【柳澤秀夫氏、ジャーナリズムの精神を語る】
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本日ご紹介する一冊は、元NHKの解説委員でジャーナリスト、「あさイチ」では驚きのイメージチェンジを果たし、「ヤナギー」の愛称で親しまれた柳澤秀夫さんが、その半生を振り返りながら、ジャーナリズムの精神を語った一冊。
カンボジア内戦や湾岸戦争などの歴史的瞬間を現場で見ていた著者が感じたこと、そこから湧き上がるジャーナリストとしての使命感が熱く語られ、メディアにかかわる人間なら、きっと胸が熱くなるに違いありません。
書き手、伝え手ならみんなが気になる、取材の方法論、伝え方も、著者独自の視点で述べられており、考えさせられます。
キャリアを考える若いビジネスパーソンなら、著者がどうやって好きなことを奪われながらも天職と出合ったのか、その経緯に興味が湧くかもしれません。
個人的には、以下のオビの文言が刺さりましたね。
<生涯、記者として在りつづけたい。だから何度も、自分の不甲斐なさを思い知る>
何かを長く続けると、その分いろんなことが起こるものですが、乗り越えたから、続いているとも言える。
キャリア的視点で読んでも楽しめる内容です。
さっそく、本書の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。
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スカッとするなら、人は次から次へと自分の好みに合った情報になびく習性がある。そこに目を付ければテレビは視聴率も取れるし、新聞や雑誌もよく売れるようになる。こんなとき、メディアは目先の誘惑に負けず、流れに迎合せずにいられるか。というより、いやしくもメディアに携わる者ならば、決して迎合すべきではない。背骨は絶対に曲げてはならない
旧来のイデオロギーにこだわっていたら、目の前で起きている現実を理解することも、ましてや受け入れることもできない
先行き不透明で変化の激しい流動的な時代には、誰しも自分が安心できるものだけを見ようとする。安心材料だけを集めて、不安材料は見て見ぬふりをする。いわば現実逃避だ
紛争地帯の取材の本質は「はざま」を取材することにあると思っている。敵と味方に分かれて戦っている、そのはざまに置かれた人たち。戦場と日常のはざまで、もみくちゃにされている人たち
本当に何かを伝えようとするならば、当たり前のことではあるが自分で現地に足を運び取材をしなければならない
戦争を伝えた先達たちが教えてくれたのは、戦火の下には必ず、虫けらのように踏み潰された人たちがいるということだ
歯切れのいい言葉を引き出すことだけがインタビューではない。賛成か、反対か。右か、左か。白黒はっきり決められなくて、本当にどっちともつかなくて、悶え苦しんでいる。そこにものごとの本質があるのではないか
スクープという言葉は、ある事実を他局に先駆けて報道するという意味で使われる。しかし明日になれば発表されるものを今日伝えたからといって、それは「掘り起こす」という本来の意味でのスクープではない。当事者が隠しておきたい重大な事実を掘り起こして伝えるのが、本当のスクープ=特ダネと言えるのではないか
取材とはニュースの素材を集めることだと言われるが、本質はその逆で、余分な情報をそぎ落としながら確認を積み重ね、ことの核心に迫る作業だと私は考えている。裏を取る。さらにその裏の裏を取る。取材相手に確認を取るとき、受け答えをした相手の表情や仕草はどんなものだったか。それはきわめて重要な判断材料となる
なぜ戦場に記者が必要なのか。戦争が起きると、為政者たちは自らに都合のいい情報だけを公表し、不利なことは隠そうとする。事実を捻じ曲げ、平気で嘘をつく。さらに「大義」を持ち出し、戦争そのものを正当化しようとする。だから、現場を取材して、その実像を伝えなければならない。殺し、殺されるのは、為政者ではなく、弱い立場の生身の人間なのだ
人間は、頭で考えるより先に、単純化されたものや扇情的なものに感性で飛びつく。テレビはもともと、見てもらってなんぼのものだ。キャッチすることは必要だと思う。だけど、キャッチすることばかりに長けて、店の暖簾をくぐらせたあとに食べさせるものがまずいのでは仕方がない
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<紛争地帯の取材の本質は「はざま」を取材すること>
<歯切れのいい言葉を引き出すことだけがインタビューではない>
<(取材とは)余分な情報をそぎ落としながら確認を積み重ね、ことの核心に迫る作業>
メディアにかかわる人間として、重要な視点を与えてもらいました。
著者の生い立ちや天職との偶然の出合いなど、読みどころ満載の一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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『記者失格』柳澤秀夫・著 朝日新聞出版
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◆目次◆
はじめに
第1章 現場に行かずして何がわかるか
第2章 野次馬根性
第3章 こぼれ落ちそうなものにこそ宿る真実
第4章 バグダッド、最後の臨時便
第5章 現実は、ひとことでくくれない
第6章 ならぬことはならぬ
第7章 つねに、見えていない世界がある
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