【日本組織の「病」】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062884518
BBMで戦争モノを扱うことは滅多にないのですが、本日ご紹介する『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』は、組織マネジメントの話、日本人の価値観が戦略に与える影響を書いた本ということで、特別にご紹介します。
本書は、1944年11月の第一回特攻作戦から計9回出撃し、1回は至近爆発、もうひとつは命中、陸軍参謀に「必ず死んでこい!」と言われながら、命令に背き、何度も奇跡の生還を果たした佐々木友次(ささき・ともじ)さんの物語です。
生前の佐々木さんに直接インタビューしたという作家・演出家の鴻上尚史さんが、自身の日本人論、日本組織論、戦争論を交えながら、この「軍神」のストーリーを綴っています。
佐々木氏に影響を与えた、万朶隊(ばんだたい)の岩本益臣(いわもと・ますみ)隊長の人となり、特攻の真実、その陰にあった人間ドラマが綴られており、ぐいぐい引き寄せられます。
そして後半の佐々木氏インタビュー、著者による戦争再考により、結果を出すとはどういうことか、そのために組織やマネジャーはどうあらねばならないのかが語られています。
さっそく、いくつかポイントを見て行きましょう。
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「私は必中攻撃でも死ななくてもいいと思います。その代わり、死ぬまで何度でも行って、爆弾を命中させます」
「きさま、それほど命が惜しいのか、腰抜けめ!」
佐々木伍長は落ち着いた声で答えた。
「おことばを返すようですが、死ぬばかりが能ではなく、より多く
敵に損害を与えるのが任務と思います」
──急降下は苦しい方が大きいんですか、わくわくするほうが大きいんですか?
「わくわくしますよね。いや、わくわくなんていうもんじゃない。しょっちゅう、見張らないといけない。見張りは自分一人しかいないんですから」
──見張らなきゃいけないのはものすごく気を遣いますよね。楽しんでいるひまもないんじゃないですか?
「いやあ、楽しむぐらいの技量を持つことが大事なんです」
──空にいるのは好きだったんですよね。また飛びたいっていう思いも、自分を支えたっていうことですかね?
「そうですね、戦場に行くのが恐ろしいとかあんまり思ったことないですよ。飛んでいればいいんです」
そもそも、僕は「命令した側」が、「命中率」で特攻を語ることが理解できません。佐々木友次さんは9回出撃して、2回爆弾を落としました。1回は至近爆発、もうひとつは命中でした。何回も出撃するから、この結果を得られたのです
僕が「命令した側」に対して理解できないのは、フィリピン戦から沖縄戦にかけて、「特攻の効果」が著しく逓減したことを知りながら、特攻を続けさせたことです
「精神」を語るのは、リーダーとして一番安易な道です。(中略)本当に優れたリーダーは、リアリズムを語ります。現状分析、今必要な技術、敵の状態、対応策など、です
「集団我」が効果的に発動すると、例えば「駅伝」で、自分一人のマラソンでは想像もつかない頑張りができて、自分で自分の結果に驚く、なんてことが起こります。「集団我」が悪く働くと、大勢だと威勢がいいが、一人になると何もできない人間になります
ずっと続いていることを、無理に止めることはない。自分はそれを止める立場にはない。そもそも、続いていることは、止めることより、続けることの方が価値があるのだ、という思いこみが「所与性」の現れです
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佐々木氏の生き方・考え方には、成果を出す人間の共通点を感じます。
(向いていること、好きなこと、他人とは違う感じ方を持つこと)
インタビューから、やはり人には「天職」というものが存在するのだということがよくわかりました。
そして、敗戦の原因は、リーダーがリアリズムを失ってしまったことであり、当時の日本にはリーダーたちの目を曇らせるさまざまな環境要因があったことが、うかがい知れました。
「本当に優れたリーダーは、リアリズムを語ります」
人の上に立つ人は、心しておくべき言葉だと思います。
発売と同時に話題となっている一冊ですが、これはぜひ読むことをおすすめします。
それではみなさま、良いクリスマスを。
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『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』
鴻上尚史・著 講談社
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◆目次◆
第1章 帰ってきた特攻兵
第2章 戦争のリアル
第3章 2015年のインタビュー
第4章 特攻の実像
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