2019年9月27日

『未来の大国──2030年、世界地図が塗り替わる』浜田和幸・著 vol.5365

【2030年の大国とは?】
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未来が不透明な時、決まって売れるのは歴史本と未来予測本。

土井も例外なく、迷った時はこの両方を読むことにしています。

歴史本は過去に起こったことを学ぶために、またこれから起こり得ることの道筋を捉えるために。そして未来予測本は、起こり得るシナリオをすべてシミュレーションするためです。

本日ご紹介する一冊は、米ジョージ・ワシントン大学で政治学博士を取得し、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、国際政治経済学者として活躍する浜田和幸さんによる予測本。

『未来の大国』というタイトルに加え、オビには「米中を退場させる新興勢力はこの7カ国+αだ」とあり、読者の心を煽っています。

著者によると、現在しのぎを削っているアメリカと中国の二極体制の世界は、もうじき終わりを迎える。なぜなら、アメリカも中国も、大国であり続けるには、弱点を抱えすぎているから。

その代わり、この二大超大国を追い落とすようなニューパワーが目覚めており、本書ではその注目の国を紹介しています。

資源大国であり、低賃金の良質な労働力を抱える北朝鮮、高度成長が続くベトナム、2050年に世界第四位の経済大国を目指すインドネシア、頭脳による超技術立国イスラエル、そしてイラン、オマー
ン、アフリカ連合…。

これらに加え、「+α」として、バハマ、ツバル、サウジアラビアなどにも言及されています。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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二〇一五年、インターネットを通じて市民権を得られる「リベルランド自由共和国」という直接民主制国家が登場した。「超国家」の時代が到来するのである

◆「未来の大国」であるための五本柱
・暮らしている人たちの満足度が高い
・多様性に寛容で、新しい発想や技術が生まれやすい
・新しい技術を受け入れて、安全に運用、柔軟に使いこなすことができる
・世界の人々が「あんな国になりたい」と思えるような普遍的な価値観を提示している
・「豊かさ」を実現するための資源(地下資源に限らず人的資源・観光資源なども)がある

北朝鮮は未開発の膨大な地下資源と、ブロックチェーンと呼ばれる分散型ネットワーク技術を持っている

北朝鮮がレアメタルの宝庫であること、とくに中国との国境地帯にこうした地下資源が大量に眠っていることを詳細に把握しているのは、実は日本なのである

当時、注目されたのはタングステンである。これは鋼材に添加すると硬度の高い高速度鋼となって切削工具に使われるほか、砲弾など軍需産業にも欠かせない素材であり、世界の埋蔵量のほぼ半分が北朝鮮にあるとされる。このほかニッケル、モリブデン、マンガン、コバルトなど、現代では家庭用の電子機器から海洋や航空宇宙用途まで使われるレアメタルがあり、さらにウランや金の埋蔵量も膨大だ。総額では七兆ドル(約七五〇兆円)を超える資源が眠っているという試算がある

北朝鮮の日本海側、元山(ウオンサン)という都市にトランプ氏のホテルを建設する話が進んでいるという。元山は観光による外貨獲得を目ざして金正恩委員長が進めている海岸リゾートで、投資を呼びかけたのである。トランプ大統領が自分でもっとも得意と考えているカジノリゾートをつくる話を持ちかけるあたり、金委員長もなかなかの手練れである

ベトナムの成長を支えているのが、先に紹介したビングループである。病院、不動産、ショッピングモールなど、大規模に事業を展開するベトナム最大のコングロマリットで、冒頭でも触れたとおり、初の国産自動車会社「ビンファスト」も立ち上げ、北部のハイフォンに工場を建設。二〇二〇年には一二のモデルを販売する予定である

ベトナム独自のSNSを広めようと「ザロ」が登場したのだ。ベトナム政府は二〇二二年を目標に、この「ザロ」を中心として国産のアプリで国内ソーシャルメディア市場の七〇%以上を押さえる方針

オマーンをアフリカ市場開拓の前線基地、輸出拠点にすべく、中国の企業を奨励した結果、自動車、家電製品から日用品などの巨大物流基地が誕生しつつある

バハマ政府の調査に限っても、バハマ近海には金銀財宝を積んでいたと思われる沈没船が五〇〇隻以上も眠っている。これを回収することによって、バハマには莫大な財宝が手に入る。(中略)バハマ近海に沈む財宝は、すべて回収できれば一〇〇〇億ドル(一〇兆円)は下らないと言われている

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二大超大国の限界、リベルランドやフェイスブックの仮想通貨の話など、まだまだ過渡期の話が多く、眉唾な部分はありますが、著者の予測が当たるかどうかはさておき、あり得る選択肢はほぼ網羅された本だと思っています。

北朝鮮のところだけでも、読んでおくと参考になるでしょう。

冒頭にも書きましたが、予想外のシナリオにも備えられるのが未来予測本の良いところ。

少なくとも、明日から新聞の読み方が変わること、請け合いです。

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『未来の大国──2030年、世界地図が塗り替わる』浜田和幸・著 祥伝社

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◆目次◆

序章 「未来の大国」とは何か
1章 これが「未来の大国」だ
2章 世界覇権と「現在の大国」
3章 日本の潜在力
終章 超国家の時代

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