2017年3月12日

『逆説のスタートアップ思考』馬田隆明・著 vol.4617

【起業家必読。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121505786

本日ご紹介する一冊は、今年読んだ中でイチオシの起業関連本。

著者は、東京大学産学競走協創推進本部、東京大学本郷テックガレージ・ディレクターの馬田隆明さんです。

タイトルに「逆説の」と書かれていますが、その意味は、<スタートアップとしてのよいアイデアやより戦略には、往々にして「自分の直観的な判断が間違っている」ことや「一見、真理にそむいているように見える」ものが含まれ>るからです。

誰もが「良さそう」と思うアイデアはじつは良いアイデアではなく、本当に良いアイデアは説明しにくい、と述べた内容で、ポイントを読む度に唸らされました。

スタートアップを成功させるために知っておくべき以下の4つが理解できれば、起業は一気に成功に近づく。

本書でも、この4つをふまえて論が展開されています。

1.不合理なほうが合理的
2.難しい課題ほど簡単になる
3.本当によいアイデアは説明しにくい
4.スタートアップの成功はべき乗則に従う

そして各論では、著者いわく<初期のスタートアップにとって重要な3点>、「アイデア」「戦略」「プロダクト」について説明がなされています。

ピーター・ティールやY Combinatorのサム・アルトマンなど、スタートアップ関連の大物の話が上手にまとめられており、じつに読み応えがありました。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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この一見、不合理なアイデアの選択のことをピーター・ティールは「賛成する人がほとんどいない大切な真実」と呼んでいます(中略)今の時代の集団が「間違って信じている幻想」を見抜き、それに異を唱えることが、スタートアップを始める人たちには必要な資質

アイデアそのものの良し悪しではなく、「なぜ今」このアイデアは悪いように見えて実はよいのかを説明できる必要があります。この「Why Now?」の問いは、シリコンバレーで最も尊敬されるベンチ
ャーキャピタルの一つ、セコイア・キャピタルがしばしば行う質問

すでにGoogleで高給を得ている人が、あなたのスタートアップになぜ参加するべきなのでしょうか。そんなとき、「Googleで広告のクリック率を0.001%上げるためのプログラムを書くことよりも、私たちの会社に参加したほうが社会的課題に取り組める」というのは一つの強力な理由になります

平凡な企業、つまり既存のアイデアをコピーしてほんの少しの新しい何かを加えたような企業に優秀な人は集まらなくなってきている

ピーター・ティールは「新しい価値を作って、それを独占しろ」「小さな市場から始めろ」という言葉を繰り返します

スタートアップが着目するべきなのは、単に最新のテクノロジというだけではなく、急激に変わりつつあるテクノロジとなります。特に、
1.性能 2.コスト 3.サイクルタイムの三つの面に注目するべきだと、Y Combinatorのサム・アルトマンは指摘しています

素早く独占するためには、以下のような条件を満たす必要があることをピーター・ティールは挙げています。
1.小さな市場を選ぶこと
2.少数の特定の顧客が集中していること
3.ライバルがほとんどいないこと
4.顧客に刺さり続ける仕組み(stickiness)があること
5.スケールのために必要な限界費用が低いこと

◆長期独占状態を作るための要素(ピーター・ティール)
1.プロプライエタリテクノロジ(専売的な技術)
2.ネットワーク効果
3.規模の経済
4.ブランド
5.ディストリビューション
6.政府
7.複雑な組み合わせと調整

顧客に愛されるプロダクト体験を作ることは、思ったよりも長い時間がかかります。Airbnbですら、ユーザーから愛されるプロダクト体験を見つけ、成長を果たすために、創業から約1000日の時間を要しています。だからこそ極力「スケールしないこと」を長く続けることが重要です

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本書の冒頭で著者は、スタートアップを目指すことのキャリア上のメリットとして、こんな事を挙げています。

<お金を払ってMBAを取得して「プロの管理職」になるより、起業して「新しい事業を興す経験」をしたほうが役立つキャリアになる、と考える人が増えている>

起業を、「一部の楽観的でリスク選好志向の高い人がやるもの」と思うのは、もう古い価値観なのかもしれません。

起業家は必読。これからの時代に生き残りたいサラリーマンにも、ぜひ読んでいただきたい内容。

強力にプッシュしたい一冊です。

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『逆説のスタートアップ思考』馬田隆明・著 中央公論新社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121505786/

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http://bit.ly/2mwMmVT

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◆目次◆

前 章 スタートアップとは
第1章 アイデア 「不合理」なほうが合理的
第2章 戦略 小さな市場を独占せよ
第3章 プロダクト 多数の「好き」より少数の「愛」を
第4章 運 それはコントロールできる
終 章 逆説のキャリア思考

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