【金融危機再来?】
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本日ご紹介する一冊は、サブプライム崩壊とその後の株価暴落を予見したと言われる経済アナリスト、中原圭介さんによる一冊。
好調を続ける世界経済の実態を分析し、加熱するマーケットに警鐘を鳴らす内容で、<世界発「借金バブル」>崩壊の危険性を指摘しています。
本書によると、現在の世界経済では、<経済の成長率をはるかに上回るペースでマネーが増殖し、株式や債券、不動産の価格を必要以上に押し上げている>。
そして、その根本に膨張する民間債務の問題があるようです。
<歴史を振り返ってみれば、かつてバブルの崩壊を経験した国々は例外なく、民間債務が尋常ではない水準まで膨らんでいた>そうで、今はどうも中国が危ないようです。
本書によると、中国の民間債務は2017年3月末時点で23.4兆ドル(当時の為替相場で2597兆円)。リーマンショック以降、4倍増となっており、GDP比で211%にまで膨れ上がっているそうです(日本はバブル崩壊後1995年12月末に過去最高の221%を経験)。
投資家目線で今後どうなるのか、も読みどころですが、3章以降に書いている雇用の消失問題、4章に書いている日本企業生き残りのポイント、6章に書いている地方創生の可能性なども興味深く読めました。
さっそく、いくつかポイントをチェックしてみましょう。
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2017年12月時点のNYダウ平均のPER(株価収益率/高ければ高いほど株価は割高とされる)は32倍を超えていて、すでに2007年の住宅バブル時の水準を上回り、2000年のITバブル時の水準にも接近しています
見誤ってはいけないのは、このようなアメリカの物価上昇は国民生活が向上することによって達成されたわけではないということです。本当のところは、中国の急激な経済成長に伴い原油の需要が急拡大し、原油価格が高騰することによって起こったものなのです
経済を見るうえで大事な視点は、生産設備の供給過剰によってもたらされる製品価格の下落と、エネルギーの供給過剰によってもたらされる物価下落を、明確に分けて考えなければならないということです。歴史を振り返ると、設備投資の供給過剰による物価下落については、企業収益の悪化を通じて、それとほぼ同時に労働者の賃金も下がっていきますし、失業者も増えていきます。その挙げ句には、消費も冷え込んでいきます。これに対して、エネルギーの供給過剰による物価下落については、たとえ名目賃金が微増であったとしても、物価の下落が進む分には国民生活に余裕ができ、むしろ消費は拡大することが期待できるという効果があります。2014年10月から原油価格が暴落したアメリカでは、歴史にならってまさに物価低迷に起因する消費拡大が起こっていた
リーマン・ショック後の世界的な金融緩和を通して、先進国・新興国を問わず世界中の人々の借金が増えすぎてしまっている事実を重く見るべき
たとえ金利が今のように低水準にとどまっていたとしても、遅くとも2020年までには借金による景気の好循環は維持できなくなるだろうと予想しています。債務や与信の拡大にも自ずと限界があるからです
本質的に見逃してはいけないのは、工場の完全自動化が生産性を高める最大の要因が、人件費を必要としない点にあるということ
AIやロボットによる効率化は世界的に失業者を増加傾向に転じさせたうえで、格差をいっそう助長する主因になる可能性が高い
電気自動車はガソリン車・ディーゼル車に比べて部品数も少なく生産が簡素化できるため、関連産業も含めると雇用が減少するのは避けられない
コマツの本社機能の地方への分散は、少子化対策としてはっきりとした数字を残しています。同社の30歳以上の女性社員のデータを取ると、東京本社の結婚率が50%であるのに対して石川が80%、結婚した女性社員の子どもの数が東京は0.9人であるのに対して石川は1.9人となり、掛け合わせると子どもの数に3.4倍もの開きが出ている
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読んでいて一番印象的だったのは、「はじめに」で提示されていた、著者のこんな疑問でした。
<経済政策や金融政策はいったい誰のために存在するのか>
これに続き、著者はケインズの師匠でもあった、アルフレッド・マーシャル教授のこんなエピソードを紹介しています。
<アルフレッド・マーシャル教授は学生たちをロンドンの貧民街に連れて行き、そこで暮らす人々の様子を見せながら、「経済学者になるには冷徹な頭脳と温かい心の両方が必要である」と教え諭したといわれています>
みんなが幸せではない社会・経済に、豊かさも成長もない。
『日本の国難』の正体を知り、来るべきショックに備えるために、また本来あるべき日本の姿を考えるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『日本の国難』中原圭介・著 講談社
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◆目次◆
はじめに
第1章 世界金融危機「再来」の可能性
第2章 日本経済を蝕む最大の病
第3章 2020年以後の日本の雇用
第4章 2020年以後の日本の企業
第5章 2020年以後の日本の賃金
第6章 生き残る自治体と転げ落ちる自治体
おわりに
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