【夭逝した天才作家が若者に遺したメッセージ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4803803536
賢いはずの人が、なぜか人生を豊かに生きられない。お金があるはずの人が、なぜか欲しいものを手に入れられない。美しいはずの人が、なぜか幸せになれない…。
一方で、さほど恵まれた資質・環境もないのに、あっさり成功して幸せになる人もいます。
一体、この違いは何なのでしょうか?
本日ご紹介する一冊は、夭逝した天才ポストモダン作家、デヴィッド・フォスター・ウォレスが、人生で唯一引き受けたという伝説のスピーチを、書籍化した一冊。
ちなににウォレスはこのスピーチの後、自死をしています。
ヒラリー・クリントンや元宇宙飛行士のジョン・グレンを押しのけ、なぜ彼がスピーカーに選ばれたのか、彼はそこで何を語ったのか。
ケニオン・カレッジの2005年度の卒業式でウォレスが語り、YouTubeで1週間に500万アクセスという伝説のスピーチが、コンパクトな本にまとめられています。
小さな本で、わずか150ページ。
最初は紹介することをためらいましたが、読んでいるうちに、知的な人間、経済的に成功しそうな人間ほど、読むべきだと思いました。(つまり、BBM読者のみなさんのことです)
われわれが間違うのは、われわれの初期設定のせいである。つまり、エゴに根ざしたものの見方によってである。
ウォレスのメッセージを、さっそく見て行きましょう。
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ごくありきたりの いちばんたいせつな現実というものは えてして 目で見ることも 口で語ることも 至難のわざである
リベラル・アーツというものは 学生に知識を詰め込むことに 重きを置いておらず、カッコつきで引用すれば 大事なのは「ものの考えかたを教えること」なのだ
僕らがこうした場所で学ぶべき思考法のなかで ほんとうに大事なことは 考える容量をただ増やすことではなく むしろなにを考えるべきかを 選ぶことにある
「ものの考えかたを教える」というリベラル・アーツのお題目が真に意味していることは、ほんのすこしばかり謙虚になり じぶん自身とじぶんの確信に すこし「批判的な自意識」を持つこと
この設定は文字どおり 徹底して自分中心になっています。なんでもこの自我のレンズを通して ものを見たり、解釈していますから
あなたがたの受けたリベラル・アーツの教育に リアルで、のっぴきならぬ価値が あるはずだとすれば、ここだと思います。あなたがたのこれからの 快適で豊かで ちゃんとしたものであるはずの社会人生活が 知らぬまに、死人も同然の 頭の奴隷に変じて 尊大にも唯一無二の存在として孤立し 生来の初期設定のまま 来る日も来る日も過ごすということを いかに避けるかにあるのです
でも、あなたがほんとうに ものごとの考えかたや どこにどう目を向けるべきかを 学んできたのなら ほかに選択肢があることくらい 見抜けるでしょう
何を崇拝すべきかは あなたが決めなければならない……
あなたがたがカネとかモノとかを崇拝すると──それらが人生において 本当に意味があると思うのであれば──決して満ち足りる日は来ません。一向に充実感がなく、底なしになります
じぶんのからだや美貌や性的な魅力にうぬ惚れてみなさい。すると、つねにじぶんの醜さが気になってきます。時が経ち、齢を重ね、老いが忍びよるにつれ 最後に息をひきとるまえに、あなたは百万遍も死を迎えます
権力を崇拝してみなさい。──あなたは弱く怯えきった自分を感じるでしょう。その恐怖を寄せつけまいとして 他人を支配するちからが もっともっと必要になってきます
知性を崇拝してみなさい。抜け目のないやつとみられながら つねにびくびく怯える日々を過ごして──やがてじぶんの愚かさを感じお終いになるでしょう
本当に大切な自由というものは よく目を光らせ、しっかり自意識を保ち 規律をまもり、努力を怠らず 真に他人を思いやることができて そのために一身を投げうち 飽かず積み重ね 無数のとるにたりない、ささやかな行いを 色気とはほど遠いところで、毎日つづけることです
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不覚ながら、本当に感動しました。
著者は「初期設定」という言葉を使ってわれわれがやってしまいがちな誤りをいろいろと指摘していましたが、この「初期設定」による間違いは、他にもいろいろありそうな気がしました。
豊かな人生を送るために、著者が死ぬ前に遺したメッセージです。
ぜひ読んでみてください。
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『これは水です』デヴィッド・フォスター・ウォレス・著
阿部重夫・訳 田畑書店
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4803803536/
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◆目次◆
これは水です
<訳者解説>「蒼白の王」のグッドバイ
訳注
校訂
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