【ブランド論の大家・アーカー教授の新論考】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478106924
本日ご紹介する一冊は、世界的に有名なブランド論の大家であり、カリフォルニア大学バークレー校の名誉教授、デービッド・アーカー氏による、注目の新刊。
著者は、グローバルに活躍するブランド・コンサルティングファーム、プロフェット社の副会長であり、娘はスタンフォード大学経営大学院で教授を務める、ストーリーマーケティングの先駆者、ジェニファー・アーカー氏。
https://www.gsb.stanford.edu/faculty-research/faculty/jennifer-lynn-aaker
その娘さんに触発されて事例を集め、プロフェット社のストーリーマーケティングの手法を加えて完成させたのが本書、『ストーリーで伝えるブランド』(原題は『Creating Signature Stories』)です。
原題と、翻訳書の副題に含まれている「シグネチャーストーリー」とは、単なるストーリーではなく、その企業の戦略メッセージを強力に語るストーリーのこと。
英語で「signature dish」といえば、「シェフの特別料理」「お店を代表する料理」という意味ですが、「シグネチャーストーリー」は、「企業を象徴するストーリー」と言っていいでしょう。
L・L・ビーン、チャリティ・ウォーター、モルソン・カナディアン(ビールメーカー)、バーバリー、ジレット、セールスフォース・ドットコム、スカイプ、マリオット、レッドブル、クノール・スープなどのシグネチャーストーリー事例と、キャンペーンがどれほど成果を上げたかの数値的検証が示されており、じつに興味深い内容です。
プロフェット社のコンサルティングノウハウも部分的に開示されており、マーケティングに携わる人は見逃せない内容です。
さっそく、内容をチェックして行きましょう。
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ピーター・グーバーは、ビル・クリントンについてのストーリーも語っている。クリントンは1992年の大統領選で、ニューハンプシャー州の予備選に敗れ苦戦していた。次の州へと選挙戦を続けるためには、24時間以内に9万ドルが必要だった。そこで彼のスタッフはグーバーに助けを求めた。選挙資金に関する法律に照らせば、それはグーバーが90人から約1000ドルの寄付を募ることを意味する。クリントンにチャンスがあることの確証を得たかったグーバーは、直接話すことを求めた。電話に出たクリントンはこう尋ねる。「映画『真昼の決闘』を見たことはありますか?」
やがてビタリ─は選手として成功し、ケベック・メジャー・ジュニア・ホッケーリーグの一員となる。彼の傍らにはいつも父がいて、すべてのゴールを見てきた。そんな父に感謝を捧げたいと望んだビタリ─に、モルソンは最高にカナダ人らしい方法で手を貸すことにした。「世界一高い場所にあるリンク」で、父子に1対1のプレーをする機会を提供したのだ。その模様を撮影した動画は130万回視聴された
同じテーマを持つストーリーが、異なる代弁者や主役によって語られることもある。金融会社チャールズ・シュワブはこの手法を使い、CNNと共同で12人のキャスターをめぐるストーリー群をつくり上げた。各キャスターが、自分の人生を変えた人物について述懐するという内容だ。この企画の土台には、シュワブが最も重視する顧客対象は、自分の経済的将来を自分でコントロールするオーナーであるという考え方、そしてほとんどのオーナーには影響を受けたメンターがいるという調査結果がある(中略)この動画の存在は、シュワブをメンターシップに関するメッセージに関連づけ、同時に人生のオーナーたる投資家になろうという同社のメッセージも反映している(中略)シュワブに対するブランド評価は26%上昇した(中略)同社のオンライン口座の開設は通常の倍に伸びたという
1894年に英国のユニリーバが発売した殺菌石鹸のライフブイ(救命浮輪の意)は、いまではグローバルなブランドになっている。そして今日、インドやインドネシアを含む一部の国々で、子どもたちの命を救うという高次の目標を掲げて活動している。正しい手洗い習慣を普及させるための、「子どもに5歳を迎えさせよう」キャンペーンだ
高次の目標から強いストーリーが生まれる
◆高次の目標を見つけるためのプロセス
・従業員の関心事項に目を向ける
・自社の資産、能力、伝統に目を向け、そこから効果的なプログラムをどう生み出せるか自問する
・製品・サービスの機能的便益を超えた部分に目を向ける
・顧客に目を向ける
・長期的なプログラムを意識する
◆何をストーリーの主役にするか
顧客 製品・サービス ブランド ブランドのエンドーサー 供給業者
従業員 組織のプログラム 創業者 再活性化戦略 成長戦略
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どうすれば企業内でシグネチャーストーリーの種を見つけ出せるのか、どうすればクチコミを生むシグネチャーストーリーが作り出せるのか、体系的にまとめられているので、経営コンサルタントにとっては、良い商売のネタになるでしょう。
SNSの時代、支持されるブランドになるためには、ストーリーの力が必須。
マーケティングに携わる方は、ぜひ読んでみてください。
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『ストーリーで伝えるブランド』デービッド・アーカー・著
阿久津聡・訳 ダイヤモンド社
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◆目次◆
日本版へのまえがき
第1章 シグネチャーストーリーとは何か
第2章 複数のストーリーを組み合わせる
第3章 シグネチャーストーリーはブランドを強化する
第4章 シグネチャーストーリーは説得する
第5章 シグネチャーストーリーは価値観を伝える
第6章 シグネチャーストーリーを伝える相手
第7章 シグネチャーストーリーのつくり方
第8章 シグネチャーストーリーを強化する方法
第9章 自分を知るためのシグネチャーストーリー
エピローグ 12の教訓
謝辞
訳者あとがき
原注
索引
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