2017年3月30日

『経済は地理から学べ!』宮路秀作・著 vol.4635

【目からウロコの一冊】
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本日の一冊は、代々木ゼミナール地理講師の宮路秀作さんが、「地理」の視点から経済を見る方法を指南した、ビジネスパーソンのための教養書。

<「土地」と「資源」の奪い合いから経済が見える!>と書かれたオビの表紙をめくると、そこからは「目からウロコ」の地理の視点が見えてきます。

著者いわく、経済をつかむ地理の視点とは、「自然」「スケール」「資源」「距離」の4つ。

なるほど、著者の解説を読んで行くと、いかにこの4つの視点で世界経済が形成されているか、よくわかります。

たとえば、アイスランドでアルミニウムの生産・輸出が盛んであることの説明。

これは、「自然」という視点からなされています。

<アイスランドには多くの火山が存在するため、これを利用した地熱発電が行われています。これが総発電量の26%を占めます(中略)氷河の侵食によって形成されたU字谷が多数存在します。土地の高低差を利用し、水の落下エネルギーを用いた水力発電が盛んです。なんと水力発電量は総発電量の74%を占めます。つまりアイスランドは、地熱発電と水力発電という再生可能エネルギーだけで電力をまかなっている国なのです。火力発電や原子力発電よりも安価な電力を得ることが可能ですので、アイスランドはそれを武器にアルミニウム工業を発達させてきました。アルミニウムは、中間製品アルミナを電気分解して生産しますので、生産過程において大量の電気を使用します。だからこそ、安価な電力が必要なのです。事実、アイスランドの輸出品目2位はアルミニウムとなっています>

本書を読めば、なぜその国でその産業が盛んになったのか、国としてどんな戦略を取るべきなのか、今後何が問題になってくるのか、一発でわかります。

さっそく、気になるポイントをチェックしてみましょう。

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鉄鋼業は大都市近郊で発達します。商業施設やマンションを建てるなど、鉄鋼需要は大都市で大きいものです。需要の大きい東京に鉄鋼を供給するには、輸送コストが小さくなる周辺都市に工場を作るとよいですね。現に川崎市や千葉市には、大手鉄鋼メーカーJFEスチールの東日本製鉄所があります。また、日本は鉄鋼を生産するために必要な鉄鉱石や石炭のほとんどを輸入に依存しています。そのため輸入の便がよく、かつ冷却用水の得やすい沿岸部が立地に向いています。つまり製鉄所の立地は、大都市近郊の沿岸部がよいのです

世界の包蔵水力を見ると、中国、アメリカ合衆国、ロシア、ブラジル、カナダの上位5カ国だけで世界の51%を占めます。さらに、上位10カ国まで加えると世界の3分の2を占めます。水資源もまた、世界中で一様に手に入るわけではないのです

日本の資源輸入国から見えてくることがあります。それは、東南アジアとオーストラリアの重要性です。日本は、鉄鉱石や石炭、天然ガスなど、オーストラリアから多くの資源を輸入しています。そして運搬には船舶を利用します(中略)日本と東南アジア諸国との関係が悪化してしまえば、船舶の航行が困難になるかもしれません。そのため東南アジアは日本にとって最重要シーレーン(海上交通路)なのです

なぜオランダがロシアの最大貿易相手国なのか? それはヨーロッパ市場へ供給する玄関口がオランダだからです。(中略)ロシアからオランダへ原油が輸出される。オランダはそれを石油製品へと加工し、ライン川を使ってドイツへ輸出する

インドの交通手段は依然として二輪車が主流(約80%)であるため、四輪自動車の需要は今後も拡大すると考えられています

先進国の輸出統計にはある特徴があります。「1位機械類、2位自動車」となっている国が多いのです

衣類というのは、いわゆる労働集約型産業の1つで、多くの労働力を必要とします。そのため、安価な賃金水準を求める傾向にあります

20世紀は「石油の世紀」でした。しかし21世紀は「水の世紀」です

一般的に生活水準が向上すると食生活が向上し、肉類や油脂類の消費量が増えます

なぜ土地も資源もない日本が、経済大国になれたのか? 地理の視点から考えてみましょう。その要因は教育水準の高さ、そして人口の多さです

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ご覧の通り、ビジネスパーソンとしても、投資家としても、ぜひ学んでおきたい基礎教養としての地理がじつに丁寧に紹介されています。

巻末の特別付録には、高校で学んだっきりの大人にはアップデートできていない、世界のランキング情報が載っています。

これを読まずして何を読む。

ぜひ、読んでいただきたい一冊です。

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『経済は地理から学べ!』宮路秀作・著 ダイヤモンド社

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◆目次◆

序 章 経済をつかむ「地理の視点」
第1章 立地 地の利で読み解く経済戦略
第2章 資源 資源大国は声が大きい
第3章 貿易 世界中で行われている「駆け引き」とは?
第4章 人口 未来予測の最強ファクター
第5章 文化 衣食住の地域性はなぜ成り立つのか?
おわりに 地理とは、いったい何を学ぶ科目なのか?
特別付録 「背景がわかれば、統計は面白い」

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