【京極夏彦が語る、生き抜くための言葉の力】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065173841
本日ご紹介する一冊は、2019年7月27日、講談社にて京極夏彦氏が行った、一般公募の10代限定特別講座「たたかわないために~語彙と思考」を書籍化したもの。
これから社会に出る若者たちに、言葉を生業とする著者が、世の中(地獄)の楽しみ方を伝授する。それも語彙と思考を武器として。これが面白くないわけがありません。
勝ち負けを迫る資本主義に対して、<「勝った」「負けた」も言葉の魔術>と喝破し、<その人の人生はその人がよければそれでいいんです。負けもなし、勝ちもなし>と言い切っています。
本書を読んでいると、いかにわれわれが言葉によって思考を限定されているか、言葉の不完全性のために大切なものを切り捨て、他者との間に諍いを生んでいるか、よくわかります。
タイトルは『地獄の楽しみ方』ですが、本書を読めば、何が自分の人生を地獄にしているのか、どうすれば地獄のなかでも楽しく生きられるのか、よくわかると思います。
基本は、生き方に関する本ですが、ところどころに執筆の極意、言葉を使う際の注意点などが盛り込まれていて、出版業界人はまた違った楽しみ方ができる一冊。
これからの本作りのヒントにもなるので、著者・編集者は、ぜひ読んでおくといいでしょう。
さっそく内容をチェックしてみます。
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よく「学校の勉強なんか実社会では役に立たないじゃん」というようなことを言う人がいますよね。でも、それは役に立たないのではなくて、役に立てることができないというだけです
気持ちを人に伝えるためには、言葉にしなきゃいけないですね。言葉にする時に、とりあえず何か言わなきゃ通じないから、「私は悲しかった」と言っちゃうんです。その時、悔しい気持ちや、ちょっと面白かったとかいう気持ちは全部捨てられてしまいます。言葉は、この世にあるものの何万分の一、いや、何百万分の一ぐらいしか表現できないものなんです
言葉は世界に対して何の影響力も持っていないんです。言葉が影響力を与えられるのは、それを受けとめることができる人間だけです
言葉だけではコミュニケーションなんか取れやしないんです。だいたい、発するほうは言いっ放しで通じたと思ってます。でも通じてないですよ。足りないんですからね。で、聞くほうは勝手に補完しちゃうんです
言葉はデジタルなんです。アナログに近づけようとするなら、細分化していくしかない。粒子を細かくして解像度を上げるしかないんですね
小説なんかは、むしろそこを逆手にとらないといけないんですね。僕は一応、小説家なんですよね。忘れがちですが。小説は、書いてあることより書いてないことのほうが大事なんです
昔、「話せばわかる」と言った総理大臣がいましたが、残念ながら暗殺されてしまいました。話したってわかりゃしません。でも、逆に、話さなくたってわかる時はわかるんです。そういう人間関係が築けているなら、別に言葉は必要ないですね
勝った、負けたというのは、ルールあってこその考え方
人間は、なりたいものになるんです。なっちゃうんです。今のあなたたちは、あなたたちがなりたかったものなんです。それは間違いのないことです。本当の自分はこんなじゃないというのでしょうか。私はやればもっとできる子だというんでしょうか。なら、やればいいじゃないですか。やらないから、できないんです。今の自分が、自分のこれまでの成果なんです。意識してもいなくてもそれが望んだ自分です。まずすこを認めないと、そこから先には進めないです
日本語には言葉がたくさんあります。たとえば「慈しむ」、「情けをかける」、「かわいがる」、「大事にする」、「好き」、いくらでも言葉があります。「愛」なんか使わなくたっていい。言葉を選びましょう。「愛」で済ませることをやめましょう
辞書には何万語、何十万語という言葉が載っています。それを手に入れることは、自分の人生を豊かにすることです。語彙は、その数だけ世界をつくってくれるんです。たくさんの言葉を知って、その言葉を使いこなすことが、どれだけ豊かな人生をつくってくれるか、それははかり知れないことでしょう
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個人的に好きだったのは、<本の中には、もう一つの人生があります。十冊楽しめた人は十、百冊楽しめた人は百、違う人生を歩めるんです>という言葉。
ちょうど昨日、日本人の読解力が落ちているというニュースが出ていましたが、人生戦略としての読書が広まれば、面白いと思います。
あと、語彙の大切さについて書かれた部分もいいですね。
ぜひ、読んでいただき、若い方にも勧めてやってください。
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『地獄の楽しみ方』京極夏彦・著 講談社
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065173841/
<Kindleで購入する>
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◆目次◆
第1部 言葉の罠にはまらないために
第2部 地獄を楽しむために
京極さんとの言葉をめぐる一問一答
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