【注目です。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478103941
最近は、語彙力本と教養本が売れていますが、まさに欧米エリートと渡り合うためにも、語彙と教養は必須。
なかでも、美術に関する教養は、知らないと思わぬ恥をかくことがあります。
本日ご紹介する一冊は、ちょっと美術にうといビジネスパーソンのための、西洋美術史。
著者の木村泰司(きむら・たいじ)さんは、西洋美術史家で、米国カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を修めた後、ロンドンサザビーズの美術教養講座にてWORKS OF ARTを修了した人物です。
本書では、ギリシャ美術から現代アートまで、西洋美術の歴史を概観しながら、ビジネスパーソンが芸術鑑賞する際、またはうんちくを語る際、押さえておくべきポイントをコンパクトに解説しています。
文明が融合する時、何が起こるのか、社会に不安が広がった時、どんなものが流行するのかなど、これからの「表現」や「トレンド」を考える際にも役立つ内容です。
さっそく、いくつかポイントをチェックして行きましょう。
———————————————–
紀元前6世紀末以降、アテネでは守護神アテナに捧げられたパンアテナイア祭の際に、定期的に美男コンテストが開催されていました。美しいということは神に近づくことであり、また神もそれを喜ぶという考え方が浸透していたことがわかります。「美男=神への捧げもの」という考え方です。「男は顔じゃない」ではなく、美しいか否かが人格までを決めるほど、美しさが重要だったのです
「ペロポネソス戦争(前431~前404年)」以降、社会と美術の雰囲気が一変していきます。粛清が行われるなど恐怖政治がアテネを支配する中で、美術における嗜好はその反動から享楽的なものを求めるようになります(中略)その結果、紀元前5世紀の崇高で荘重な様式ではなく、紀元前4世紀のものは優美さを漂わせたものが多くなりました。たとえば、古代ギリシャの彫刻家プラクシテレスによる「ヘルメス」は、オリンピックの勝者の体をモデルに制作されてはいますが叙情性が漂う優美な彫像になっています
ヘレニズム時代にギリシャ文化圏が一気に広がったことで、それまで通用していたギリシャ人特有の価値観以外の表現が見られるようになります。大王の後継者たちによって支配された地域とギリシャの文化が融合された「ヘレニズム文化」が生まれ、美術の様式も変化していったのです。具体的には、ギリシャ的な思想ではなく、より個人的な感覚や、理想主義ではなく個性を重視した写実主義へと変化しました。神ではなく君主や特定の人物を表すようになった結果、写実性の強い描写が発展したのです
ゴシック様式の大聖堂は、民衆の意識を地上から天井へと促し、宗教的高揚感を高める効果がありました
ステンドグラスは文字が読めない人々にキリスト教の教えを伝えると同時に、窓から取り入れられる光をより美しく効果的に演出しました。「光」はキリスト教徒にとって「神」であり、ゴシック建築では視覚的に神の存在を意識することができたのです
マニエリスム特有の混沌とした、当時の社会情勢から来る不安感を表す、見るものに不安気な印象を与える作風へと変貌しています。マニエリスムの特徴として、とくに絵画においては画家の個性や特有の技法が強調されている点があります
レンブラントに限らず、17世紀のオランダの画家たちは、市民社会になったがゆえに、同時代の他国と違う、現代的な経済的苦労を抱えることになります。つまり、王侯貴族や教会といった圧倒的な富を誇る大パトロンではなく、市場を対象にする不安定さです。そのため、多くのオランダ人画家は副業を持っていました
17世紀のフランス文化が「王の時代」で男性的なものだとするならば、18世紀のロココ文化は「貴族の時代」であり、女性的な文化と言っても過言ではないでしょう
———————————————–
ここでは、絵画やアーティストではなく、時代性をとらえた記述を中心に抜き出してみました。
既にアマゾンのカスタマーレビューでもあるように、近現代の記述が薄いのが、本書の弱点だと思います。(画家の固有名詞が少ないとの指摘もありましたが、全部出したら何ページあっても足りないので…)
ただ、個人的にはあまり詳しくなかった中世の芸術の話がスッキリわかったので、役に立つ本でした。
西洋美術の知識が虫食いになってしまっている人、改めて学び直したい人は、入門書として読むといいと思います。
ぜひチェックしてみてください。
———————————————–
『西洋美術史 世界のビジネスエリートが身につける教養』
木村泰司・著 ダイヤモンド社
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478103941/
<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B075K2CN69/
———————————————–
◆目次◆
はじめに 「美術史とは、世界のエリートの“共通言語”である」
第1部 「神」中心の価値観はどのように生まれたのか?
第2部 絵画に表れるヨーロッパ都市経済の発展
第3部 フランスが美術大国になれた理由
第4部 近代社会は、どう文化を変えたのか?
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
お知らせはまだありません。