2017年10月2日

『ジョブ理論』クレイトン・M・クリステンセン他・著 vol.4821

【クリステンセン教授の画期的新理論】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4596551227

本日ご紹介する一冊は、名著『イノベーションのジレンマ』の著者、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・M・クリステンセン教授による、注目のマーケティング理論。

※参考:『イノベーションのジレンマ』
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顧客が商品を採用した理由を、「ジョブ」の概念を使って見事に説明しており、企業がイノベーションを起こす際、またマーケティング戦略を練る際の新たなフレームワークとして、活用されそうです。

コンセプトを理解するために、著者の言葉を引用してみましょう。

<私たちが商品を買うということは基本的に、なんらかのジョブを片づけるために何かを「雇用(ハイア)」するということである。その商品がジョブをうまく片づけてくれたら、後日、同じジョブが発生したときに同じ商品を雇用するだろう。ジョブの片づけ方に不満があれば、その商品を「解雇(ファイア)し、次回には別の何かを雇用するはずだ」>

具体的に理解させるために、著者は第1章で、ミルクシェイクの例を挙げていますが、この説明を読めば、「ジョブ」の概念を使ってマーケティングすることの意味がよくわかると思います。

ちょっと引用してみましょう。

<すぐ明らかになったのは、早朝の顧客は誰もが同じジョブを抱えていたということだった──「仕事先まで、長く退屈な運転をしなければならない」。だから、通勤時間に気を紛らわせるものがほしい。しかも、いまはまだ腹はすいていないが、あと1、2時間もすれば、そうなることがわかっている>

<ある客は言った。「ときにはバナナを食べますよ。だけどバナナじゃだめなんだなあ。すぐに食べ終えてしまうから。で、結局、また腹が減ることになる」。ドーナツはくずが落ちるし、手が油でべとべとして、運転中に服やハンドルをよごしてしまう。ベーグルはぱさぱさしていて味がないし、チーズやジャムを塗ろうと思ったら膝で運転しなければならなくなる>

<「そう!ミルクシェイクだ。濃いからさ! ストローだと20分ぐらいかかる。中身がどうとか、知ったことじゃない──おれはね、昼飯まで腹がもてばいいんだ。車のカップホルダーにもぴったりだし」>

この「ジョブ」を理解し、ライバルを出し抜くためのヒントが、本書にはバッチリ書かれています。

さっそくポイントを見て行きましょう。

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企業は果てしなくデータを蓄積しているものの、どういうアイデアが成功するかを高い精度で予測できるようには体系化されていない。むしろデータは、「この顧客はあの顧客と類似性が高い」「このプロダクトはあのプロダクトとパフォーマンス属性が似ている」「この人たちは過去に同じ行動をとった」「顧客の68パーセントが商品Bより商品Aを好む」といった形式で表現される。だがこうしたデータは、顧客が「なぜ」ある選択をするのかについては何も教えてくれない

ジョブ理論の中核には、単純だが強力な知見が込められている。顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に引き入れるというものだ。この「進歩」のことを顧客が片づけるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている

ジョブは機能面だけでとらえることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、こちらのほうが機能面より強く作用する場合もある

チーズ会社が新たな種類のチーズを発売しても、すばらしいイノベーションとは感じないだろう。だがサージェント・フーズは、ごく薄くスライスしたチーズを1枚ずつ包装した商品で初年に5千万ドルを売り上げ、2年目は同カテゴリ全体を大きく成長させると同時に、売上も1億5000万ドルへと引き上げた

「競争相手のいないジョブのまわりに自分たちを位置づける」

顧客のジョブを見きわめるということは、顧客が実際に支払おうとするもの以上に機能を増やしすぎてはいけないということだ。その反面、片づけるべきジョブに応える最適なプロダクトがあれば、顧客は多めに支払うこともいとわない

ジョブをベースにしたイノベーションを他者が模倣しようとしてもなかなかできないのは、ひとつにはジョブスペックが詳細だからだ

あなたの会社のプロダクト/サービスを、片づけるべきジョブと同義になるまで結びつけることができれば、誤った理由で顧客に雇用されることはなくなる。ジョブと同義になったこのようなブランドを目的(パーパス)ブランドと呼ぶ

スターバックスやグーグル、クレイグリストなど、パーパスブランドになった数多くのブランドはどれも、当初はたいして広告を打っ
ていなかった。にもかかわらず、やがて強い力をもち、「ググる」のような動詞になっていった

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<何が顧客にその行動をとらせたのかを真に理解していないかぎり、賭けに勝つ確率は低い>

どうすれば、商品が売れる理由が理解できるのか。どうすれば、顧客が自社商品を採用してくれるのか。

そのヒントは、じつは「ジョブ」にあったのです。

実務家としては「当たり前」と言いたい部分もありますが、ここまで体系化・具体化したのは、さすがです。

事例も豊富で、オビの「21世紀のベスト・オブ・ビジネス書」は決してハッタリではありません。

ぜひ読んでみてください。

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『ジョブ理論』クレイトン・M・クリステンセン他・著 ハーパーコリンズ

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◆目次◆

序 章 この本を「雇用」する理由
第1部 ジョブ理論の概要
第1章 ミルクシェイクのジレンマ
第2章 プロダクトではなく、プログレス
第3章 埋もれているジョブ
第2部 ジョブ理論の奥行きと可能性
第4章 ジョブ・ハンティング
第5章 顧客が言わないことを聞き取る
第6章 レジュメを書く
第3部 「片づけるべきジョブ」の組織
第7章 ジョブ中心の統合
第8章 ジョブから目を離さない
第9章 ジョブを中心とした組織
第10章 ジョブ理論のこれから

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