【名著です。】
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旅のお供に何冊か古典名著を持ってきたので、本日はその一発目をご紹介します。
『トム・ソーヤーの冒険』で知られる著者、マーク・トウェインによる、一見悲観的な人間考察、『人間とは何か』です。
老人と青年の対話形式で、人間の自由意志を否定し、「人間が全く環境に支配されながら自己中心の欲望で動く機械にすぎない」ことを論証しており、じつに斬新な人間観です。
著者によれば、<心の平安をしっかり握るためには、人間、どんなことだってやる>そうで、他人のためというのも、結局はこの原理に基づいているという。
愛、憎しみ、慈悲、復讐、親切、赦しといったすべてのことも、じつは人間の「主衝動」──つまり、<自身の自己是認をえなければならんという主衝動の、ただ異なった結果>だというのです。
対話に登場する青年同様、読者の中にも老人の主張に反発を感じる方はいらっしゃると思いますが、ここまですっきり説明されると、むしろ爽快でした。
本書を読むことによって、どうやって自己と社会の折り合いをつければ良いか、かえってはっきりわかって良いと思います。
さっそく、いくつかポイントを見て行きましょう。
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心の平安をしっかり握るためには、人間、どんなことだってやる
青年 じゃ、あなたは愛、憎しみ、慈悲、復讐、親切、赦し、等々といったものを、どうごらんになるんです?
老人 なに、要するに一つの「主衝動」──つまり、己れ自身の自己是認をえなければならんという主衝動の、ただ異なった結果というだけにすぎん
あることがたえられんという人間と、それにたえられるって人間と、これははっきり区別して考えてもらわなくちゃ困る
つまり、カメレオンなんだな。その本性の法則にしたがって、いやでもその居場所の色を帯びる。好悪も、政治意識も、趣味も、そして道徳、信仰も、すべてそれらをつくり出すのは、周囲からの影響
人間、カメレオンだってことこそ最大の幸運じゃないかな。つまり、その生息地──早くいや、その人間関係だが、それをさえ変えてやればいいんだよ。だが、ただそれを変えようっていう衝動、これがまた外からくるよりほかにないんだな
せっせと君たちの理想を向上させるように努めることさ。そしてみずからがまず満足すると同時にだな、そうすれば、必ず君たちの隣人、そしてまた社会をも益するはずだから、そうした行為に確信をもって最大の喜びが感じられるところまで、いまも言った理想をますます高く推し進めて行くことだな
心って奴はな、人間からは独立してるんだよ。心を支配するなんて、そんなことのできるはずがない。心って奴は、自分の好き勝手で自由に動くものなんだな。君たちの意向などお構いなしに、なにを考えつくかわからんし、また君たちの考えなどお構いなしに考えつづけることもする
人間には善悪の別がわかるってこと、そりゃたしかに他の動物たちよりも、知能の点じゃ上だってことを証明してるかもしれんな。だが、それでいて悪をなしうるっていうこの事実、これは逆に、それのできん動物たちよりも、道徳的には下だってことの証明なんじゃないかな
君たちの求めるいわゆる物質って奴は、要するにすべてシンボルにすぎん。なにもその物自体を求めてるわけじゃない。(中略)かりに君の求めてるのが、新しい帽子だとするな。それが手に入れば、君の虚栄心は喜びを感ずる。心が満たされるんだな。ところが、かりに君の友人たちが、その帽子を馬鹿にしてからかうとするね。たちまち帽子は価値を失って、君はそれを恥じるようになる
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本書を読んでいて、これまでの自分の活動や人間関係の問題が、すっきりと解決されました。
どうして人間同士、意見が食い違ったり、争いになったりするのか、その理由も、この説明ならよくわかります。
著者は晩年、借金苦や長女の死、末娘のてんかん発作癖、妻の重病など、いろいろと苦しいことが重なったらしく、その結果として、この厭世的な主張になったようですが、いやはや、優れた見解だと思いました。
さすが長く読まれているだけのことはあります。ぜひ読んでみてください。
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『人間とは何か』マーク・トウェイン・著 岩波書店
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◆目次◆
一 人間即機械・人間の価値
二 人間唯一の衝動──みずからの裁可を求めること
三 その例証
四 訓練、教育
五 再説人間機械論
六 本能と思想
結論
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