2018年5月28日

『世界史を動かした脳の病気』小長谷正明・著 vol.5038

【リーダー・側近必読】
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最近、優秀な経営者やコンサルタントと話していて気づいたのは、彼らの多くがリーダーを評価する際、「顔の表情」を見ているということ。

見ているのは、「面構えがいい」とか美形かどうかではありません。「正しい判断を下せる健康状態かどうか」を見ているのです。

残念ながら、優れたリーダーが、いつまでも優れたリーダーであり続けるわけではありません。多くのリーダーがいつか衰え、あるいは病気を患い、判断を間違う。しかしながら、彼らは持ち前のカリスマ性により、実権を握り続けてしまう。そこから悲劇が起こるのです。

本日ご紹介する一冊は、脳神経内科の専門医である著者が、歴史上の偉人たちの「脳の病気」と、彼らが下した歴史的決断について論じた一冊。

認知症により、ヒトラーに政権を奪われたヒンデンブルク、おそらく脳腫瘍の影響で判断を誤ったイギリス海軍トップのダドリー・パウンド、ヤルタ会談でスターリンの言うなりになってしまったフランクリン・ルーズヴェルト大統領の高血圧症…。

なるほど、脳の病気が歴史を変えた、というのはあながち大げさな話ではなさそうです。

リーダーあるいは側近のポジションにある人は、すべからく読み、自分あるいは相手を疑ってかかるべきでしょう。

さっそく、ポイントをチェックしてみます。

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ジャンヌ・ダルクもドストエフスキーも側頭葉てんかんと考えられる。敬虔なキリスト教徒であった少女、ジャンヌ・ダルクは教会の鐘の音で神秘体験をし、フランスへ行けという神の声を聞いた。同じように、いつも神を意識していたドストエフスキーも鐘の音で発作が始まり、ついで宗教的な内容の幻覚と高揚感が発現したのだ

20世紀の世界でも、最高権力者の失語症は歴史の流れに強い影響を与えている。レーニンは念願だったロシア革命後数年で、失語症と右片マヒを伴う一過性脳虚血発作を繰り返した後、本格的に言葉と体の動きを失ってしまった。すると、スターリンがレーニンを追い落とし、反対派を粛清して権力を握った。そして、ソビエト連邦は“労働者の天国”のスローガンとは裏腹の圧政国家になってしまった

チョコレートや、赤ワイン、チーズなどが片頭痛発作をもたらすともいう

すでに、ヒンデンブルクは知的能力の低下が明らかで、義務感も低下しており、国防軍のナチ化やジュネーブの国際連盟からの脱退などの重要なポイントでは、準備された書類に言われるがままに署名していた

ウィンストン・チャーチル首相は夜型で、昼前に起きて深夜の2時か3時まで働いていた。そして、自分の1日の終わり、まさに草木も眠る丑三つ時に、海軍本部に泊まり込んでいるパウンド元帥に電話をかけ、情勢判断や戦略を協議し、指示を出していた。チャーチルは人並み以上のヴァイタリティの持ち主であったし、すぐに熟睡できる特性があった。が、パウンド元帥は慢性的な寝不足となってしまっていた

東西陣営の対立が激しかった冷戦時代には、ヤルタ会談でスターリンの言うなりだったルーズヴェルトは、史上最低のアメリカ大統領だったという声もあった。降圧剤で彼の高血圧が治療できていたなら、第二次世界大戦後の世界秩序を決定づけたヤルタ会談の中身が変わり、東西ヨーロッパを分断した鉄のカーテンや、今なお日露間の懸案となっている北方領土問題も起こらなかったかもしれないのだという

政治家に多いA型性格は脳の血管障害を起こしやすい

ブレジネフは太り気味で糖尿病があり、ヘビー・スモーカー、大酒飲み、それに睡眠薬を常用していた。これらは明らかに健康に良くない。1973年頃から、知的機能の低下が出てきたと言われている。(中略)ブレジネフのふるまいは、彼の地位と場にそぐわないものであり、抑制が外れていて(脱抑制)、多幸症的な傾向があったようだ。おそらく、前頭葉の問題だ

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読んでみて、脳の病気の症状に関する理解が深まりました。
また、脳の病気を防ぐためのアドバイスもあり、参考になりました。

以前、認知症専門医で、『一生使える脳』の著者の長谷川嘉哉さんに、「50歳を過ぎたら自分を信じるな」と教えていただきましたが、土井も歳を取って本書のような症状が出てきたら、速やかに引退しようと思います。笑

※参考:『一生使える脳』
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リーダー、あるいは側近、秘書、部下など、リーダーの周りにいる方には、強くおすすめしたい一冊です。

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『世界史を動かした脳の病気』小長谷正明・著 幻冬舎

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◆目次◆

第I部 英雄を襲った病 古代~近世
第II部 歴史を左右した、指導者の病 近世~現代
第III部 世界的有名人を苦しめた病

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