【大企業が成功体験を捨てる時】
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0を1にするのは大変。1から100にするのも大変。
でも、もっと大変なのは、100から先に伸ばすことかもしれません。
人は幸せになろうと努力はするけれど、幸せになってなお努力をする理由を見つけるのは、とても難しいからです。
本日ご紹介する一冊は、シェア10%を割り込むどん底の経営状態から、歴史的ヒット商品「スーパードライ」で一気に首位を取り、その後、約30年間ヒットのなかったアサヒビールの奇跡の復活をレポートした一冊。
スーパードライに気を使ってビール分野でイノベーションを起こせず、また「第3のビール」でも後塵を拝したアサヒビールが、どうやって「もぎたて」「贅沢ゼロ」などのヒットを連発するに至ったのか。
このところ、株価も好調な同社(アサヒグループホールディングス)の今後がどうなるのか、見定める上でも、興味深い内容です。
全部で5章立てで、目次は以下のようになっています。
同社のダイナミックな歴史を概観するという意味でも、興味深い内容だと思います。
第1章 立ち上がった?負け犬?たち
第2章 負けながら強くなるーー「夕日ビール」時代を超えて
第3章 勝ちながら弱くなるーーバケモノ商品の誕生、その功罪
第4章 そして逆襲が始まった
終章 ヒットとイノベーションは、こうして生まれる
気になったポイント、さっそくチェックしてみましょう。
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メーカーは良くも悪くも、商品でしか変わることはできない
ライバルのキリンが01年に「氷結」をヒットさせて以来、「負け続けていた歴史」(平野伸一アサヒビール社長)だった缶チューハイ市場において、「もぎたて」は初めてのヒット商品となった
アサヒの技術部門では、「糖質ゼロ」を維持しながら原料の麦芽使用比率を大幅に高める新技術を16年の夏前に開発していた。研究を続け試行錯誤するなかで、ビールではなく第3のビールに適用できるある“現象”を発見し、このイノベーション(技術革新)は、17年2月21日に発売された第3のビール「クリアアサヒ 贅沢ゼロ」に結実した
缶チューハイ市場におけるメインは、業界内で「レ・グレ」と呼ばれるレモン味・グレープフルーツ味の商品である。しかし、アサヒの開発陣はあえてど真ん中を避けるようになっていた。白桃やみかんといったニッチな分野へと、開発のターゲットをずらしていたのだ
3年生のころ、春の東日本大学拳法リーグ戦で平野は生涯忘れ得ぬ経験をする。団体戦は7人制だったが、早稲田の部員はギリギリの7人しかいなかった。(中略)結晶の立正大戦で、勝つはずの1人が引き分けてしまう。「何、やってんだよ……」勝利の方程式は崩れて3勝3敗1分けとなり、判定で立正が優勝した。平野本人は7戦全勝だった。
「立正は30人もの部員がいて、試合ごとに日替わりヒーローが誕生していました。対する早稲田は決められたヒーローで戦っていた。これでは層の厚いチームには勝てない。このときの体験は、経営者となったいまでも私の組織論として生きています」
「お客様を見よ、答えはお客様にある」。マツダからアサヒへと伝えたのは、村井だった。「赤いファミリア」の開発にあたったのは、AMで営業を経験した技術者らだった。つまり、営業で接した最終ユーザーの要望、生の声が反映されていたのである
だれかが特異な行動を起こす。そこから、何かが始まっていくことがある
1987年のスーパードライは、1本の場外ホームランだった。対して、これから仕掛ける総攻撃は、“連打”を目論む。さまざまなジャンルでいっせいにヒット商品を立ち上げていくのだ
世界ブランドとしては、ビールではスーパードライ、ウイスキーはニッカを立てていきます。ウイスキーはいま原酒不足ですが、20年以降には解消に向かいます。エコノミーな「ブラックニッカ」と、プレミアムな「竹鶴」と、両面で世界に打って出ていきます(平野社長)
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巻末の平野社長インタビューにも載っていますが、アサヒの現在の戦略は、かつての単一商品依存ではなく、すべてのカテゴリーでNo.1を取って行く戦略。
これによって獲得した技術優位性を、次のイノベーションや商品戦略に活かす、というのがポイントです。
インタビューの最後には、今後の同社のグローバル戦略についてもコメントがあり、投資家や関係者はぜひ読んでおきたいところ。
読み物としてもドラマチックに書かれているため、興味深く読み進めることができます。
ぜひチェックしてみてください。
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『アサヒビール30年目の逆襲』永井隆・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆
第1章 立ち上がった?負け犬?たち
第2章 負けながら強くなるーー「夕日ビール」時代を超えて
第3章 勝ちながら弱くなるーーバケモノ商品の誕生、その功罪
第4章 そして逆襲が始まった
終章 ヒットとイノベーションは、こうして生まれる
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