【不動産に起こる変化】
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本日ご紹介する一冊は、BCG、三井不動産を経て、現在はホテルや不動産の開発・運用アドバイスをする著者が、日本の価値観の変遷とビジネスの変化、そして著者の専門である不動産の行方を追った一冊。
量的拡大の時代の象徴であるマクドナルドと質を追求するディズニーランドを比較し、日本人の価値観がどう変わってきたか、これからどうなるのかを論じています。
マクドナルドがなぜウケたか、ディズニーランドがなぜ成功したか、改めて振り返る良い機会にはなりますが、「量的充足」から「質的充足」というだけなら既に各方面で論じられています。正直、目新しい部分は少ないと言っていいでしょう。
ただ、不動産に関しては、「たて」から「よこ」の成長、「オペレーショナルアセット」という考え方が参考になりました。
オペレーショナルアセットというのは、<自らの商売のためにハコを作って、顧客を呼び込む、あるいはそのハコを利用して自らの商売を円滑にさせる、といういわば「商売道具」としての不動産>。
不動産の世界もただハコモノを作って稼ぐスタイルは終わりに近づいている、ということなのでしょう。
ほかにも、不動産やビジネスにとって役立つ視点がいくつかあったので、ご紹介しておきます。
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当時の日本では、牛肉はぜいたく品。「ビフテキ」という言葉は、ビーフステーキの略ですが、ビフテキを食べることができるのは上流層だけ。庶民は、年に一回口にできるかどうかという時代でした。そんな中、マクドナルドが提供する「ハンバーガー」は、百パーセントビーフのパティ。一個八十円という値段は、当時国鉄山手線の初乗り運賃が三十円、タクシーが百三十円で、決してお手軽に食べられるものではなかったのでしょうが、ビフテキに比べれば、八十
円で口にできる本格ビーフの味は当時の日本人の「手に届く憧れ」の対象になったのでした
同時に売り出された「マックシェイク」に至っては、日本人にとっては革命的なデザートでした。アイスクリームなのか、ミルクセーキなのかわからない
みんなが同じような生活をする、という中に、マクドナルドでハンバーガーを頬張るという「幸せ」な行為がしっかりと位置付けられていた
住宅は、既に消費財になっているのです。人々はより良い立地の、設備仕様の良い住宅を選び、これを使い倒すことを知り始めています
新築マンションの価格はうなぎ上りです(中略)価格上昇は、マンション需要が盛り上がっているからと考えがちなのですが、実は、建物建設費の値上がりが主な原因です
オフィスビルのテナントがビルに求める条件は、賃料だけではなくなりました。つまり、ビルというハコの中で、どんなサービスを提供してもらえるのか、このビルは本当に安心安全なのか、BCP(事業継続計画)への対応は十分なのか、多くの要素が問われるようになっています
「量的充足」のみを追い求めた、マクドナルド型ビジネスモデルの先行きに黄色信号がともる中、ホテルや物流施設といったオペレーショナルアセットに、投資マネーの目も向けられ始めている
アメリカのニューヨークのオフィステナントの業種で、今非常に伸びているのがTAMIというセクターです。TAMIとは、テクノロジー(Technology)、広告(Advertisement)、メディア(Media)、情報通信(Information)の頭文字をとったものですが、このセクターは今や銀行や証券などのファイナンスセクターを上回る成長を見せています。このテナントセクターに属する企業の多くは中小企業です。そしてここで働く人々は大企業の枠組みにはとらわれずに自由な服装で、少人数でAIやITを活用して知恵を出し合いながら、高度なビジネスモデルを構築していく人たちです
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新書で800円と安価ですし、「一冊に一行の線が引ければ良い」という土井のポリシーからすればOKですが、前半部分の意味のなさがもったいない一冊でした。
この紙数を著者の専門である不動産に費やしてくれれば……と思わずにはいられません。
とはいえ、不動産オーナーとしては、学びのある内容でした。
赤ペンチェックを見て、気になった方はぜひチェックしてみてください。
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『2040年全ビジネスモデル消滅』牧野知弘・著 文藝春秋
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◆目次◆
第1章 マクドナルドが目指した「量的充足」社会の実現
一九七一年からの四半世紀を展望
第2章 ディズニーランドがこだわる「質的充足」ビジネスの展開
日本の絶頂期八〇年代にやってきたディズニーランド
第3章 マクドナルドはなぜ行き詰ったのか
九六年以降の日本社会の変質
第4章 ディズニーランドはなぜ三年連続で値上げできるのか
社会の変質の先にあったディズニーランド型価値観の創出
第5章 マクドナルド型ビジネスモデルに見る今後の価値下落
二〇二一年以降の社会の展望
第6章 ディズニー型ビジネスモデルによる価値創造
二〇二一年以降の不動産価値
第七章 ディズニーの夢から醒めたとき
二〇四六年に向けてのクライシス
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