2016年10月27日

『自閉症のぼくが「ありがとう」を言えるまで』イド・ケダー・著 vol.4481

【生きる力が湧く、全米で大絶賛の手記】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864104859

表紙を見ただけで、どうしても気になってしまう本というのがあります。装丁の雰囲気、帯のコピー、そして「今の自分に必要だ」と迫る何か…。

本日ご紹介する本は、そんな一冊。

会話のできない重度自閉症の15歳が文字盤でつづり、全米で大絶賛されたという、『自閉症のぼくが「ありがとう」を言えるまで』です。

著者のイド・ケダ―氏は、2歳8カ月で重度自閉症と診断され、3歳から行動療法に取り組んで来た人物。

頑張っても改善せず、一時は専門家から深刻な知的障害があると診断されたのですが、7歳の誕生日に、奇跡的に文字が書けることを母親が発見。文字盤で意思疎通をする方法を学び、書かれたのがこの『自閉症のぼくが「ありがとう」を言えるまで』です。

一般の人間には到底わからない自閉症の世界がつづられているのですが、中身を読んで、これはマネジメントや教育の問題だと気づきました。

私たちは、つい自分の常識と照らし合わせて他者を評価してしまいがちですが、著者によると、自閉症の専門家や学校の先生でも誤解していることがある。

著者によると、自閉症の人が叫び声を上げたり、口に含んだ水をペッと吐き出したりするのは、うっぷんを吐き出すためだそう。健常者がストレスがたまった時、酒を呑むのと同じような印象です。

また、相手の目を見ない方がちゃんと耳を傾けられるとか、モノを口にするのは彼らにとってモノを認識するための一手段にすぎないとか、そんなことも書かれています。

この手記を読んでいると、自閉症の人には、健常者にはない優れた能力がいくつもあり、われわれはその長所を活かせているとは言えないと思いました。

そして、一番の注目は、著者が病気と闘う中で学んだ教訓。

困難に直面した時、励ましてくれる言葉がたくさん並んでいます。

さっそく、いくつかポイントをチェックしてみましょう。

———————————————–

ぼくには光と形が織りなすパターンが見えるのだ

みなさんはそこの言葉がしゃべれない国に行ったことはあるだろうか。思っていることをだれにも説明できないのはおそろしいことだ。会話のできない自閉症者は、この孤独と一生折りあっていかなくちゃならないのだ

コミュニケーションというのは一種の「スキル」なのだ。スキルを身につけるまでは、最初はサポートが必要なのは当然だ

ぼくは本のページをぜんぶ頭の中で「見る」ことができる。十年前のことも決して忘れない。なのに、着替えを最後まですることを覚えていられない。ぼくは本や会話を、細かいところまで覚えすぎている

ひとつ大事なことをつけ加えたい。これまでの自閉症教育は、ぼくたちの障害や「できないこと」にばかり焦点をあててきた

幸せになる秘訣は、自己憐憫をやめることだ

そう、彼らも決意したのだ――ありのままに生きることを。つらくても努力する覚悟を持つことを。人とはちがった生き方をする勇気を持つことを。試練を達成に変えることを

見るかぎり、彼らはどんな病気にもかかっていないのに、それでも自分をクールに見せようとして逆にみじめになっている。あるがままの自分を受け入れようとしないグループに、必死で自分を合わせようとしている。着ている服やしゃべりかた、聴いている音楽、あるいは宿題をまじめにやるかどうか。(中略)そんなことで自分を好きになれるはずはないのに

ぼくの人生はぼくのものだ。だから、自分の力で変えることのできないものはそのままに、できることは克服して、人生を受け入れていこう。そして、いまの自分が過去の自分に比べてずっと幸せだということに気づこう

贈りものをもらったように暮らす

「もし自閉症じゃなかったら……」というのはマイナス思考だと気づいた。理想の人生を思い描いたところで、憂鬱になるだけだ。「いまないもの」ではなく「いまの現状」に心を注ごう

解決策は、うらやましがる心と戦うこと。ありえたかもしれないことではなく、現状に取り組むこと

ぼくたちにはたいへんな難関があるけれど、それでも自由になれる

———————————————–

「多様性の時代」と言われて久しいですが、われわれはまだまだ、「他人は自分と違う」という事実を正しく認識できていないようです。

違う世界を理解することは、人に優しくなれること。そしてまだ解決されていない問題に気づくこと。それはマネジメントであれ、マーケティングであれ、やがてビジネスにつながっていきます。

今回、『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』の巻末付録で、ドラッカーの『マネジメント[エッセンシャル版]』に引いた線をご紹介しましたが、そこにはこう書かれています。

※参考:『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763135864/

※参考:『マネジメント[エッセンシャル版]』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478410232/

<人が雇われるのは、強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある>

マネジメント、教育を考えるためのヒントとして、また強く生きるためのエネルギー源として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

———————————————–

『自閉症のぼくが「ありがとう」を言えるまで』イド・ケダー・著 飛鳥新社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864104859/

<楽天ブックスで購入する>
http://bit.ly/2dKrKZg

———————————————–

◆目次◆

はじめに
第1章 十二歳 怒りと悲しみ
第2章 十三歳 過去をふりきる
第3章 十四歳 自分の人生を生きる
第4章 十五歳 高校へ
日本の読者のみなさんへ

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー