2019年5月16日

『ソロエコノミーの襲来』荒川和久・著 vol.5273

【人口の5割。独身マーケットを学ぶ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847066227

本日ご紹介する一冊は、独身生活研究の第一人者として、数多くの企業のマーケティングも手掛ける著者が、やがて到来する「ソロエコノミー」の時代と、そこでの消費を論じた一冊。

マクロ統計から見る今後のソロエコノミーと、ソロたちの価値観、消費行動について論じており、今後ビジネスをどう変容させればいいか、はっきりとわかる内容です。

これまでの著者の作品にも目を通していますが、本書が一番まとまっていて新しい視点もあり、読み応えがありました。

なかでも興味深かったのは、江戸時代のソロ消費と今のソロ消費が似通っていて、江戸のビジネスを現在に転用できそうな点。

引用に向かないので、ここは本文を読んで内容をご確認ください。

さらに、最近流行りのエモ消費やコミュニティビジネスなどの本質が述べられており、こちらも勉強になりました。

<「お客様」ではなく「パートナー」へ>
<所属するコミュニティから接続するコミュニティへ>
<自分の中の多様性を育てる「一人十色」>

明確なキーワードで、要点がまとめられており、じつにわかりやすい内容です。

さっそく、ポイントをピックアップしてみましょう。

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2015年の国勢調査において、65歳以上の高齢者人口約3280万人に対して、15歳以上独身者人口(離別死別含む)は約4440万人

2019年現在でも、65歳以上の高齢独身女性は約1000万人存在する

日本のソロ社会は、大きく言えば15~50代までの未婚男性と60歳以上の離別死別女性が大きな割合を占める社会

日本は時間差一夫多妻の国

男性は年収が低いほど生涯未婚率が高くなるのに対し、女性は、年収が高くなるほど生涯未婚率があがる

東京は女性が結婚できない魔のエリア

男性の生涯未婚率が急上昇し始めたのは1990年以降だが、それはコンビニ売上高が急上昇し始める時期と見事に一致する

スーパー同様、1998年以降はマイナス基調に入った「食堂・レストラン」に対して「料理品小売」はその時期に大きく伸長し、今に至るまで上昇基調を続けている

アイドルオタクと呼ばれるソロ男の消費実態追跡調査をしたことがあるが、彼らがもっとも使っている費用はCD代やライブ代など直接的なアイドル消費ではなく、全国各地のライブについてまわるための交通費と宿泊費だった

ソロ男は値上がりしている肉類や野菜ですら、大きく消費額が伸びているし、なぜか、逆におにぎりや弁当などの調理食品はそれほど伸びていない。これは、ソロ男たちの内食化や健康志向などと関連している

健康志向と言いながら、それとは逆行する菓子類もソロ男だけが大きく伸びている

彼らの望むコミュニティとは、彼らが行動している瞬間だけ発生する刹那のコミュニティである。そこで生まれる刹那の感情を共有して、その瞬間だけ通じ合えればいいという感覚だ

男性の場合、恋愛が充実していればいるほど自己肯定感が高く、女性は仕事の充実度が大きく影響している。ソロ男とソロ女はその傾向がさらに強いのだ

たとえば、賃貸住居業者と組んで、料金の中に予め掃除用品代と家事代行サービスが組み込まれているサービスを打ち出す

「こだわりのない」商品を自らの意志で選択させようとするから無理がある。選択すら面倒くさいのだ。であれば、そうしたお膳立ての仕組みを用意して、なんでもやってくれるオカン理論を試してはどうだろうか

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今起こっている変化は、決して世代間の価値観の衝突などではなく、ソロ社会になって、価値観や消費が変わったことによるものだということが、じつによくわかりました。

読んでいて感動したのは、第6章の終わりに書いてあるこの部分。「ああ、ビジネスってそういうことだよな」と妙に腑に落ちました。

<売り手は売ることが目的なのではない。買い手も買うことが目的ではない。売る人と買う人とは、感じ方は違うにしろ、共に自分の社会的役割を共有するためにつながるのだ。売り手も買い手も共に「楽しむ」「幸せになる」という目的のために、ネットワークで接続されるコミュニティが求められてくる。「売る」ことも「買う」ことも「働く」ことも「遊ぶ」ことも、目的ではなく手段なのだ>

マーケティングのヒント満載。ぜひ、読んでおきたい一冊です。

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『ソロエコノミーの襲来』荒川和久・著 ワニブックス

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847066227/

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◆目次◆

はじめに
第1章 知っているようで知らない日本のソロ社会化
第2章 ソロエコノミーがやってくる
第3章 幸福格差時代に生まれた消費
第4章 江戸時代にもあったソロエコノミー
第5章 ソロたちのプロファイリング
第6章 ソロの動かし方
第7章 コミュニティが変わる
あとがきにかえて

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