【人工知能に人間が勝つ具体的ポイント】
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本日ご紹介する一冊は、2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める新井紀子さんによる話題の書。
本書では、今話題のAIがどこまで何ができるのかの詳細、そしてよく言われる「AIにできないこと」を人間が本当にできるのか、の議論がなされています。
衝撃的なのは、人工知能が既に「MARCH」合格レベルに達していること、さらに対する日本の中学生の読解力レベルが著しく低く、正答率で見るとコイン投げ並み(正答率57%)だということ。
「AIがすべての仕事を代替する」や「シンギュラリティ」もウソですが、「AIにできないことを人間はできる」もウソかもしれないのです。
本書では、実際に「東ロボくん」にやらせてみた問題や、どんな処理をしたか、そこでどのような問題が発生したかがつぶさに書かれており、具体的にAIの限界を理解できます。
どこから読んでも面白いですが、AIが意味を理解できない、ということがわかるだけでも、本書を読むことの価値があると思います。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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今の数学にはその能力はないのです。コンピューターの速さや、アルゴリズムの改善の問題ではなく、大本の数学の限界なのです。だからAIは神にも征服者にもなりません。シンギュラリティも来ません
日本の中高校生の多くは、詰め込み教育の成果で英語の単語や世界史の年表、数学の計算などの表層的な知識は豊富かもしれませんが、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正確に理解できないということがわかった
AIでは対処できない新しい仕事は、多くの人間にとっても苦手な仕事である可能性が非常に高い
実は「AIはまだどこにも存在していない」
「いい感じの政治」を数値化することには無理があります。人の幸福は数値化できないからです
威力を発揮したのが、「マジャール人は民族である」とか、「ピピンは人物である」「死んだ人はそれ以降の事柄を起こせない」というような、あまりに人間には当たり前すぎることをリストアップして整備した「オントロジー」です。オントロジーはモノゴトをコンピューターに理解させるためにつける名前や分類のことです
東ロボくんの世界史の解き方はワトソン同様、基本的に情報検索だとお話ししました。また、数学の問題文に特有の、正確で限定的な語彙から成る文章であれば、論理的な自然言語処理と数式処理の組み合わせでかなりの点数が取れることもお伝えしました。けれども、そのふたつの方法では克服できない科目があります。国語と英語です
行く手を阻んだのは「常識」の壁でした
特に、論理と確率で扱うことが難しいのが、人間の意志です
数学が発見した、論理、確率、統計にはもう一つ決定的に欠けていることがあります。それは「意味」を記述する方法がないということです
就学補助率が高い学校ほど読解能力値の平均が低いことがわかったのです。つまり、貧困は読解能力値にマイナスの影響を与えています
AIでは絶対にできない仕事の多くは、女性が担っている仕事
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現在、ビジネス書の世界では語彙力本がものすごい勢いで売れていますが、ここまで語彙力が落ちているということなのですね。驚きました。
読解力の低下といい、教育ビジネスの問題、貧困の問題はいよいよここまで来たか、という感じです。
未来を創る子どもたちをきちんと育てるために、われわれは捨てるべきを捨て、正しい教育のあり方を選ぶ時期に来ているのかもしれません。
すべての国民に読んでいただきたい一冊です。
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『AI vs.教科書が読めない子どもたち』新井紀子・著 東洋経済新報社
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◆目次◆
第1章 MARCHに合格──AIはライバル
第2章 桜散る──シンギュラリティはSF
第3章 教科書が読めない──全国読解力調査
第4章 最悪のシナリオ
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