2020年1月29日

『企業不祥事を防ぐ』國廣正・著 vol.5444

【なんてエキサイティング。】
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今週は、読み応えのある本が続く「当たり」ウィークですが、本日ご紹介する一冊も、じつにエキサイティングな内容。

「コンプライアンスの本」なんて書いたらみなさん「即」敬遠すると思いますが、この本は、行き詰まった日本企業を救う救世主であり、じつにエキサイティングな「成長へのストーリーの書」でもあります。

著者の國廣正さんは、数多くの大型企業不祥事の危機管理に関わってきた人物。

東京海上日動火災保険、LINEで社外取締役、三菱商事、オムロンで社外監査役を務めており、2018年の日本経済新聞社「企業が選ぶ弁護士ランキング」では、「危機管理分野」で第1位にランクされる、この分野の第一人者です。

そんな方がどんなことを書くのかと興味津々でしたが、読んでみたら、これが目からウロコ。

<過剰規制から「ものがたりのあるコンプライアンス」へ>と題された第一章で、著者はこんな主張をしています。

<「自分の会社はどうありたいか」という「ものがたり」を語る力がコンプライアンスの本質だ>

<コンプライアンスの基盤となるのは社員の誇り・プライドだということになる。そして、社員に誇り・プライドをもたらすものは「自分はなぜこの会社で働いているのか」というストーリーだ>

何だか、ものすごくアグレッシブで、前向きな感じがしませんか?

そうなんです。本書の面白いところは、企業やそこで働く人に前向きな気持ちを与えるストーリーとしてのコンプライアンスを提唱していることなんです。

本書には、企業不祥事への対応に失敗した企業と成功した企業の事例が対照的に紹介されています。

読めば、企業として何が大事か、どうすれば働く人が誇りに思える企業ができるのか、そのヒントが掴めるでしょう。

さっそく、ポイントをチェックしてみます。

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会社の種類はいろいろだ。食品会社、機械メーカー、衣料品販売会社、IT系、情報通信系、不動産会社、商社、銀行、保険会社……というように千差万別だ。だから、それぞれの会社が、その会社の事業の特性から見てどのようなリスクがあり、そのリスクをどう予防するのが効果的かを考えて制度を設計し、それに抜けがないかを法律を参照してチェックするというのが本来のやり方だ

自動車メーカーは、目指すべき方向を明確に定め、経営陣及び全役職員に至るまで、一丸となってクルマ作りに取り組む必要がある。この方向が明確に定まっていないと、クルマ作りに関わる人たちが様々な問題に直面したり迷ったりした際に、立ち返るべき理念がなくなってしまう。ひいては、会社全体としてのクルマ作りが迷走してしまう。そして、最悪の場合には、立ち返るべき理念がないがゆえに、利益という分かりやすい目的の追求のために、目の前にある問題やプレッシャーから目を背け、そこから解放されようとして、自動車に対して、絶対にしてはいけないことをしてしまうのである

どのように厳格な規則やシステムを作り、座学研修を受けさせても、それによって当然にジャーナリストとしての誇りが生まれてくるものではない。ジャーナリストの誇りは、日々の仕事の経験の中で先輩の背中を見ながら、基本的には「現場」でしか身につけられないものではないか

MMCとNHKのコンプライアンスに共通していたのは何か。それは、一人一人の社員の立場から見たとき、コンプライアンスというものが「なぜ、私たちはこの企業で働いているのか、何をやりたいのか」ということとは無関係の「やらされ感」をもたらすものに過ぎなかったということだ。つまり、コンプライアンスと社員にとっての働く意義とが分断されていた点が両社の共通項といえる

「自分たちのビジネスモデルが時代にそぐわないものになっているのに気づきが遅れた。だから、方向転換して出直そう(すき家)」という具体的な「ものがたり」、ストーリーに基づく実践が本物のコンプライアンスなのだろう

現場については「性善説か性悪説か」という二者択一の発想ではなく、人は弱いもので周囲に同調してしまうという「性弱説」で理解しなければならない

この状況を一言でいえば、「いい物を作れば売れる」というメーカー主導の時代から「売れるものがいい物だ」という消費者主導の時代への変化ということができる。このような時代の「品質」に対する信頼は、もはや「職人芸」に対する盲目的な信頼といったものではない。デジタルに(=数字で)「見える化」されたものに対する信頼、つまり誰が見ても分かる客観性を持ったデータに対する信頼なのだ

検査データの分布を常時解析しておくことも有益だ。これにより正規分布とならない異常データをキャッチすることで、改ざんされたデータ群を発見することも可能になる

不祥事を防ぐためのキーワードがある。それは組織の中に女性、外国人、中途採用者といった「異分子」を取り込むということだ

主流の親会社よりもむしろ非主流・傍流の子会社のほうが、不祥事リスクが大きい

ステークホルダーは、「言行一致か」「誠実か」「間違いを犯した場合、真摯に現実に向き合って改善に取り組んでいるか」というインテグリティの観点から企業を評価する

健全で風通しの良い企業風土が醸成されていれば、コンプライアンス問題は発生しにくい。逆に、収益至上主義や権威主義の傾向が強ければ、不祥事につながりやすい

自然災害であっても不祥事であっても、危機管理の本質は変わらない。それは正確な状況把握、明確な決断、そしてブレることのない断固とした対応という三点だ

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著者自身が有名企業で社外取締役や社外監査役を務めているので、事例もじつに具体的で参考になります。

これから企業がグローバル化するにあたり、重大リスクとなり得る外国公務員贈賄問題、NGOとの対話は、これまで意識したことがなかったので、じつに勉強になりました。

本書を読めば、これまでつまらなかったコンプライアンスが、会社を前に押し進める原動力となることに気づくでしょう。

人間は究極、金のために働くのではなく、存在理由や誇りのために働いている。

社員が誇りに思える会社を作るために、すべての経営者、仕事人に読んでほしい一冊です。

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『企業不祥事を防ぐ』國廣正・著 日本経済新聞出版社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532323037/

<Kindleで購入する>
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◆目次◆

はじめに
第1章 過剰規制から「ものがたりのあるコンプライアンス」へ
第2章 日本型企業不祥事の根本にあるもの
第3章 これからのコンプライアンス
第4章 コーポレートガバナンスの実際
第5章 危機管理実務の最前線
第6章 企業のグローバル展開とリスク管理\
おわりに

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