2016年12月14日

『ブロックチェーンレボリューション』ドン・タプスコット、 アレックス・アプスコット・著 高橋璃子・訳 vol.4529

【金融・IT・自動車…すべてを襲う大革命】
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本日ご紹介する一冊は、最近話題のブロックチェーンに関する論考。

著者は、世界的ベストセラー『ウィキノミクス』や、英エコノミスト誌ベストビジネス書に選出された『デジタルネイティブが世界を変える』の著者、ドン・タプスコット氏。

投資銀行での実務を経て、現在ブロックチェーン関連ビジネスへのアドバイザリー業務を行っているという息子・アレックス・タプスコット氏との共著となっています。

ブロックチェーン技術といえば、ビットコインが有名ですが、他にもさまざまな取引に使われる可能性がある技術であり、読者はその全容を知ることで、次のビジネスの可能性を知ることができます。

UberやAirbnbを凌ぐ取引システム、行列を作らずに手元のスマホから送金できるサービス、食べ物の履歴を知ることのできる検索、信用を元に世界中から資金を調達できる可能性、使った分だけ課金され、貸した分だけ収入源になる「メータリング・エコノミー」…。

ワクワクする未来が描かれ、起業家なら興奮なしに読み進めることは難しいでしょう。

このブロックチェーンにいち早く取り組んでいる注目ベンチャーの名前も登場するので、投資家にとっても見逃せません。

論客、ドン・タプスコットが、ブロックチェーンが巻き起こす革命をどう見ているのか。さっそくチェックしてみましょう。

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この新たなプラットフォームが普及すれば、あらゆることをリアルタイムで電子的に照合できる。近い将来、身のまわりの製品がすべてインターネットに接続され、人間の指示がなくても自分で必要な電力を調達したり、大事なデータをシェアしたり、さらには健康管理から環境保護まで何でもやってくれるようになるだろう

モバイル送金サービスのアブラ社は、ブロックチェーンを使った国際送金ネットワークを開発した。銀行の窓口を介さず、スマートフォンで簡単に現金を送れるシステムだ。これまで送金に1週間かかっていたのがわずか数分程度に短縮され、手数料は7%以上かかっていたのがわずか2%程度ですむ。アブラ社は今後さらにネットワークを広げ、世界中のATMの数を上回る規模にしたいと目論んでいる

単にお金の支払いが変わるだけではない。誰が何を持っているか。このコンテンツの権利は誰にあるのか。誰が医学部を卒業しているか。誰が銃を購入したか。誰がこのナイキの靴やアップル製品をつくったか。このダイヤモンドはどこから来たのか。ありとあらゆる記録を、確実に知ることが可能になる

ブロックチェーンを使えば、取引相手がお金を払ってくれないというようなリスクを考慮する必要はない。取引成立と同時に決済が完了するからだ

ジェレミー・アレールは、金融業界のグーグルをめざしている(中略)アレールの立ち上げたサークル・インターネット・フィナンシャル社は、ベンチャー史上最大規模の資金を調達して順調なスタートを切っている(中略)「3年から5年のうちに、好きな通貨で価値を保管できるようなアプリを提供します。ドルでもユーロでも円でも人民元でもいい、デジタルであれば何でも受けつけます。世界中のどこへでも一瞬で支払いができて、セキュリティも万全で、プライバシーは固く守られます。そして何より、無料で利用できます」無料とは大きく出たものだ。とはいえ、それでも儲かると判断したから、ゴールドマン・サックスや中国のベンチャーキャピタルIDGが出資を決めたのだろう

◆メータリング・エコノミー
購読しているメディア、物理的な空間、電力など、使っていないものがあれば何でも収入源に変えられる(中略)物理的なものもメーター単位でシェアできる

ブロックチェーンなら、牛1頭ごとの情報が管理できるだけでなく、スーパーで販売される一切れがどこから来たかということまで正確に追跡できる

たとえば、必要書類が確認できなければ動作しない自動車はどうだろう。免許証や車検の有効期限が過ぎていたら、エンジンがかからないようにするのだ

ブロックチェーンを使えば、募金を取りまとめて送金するための仲介機関が不要になる。だから、お金が不確かな用途に消えてしまうことはないし、途中で盗まれる心配もない

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ブロックチェーン技術の可能性について読んで行くと、あたかもバラ色の未来が待っているように思えますが、もちろんデメリットについてもきちんと書かれています。

大量のハッシュ計算を行うために消費される電力、雇用の喪失、そして監視社会の可能性や犯罪への悪利用…。課題は山積みです。

それでも、「透明性」に対するニーズがある限り、ブロックチェーンは発展し、インターネットの次なる革命へとつながるのでしょう。

民主的であるはずだったインターネットが結局、政府や大企業によって牛耳られ、われわれのプライバシーを危機にさらしている、という本書の指摘はもっともであり、われわれは次なるしくみを求めています。

なじみの施設に顔パスで入れるのと同じような気軽さで、あらゆる国や施設に出入りし、サービスを利用/提供する時代が、もうそこまで来ています。

次なる革命に乗り遅れないためにも、年末読んでおきたい一冊です。

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『ブロックチェーンレボリューション』ドン・タプスコット、
アレックス・アプスコット・著 高橋璃子・訳 ダイヤモンド社

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◆目次◆

PART1 革命がはじまる
第1章 信頼のプロトコル
第2章 未来への果敢な挑戦
PART2 ブロックチェーンは世界をどう変えるのか
第3章 金融を再起動する
第4章 企業を再設計する
第5章 ビジネスモデルをハックする
第6章 モノの世界が動きだす
第7章 豊かさのパラドックス
第8章 民主主義はまだ死んでいない
第9章 僕らの音楽を取りもどせ
PERT3 ブロックチェーンの光と闇
第10章 革命に立ちはだかる高い壁
第11章 未来を創造するリーダーシップ
解説:若林恵(『WIRED』日本版編集長)

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