2020年5月12日

『糸島ブランド戦略』岡祐輔・著 vol.5511

【地方創生をビジネスケースとして考える】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4788911906

本日ご紹介する一冊は、内閣府が開催する「地方創生☆政策アイデアコンテスト2016」で、全国486組から最優秀賞に選ばれた、「糸島マーケティングモデル」の仕掛け人、岡祐輔さんによる一冊。

糸島市は、福岡市の中心部から電車・車ともに30分の距離にあり、いまや「住みたいまちランキング1位」「人気観光スポットランキング1位」となり、全国のメディアで紹介される人気スポット。

コロナの影響はもちろんあるとはいえ、移住者の増加やブランディングの成功で、まさに町は活況を呈しています。

土井も長崎県大村市に来て早々、地域活性化のご相談をいただいていますので、マーケティングのヒントが隠されていないか、知りたくて手に取った本ですが、これは大当たりでした。

地方創生に関しては、もちろん細かいヒントが書かれていますが、地方創生に興味がない人でも、地方創生をビジネスケースとして、思考トレーニングができる内容です。

現役の公務員でありながら九州大学大学院でMBAを取得したという著者が、MBAメソッドを活かし、どう考え、どうやって問題発見・問題解決をしたのか。

さっそく、本書の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

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糸島市には18か所も産直施設があり、なかでもこの「伊都菜彩」は、1店舗で100円や200円の野菜を中心に、年間売上40億円以上、レジ通過者だけで135万人が訪れるメガ市場。これは産直施設の2位に大きく水をあけて日本一の売上額を誇っています(「日本農業新聞」)

産直施設だけでなく、冬の風物詩として、複数の漁港に大きなカキ小屋が立ち並びます。なんとカキ小屋の経営者は全員漁師です

糸島市では「見てみたい・行ってみたい」→「食べてみたい・買ってみたい」→「起業してみたい・住んでみたい」という段階を踏んでまちのブランドづくりを行っています

なかには糸島市に仕事がなくても、福岡市内で働いて、糸島市に住んでもらうだけでいいという意見もありますが、僕はそう思っていません。理由は、通勤時間と合計特殊出生率の相関関係を表すグラフを見てもらうとわかります。通勤時間が往復70分、出生率が1・53(バブル期程度)が境界線であり、往復70分を超えると徐々に出生率が下がる傾向にあることがわかります

暮らしブランドの維持・向上には、地域の仕事、もっと言うと、多くの人たちが働ける「産業」を育成するという視点が大切だと考え始めました。そこで糸島の産業を調べるために、地域の産業ごとの儲けを表す「移輸出入収支額」に着目しました。産業ごとに市外に売る金額と市外から仕入れる金額の差を見ることで地域にお金が入ってきているかどうかを調べることができます

業種ごとに付加価値額(稼ぎの大きさ、儲け額)を分けてみました(中略)飲食料品小売業だけは、全国平均の2倍も稼いでいることがわかりました

最も困ったことは「販路開拓」でした。この役割は特に福岡市内のパートナーにこだわっていました。「マルチ・ドメスティック戦略」といって「現地の情報を持ち、現地で動ける人」と組む方法は、ビジネススクールで学んだ重要な戦略の一つです

糸島産は福岡県産のふともずくの生産量の半分を占めます。天然物がない希少な食材だったので、他では手に入りにくく、漁師直送ということもあって、他のもずくと差別化しやすいものでした。地域密着のマーケティングでは、販売領域を絞り、その中で一番になることが大事です

3つのN──「熱意」「粘り」「仲間づくり」が大事

農業が輸出産業になっているまちと、そうでないまちでは1人当たり付加価値額、つまり農業者の稼ぎが1人当たり約100万円も違います

これから発展していくまちは、外にファンをつくらないといけない

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統計データを見て、何にどう注目すればいいのか、どこから戦略のヒントを得ればいいのか、何に注力し、何を捨てるのか。

戦略のヒントとマーケティングのヒントがびっしり詰まった、良質なケーススタディです。

新規事業や新規プロジェクトに関わっている人にとっては、実際にコトを進めるに当たって必要な心構えや処世術も学べる内容だと思います。

女子高生とタッグを組んで「糸島産ふともずく」を成功させた話、予算ゼロから新駅を作った話など、読み物として読んでも面白い。

ぜひ読んでみてください。

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『糸島ブランド戦略』岡祐輔・著 実務教育出版

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◆目次◆

第1章 観光と移住でまちが変わった糸島
    観光客が急上昇・移住者も増加中
第2章 糸島の地方創生の謎に迫った
    何が糸島市のブランドを牽引しているのか?
第3章 地方創生大臣賞「糸島マーケティングモデル」が始まった
    糸島産「ふともずく」が全国区へ
第4章 糸島ファームtoテーブルは戦略立案だった
    「食」は稼ぐ地域戦略!
第5章 地方創生の鍵は民間モデルをつくること
    公民連携モデルのつくり方
第6章 苦しいときに粘ると仲間ができた新駅の話
    ゼロ円で駅をつくる!?
第7章 ダメ公務員の僕は、日本一のMBA公務員になった
    市職員が日本一の地方創生大臣賞に
第8章 公務員としてのモチベーションを上げる
    お役所リミッターを外す

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