【本書に出会えて幸せです】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152096039
本日ご紹介する一冊は、「パイロットを目指す子どもの参考になる本を」というリクエストで見つけ出し、あまりの感動に、みなさんにオススメしたくなった本。
大学院でアフリカ史を専攻した後、経営コンサルタントになり、その後パイロットになる夢を実現した著者が、天職に就くことの素晴らしさと、空の世界の偉大さを紹介した、感動の一冊です。
優れたビジネスは、人間の知覚(パーセプション)を変えるものですが、そのために起業家は、常日頃から人とは違った知覚を得るよう、努力していなければなりません。(スタートトゥデイの前澤友作さんが月旅行に挑んだり、バスキアを買ったりするのも、おそらくそういう意識からでしょう)
空の王国は、地上とはまったく異なる秩序で構成されており、パイロットは世界を独特の見地から捉えている。
その空の視点に、著者の豊かな教養と描写力が加わり、素晴らしい作品に仕上がっているのが本書『グッド・フライト、グッド・ナイト』です。
本のソデに「雲の向こうは、信じられないほど感動に満ちている」というコピーが書かれていますが、まさに、本書は読者を空の世界にいざない、天職に生きることの素晴らしさを教えてくれます。
雑誌「ニューヨーカー」は、本書を「科学者の脳と詩人の心で書かれた本」と評しましたが、まさにその通り。
さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。
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私にとって飛ぶことは、あらゆる拘束からの解放であり、自分の原点を見いだすことでもある
母に薦められて読んだ『スチュアート・リトル』や『ホビットの冒険』は、幼い私の冒険心をくすぐり、この世には、高いところや遠いところへ行かないと見えないものがあることを教えてくれた。人は飛ぶことで故郷を離れるが、最終的には故郷こそが人生の宝であり、目的地だと悟るのである
ときおり、そんなに長い時間、コックピットにいて飽きませんか、と質問されることもある。飽きたことは一度もない。もちろん、疲れることはあるし、高速で家から遠ざかっている最中に、これが家に向かっているならどんなにいいかと思うこともある。それでも、私にとってパイロットに勝る職業などない。地上に、空の時間と交換してもいいような時間があるとは思えない
空には空の領域があり、ひとつひとつの領域が歴史を持った空の国だ。たとえば日本はすべてひとつの領域に含まれるが、その名は日本ではなく福岡だ。航空図の上の福岡空港で、私たちは札幌コントロールから東京コントロールまで、さまざまな管制官と交信する
空を飛ぶときは地上の常識を捨てなければならない
着陸後にビーチへ行くと、自分も、旅客機も、ロサンゼルスという町も、アメリカという国の歴史も、すべてが西を向いていることがわかる。そこは終着点であると同時に、新たな冒険の始発点でもあるのだ
ほかにもこの仕事ならではのやりがいがあって、それは新聞配達をしていた十代の頃に感じたやりがいと似ているように思う。たとえば氷点下で雪がちらつく朝など、仕事に行くのがいやだったけれど、つらいからこそ世界がまだ眠っている時間帯に、誰に褒められるわけでもなく新聞を配っている自分にささやかな誇りを持てた
ブダペストへ一緒に飛んでから一年半後、父が亡くなった。それから数カ月というもの、乗客のなかに誰かの死や重い病が原因で旅をしている人が何人いるだろうと、そんなことばかり考えていた
自分がどこにいるのか混乱したとき、数日前はどの大陸にいたかがぱっと思い出せないとき、私はあえて、飛ぶことによってどれほど帰るべき場所への愛が深まったかを考える
すべての着陸は、あらゆる可能性から、けっして揺らがない場所へ、愛情の源へと帰ることだ
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昨日から今日にかけてじっくり読んでいて、読書本来の幸せを思い出しました。
素晴らしい文章を書いてくれた著者のマーク・ヴァンホーナッカーさんと、彼の教養を養ってくれたご両親に、感謝を申し上げたい。
そして、この専門的な内容を訳し切った訳者の岡本由香子さんにも拍手を送りたい。
彼女が、防衛大学校卒業、元航空自衛隊勤務という経歴で、かつ児童書を手掛ける人でなかったら、ここまでスムーズで情緒ある文章には仕上がらなかったのではないか、と本気で思っています。
読んでいて、また持っていて、幸せになれる本です。
天職を見つけるきっかけに、また天職と出会った著者と喜びを分かち合うために、ぜひ読んでみてください。
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『グッド・フライト、グッド・ナイト』マーク・ヴァンホーナッカー・著
岡本由香子・訳 早川書房
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◆目次◆
Lift:持ちあげる、あがる、高まる
Place:場所、空間、住所
Wayfinding:進む方向を決めること
Machine:機械、装置、仕組み
Air:空気、大気、無
Water:水、海、川
Encounters:出会い、遭遇
Night:夜、闇
Return:帰る、戻る、復帰する
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