【なぜ自由市場ではインチキがまかり通るのか?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492314989
本日ご紹介する一冊は、ともにノーベル経済学賞を受賞しているジョージ・A・アカロフとロバート・J・シラーが、自由市場でインチキがまかり通る理由、なぜ人が騙されてしまうのかを説いた、興味深い一冊。
昔々、『詐欺とペテンの大百科』という名著を紹介しましたが、いつの時代も詐欺の手口は一緒。
ただ、やり方の表現と騙される人が違っているだけです。
本書はこの『詐欺とペテンの大百科』よりも一般的な事例を取り上げ、かつもうちょっと理論的に書いた内容。
※参考『詐欺とペテンの大百科』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4791759168/
とは言え、操作と詐術に関する本であることにかわりはなく、利用する人によっては、危険な内容となり得ます。
人が騙されることの本質、騙してしまう理由、企業が経済活動をしているうちに不誠実になる仕組みなどを、ノーベル賞受賞学者2人が明らかにしています。
知的好奇心を刺激するその内容を、さっそくチェックしてみましょう。
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問題は、悪いやつがたくさんいるということではない。ほとんどの人はルールを守るし、単によい生活を送ろうとしているだけだ。でも競争圧力のせいで、ビジネスマンたちはどうしてもごまかしと詐欺をやるようになり、おかげで私たちはいりもしない製品を買い、高すぎる金額を支払ってしまう。そして、ほとんど目的意識を与えてくれない仕事をやらされることになる
当初のスロットマシンは、現在のような意味合いではなかった。あらゆる「自動販売機」がスロットマシンと呼ばれた。(中略)でも、そこで、新しい使い道が見つかった。まもなくスロットマシンはギャンブル用機械を含むようになった
人は自分が本当に求めるものを自分でもわからないという弱みがあり、そうした弱みを儲かるような形で生み出し活性化させられる
◆カモ釣りがよく見られる四分野
・個人の財務的な安全性に関する分野
・マクロ経済の安定性をめぐる分野
・人々の健康をめぐる分野
・政治統治の質をめぐる分野
人々は贈り物や親切に返報したいときにカモにされる
お金を儲けるには二種類の方法がある。最初のものは正直な方法だ。顧客が1ドルの価値があると思うものを与える。そしてそれを、1ドルより安く生産するのだ。でももう一つは、顧客にまちがった情報を与えたり、かれらがまちがった結論に達するように促すことだ。それにより、実は1ドルより低い価値しかないものを、1ドルの価値があると顧客に思い込ませるのだ
美しい熟したアボカドを売るという評判のある人物には、チャンスができる。立派で熟したアボガドに人々が支払う価格で、低質なアボカドを売りつけられるのだ。この人物は、自分の評判をマイニングした(傷つけた)ことになる。そして売りつけた相手をカモとして釣ったことになる
スーパーに対して2パーセントの利用手数料を課すことで、クレジットカード会社は平均的な雑貨の利潤上乗せ分の5分の1近くをかっさらっている
食品を考えてみよう。シンクレアが報じたような結核の牛からのステーキに代わって登場したのは、インチキ食品産業だ。提供する商品で私たちを盛大に釣るのだ。その商品は、砂糖と塩と脂肪まみれだ。いまや食中毒で病院に行くことはほとんどない。でも食品が引き起こした直腸系の疾病や糖尿病がある
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シナボンを名指しで非難していたり、ゴールドマン・サックスの儲けの仕組みを暴いていたり、アメリカ人の肥満の原因を究明し、大手食品会社の欺瞞を暴いたり、なかなか「激しい」内容です。
なかには、卵や牛乳をスーパーの奥に置いて客を回遊させる、といった通常行われている慣行への非難もあり、当惑しますが、こんな些細な「インチキ」も、本書では非難の対象になっています。
騙す側、騙される側両方に役立つ内容が書かれており、正直、読んだ方の勝ち、といった内容です。
ぜひ、チェックしてみてください。
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『不道徳な見えざる手』ジョージ・A・アカロフ、ロバート・J・シラー・著
山形浩生・訳 東洋経済新報社
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◆目次◆
まえがき 経済はごまかしに満ちている
序 章 みんな操作されてしまう:釣りの経済学
第1部 釣り均衡を考える
第1章 人生至るところ誘惑だらけ
第2章 評判マイニングと金融危機
第2部 あちこちにある釣り
第3章 広告業者、人の弱点を突く方法を発見
第4章 自動車、住宅、クレジットカードをめぐるぼったくり
第5章 政治でも見られる釣り
第6章 食品、医薬品での釣り
第7章 イノベーション:よいもの、悪いもの、醜いもの
第8章 たばこと酒と釣り均衡
第9章 倒産して賭けを得る
第10章 マイケル・ミルケンがジャンクボンドを餌に釣り
第11章 釣りと戦う英雄たち
第3部 自由市場の裏面
結論 自由市場のすばらしい物語を見直そう
あとがき 釣り均衡の重要性
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