2019年2月28日

『奇跡の会社』クリステン・ハディード・著 本荘修二・監訳 矢羽野薫・訳 vol.5225

【アメリカの成績優秀な学生が、清掃会社で一生懸命働く理由】
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本日ご紹介する一冊は、「清掃業界のザッポス」と呼ばれる、アメリカのユニークな清掃会社のマネジメントノウハウ&エピソード集。

離職率75%、低賃金の仕事なのに、才能ある若者が殺到する話題の清掃会社、スチューデント・メイドの創業者兼CEO、クリステン・ハディードによる、注目の一冊です。

「成績優秀な大学生が自宅やオフィスをお掃除します」

確かに魅力的なキャッチコピーですが、果たして本当に実現するのか?
なぜそんなことが可能なのか?

本書には、この『奇跡の会社』が成し遂げたマネジメントの秘密が、創業期からのエピソードを交えながら書かれています。

本書のまえがきを担当するのは、日本のベンチャーにアドバイスをする多摩大学(MBA)客員教授の本荘修二氏。序文を担当するのは、『WHYから始めよ!』の著者、サイモン・シネック氏です。

序文には、こんなことが書かれています。

<完璧さを強く要求するリーダーは、部下を燃え尽きさせる。チームのメンバーは支え合うのではなく競い合い、自分で責任を取ろうとせずに非難しあう。アイデアは共有されることなく、各自がため込む。成功事例はチーム内に広めるものではなく、自分だけのものだ。完璧さが要求される環境では、メンバーは競争相手なのだ>

<間違いを犯しても、弱さや不完全さをさらしても、安心できるカルチャーを築くことは簡単ではないが、それがリーダーシップというものだ。リーダーシップとは、人々を監督することではない。自分が率いる人々を労わり、彼らを安心させることだ>

多くの経営者は前者の完璧主義により、組織を疲弊させますが、優れた経営者は後者を行う。しかしそれは言うほど簡単なことではありません。

本書には、著者が創業期からいかにしてマネジメントの困難や失敗に直面し、それを乗り越えてきたか、具体的プロセスとエピソードが書かれています。

45人が同時に「辞める」と言った話から始まり、読み応えあるエピソードが満載です。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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45人が辞めた。同時に。私のチームの75%だ。あの瞬間から、私はより良いリーダーになることにこだわり続けている

当時は理解していなかったが、給料支払いの混乱の収拾をリジーに任せたことは、リーダーシップに関する私の信条の要となった。人を信じて大きな責任を託し、失敗する余地を残しておき、自分のミスは自分で取り戻す機会を与えれば、彼らはそこから学ぶ

私は彼女に言った。会社の資金が貯まるまで、時給9ドルとたくさんのハグで働いてくれないだろうか。彼女の返事に私は驚いた──「私も仲間に入れて」。こうして管理部門は3人になった

必ずワンコールで電話に出て、自分がどこで何をしていようと現場に駆け付けるという、それまでのやり方を大きく変えた

みんな仕事が大好きになって、気がついたらトイレブラシを手にバスルームで踊りだす。それが私の新しい目標になった

頻繁なフィードバックがミレニアル世代の若者に自信を与える

組織マネジメントに詳しいパトリック・レンシオーニの『なぜCEOの転職先が小さなレストランだったのか』(NTT出版)だ。レンシオーニはこの本で、働く人がみじめになる仕事のリスクを指摘し、仕事をみじめなものにする三つの要因を挙げている。すなわち、無評価(自分のパフォーマンスを具体的な形で直接評価する方法がない)、匿名性(自分の貢献がリーダーに認められている、自分がリーダーに理解されている、と感じる機会がない)、無関係(自分の仕事がどのような違いをもたらしているのか、なぜ重要なのかがわからない)

クライアントが「完璧」と評価したケースをオフィスの壁に掲示して、誰でも見られるようにした。たしかエリンかアビーが提案したのだと思う

私はオフィスの玄関前に駐車するのをやめた

本当に効果的なフィードバックには、次の3点を意識したコミュニケーションが必要だ。すなわち、自分(フィードバックを与える側)はどんな気持ちなのか。そのような気持ちにした相手(フィードバックを受け取る側)の具体的な振る舞いとは何か。その振る舞いが会社や人間関係などにどんな影響を与えているか。この3点をわかりやすく伝える。気持ち(Feeling)、振る舞い(Behavior)、影響(Inpact)のFBIだ

この人に自宅の鍵を預けられるか

利益や顧客を増やすために雇用のプロセスで妥協すれば、手に入れた以上のものを失うだけだ

私は、リーダーとしての自分の仕事は、周囲を支えることだけではないと理解した。弱さを恐れないことも、リーダーの役割なのだ

メンバーの将来の夢を共有することで、良い別れができるようになった

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本書には、著者が組織の問題とどう向き合い、それに対処しながらどんなルールを構築してきたか、その詳細が書かれています。

感動しながら読み進めるうちに、マネジメントの要諦がわかる、そんな実践者のための教科書となっています。

マネジメントに関わる人が押さえておきたい理論やポイントが随所にまとめられているので、再現性もバッチリです。

これはぜひ、読んでみてください。

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『奇跡の会社』クリステン・ハディード・著 本荘修二・監訳 矢羽野薫・訳 ダイヤモンド社

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◆目次◆

はじめに 日本人が知らない「奇跡の会社」を紹介します 本荘修二
序文 私たちが、スチューデント・メイドの物語を読むべき理由 サイモン・シネック
第1章 ザ・45の惨事 まだ、何もわかっていなかった私の原点
第2章 シェパーズパイは緊急事態を知らせる秘密の暗号
第3章 パソコンの向こうからの冷たい声よ、さようなら
第4章 破ってもいいルール、破ってはいけないルール
第5章 支え合う人間関係がつくるもの
第6章 私たちが立っている1本のライン
終章 最後の失敗の告白
謝辞
金曜日の夜に書店で出会った本たち
解説 本荘修二

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