、アイデンティティを失わずに業態転換を遂げ、大躍進をしたワークマンのケーススタディは、すべてのビジネスパーソン必読です。

ひさびさに感動の一冊でした。

絶対に「買い」の一冊です。

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『ワークマンはなぜ2倍売れたのか』
酒井大輔・著 日経BP

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◆目次◆

はじめに ワークマンとは何者か
第1章 ワークマンを変えた男
第2章 大躍進の裏に「データ経営」あり
第3章 ものづくりは売価から決める
第4章 ファンの「辛辣な文句」は全部のむ
第5章 変幻自在の広報戦略
第6章 店づくりは壮大な実験
第7章 継続率99%!ホワイトFCへの道
第8章 「変えたこと」と「変えなかったこと」
第9章 アフターコロナの小売りの未来

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