2016年8月25日

『世界をつくった6つの革命の物語』 スティーブン・ジョンソン・著 大田直子・訳著 vol.4418

【感動。名著。ベストセラー】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023315303

ビジネスでもプライベートでも、行動することに躊躇してはいけない、明確な理由があります。

それは、行動することにより作られた何かが、次の現実を生むから。

このことは、イノベーションにおいても同様です。

何かの問題を解決しようと生み出されたイノベーションが、次のイノベーションにつながる。こうしてわれわれの文明は発展してきたのです。

本日ご紹介する一冊は、人類の歴史上、重要な「6つの革命」と、そこから紡ぎ出される文明の物語を、これまでベストセラー9冊を出している作家、スティーブン・ジョンソン氏がまとめたもの。

6つの革命とは、ガラス、冷たさ、音、清潔、時間、光のことです。

オビにある、こんな言葉が本書のコンセプトを表しています。

<リビア砂漠で旅人がガラスにつまずかなければ、インターネットはなかったかもしれない>

単なる二酸化ケイ素が、メガネや顕微鏡を作り、光ファイバーケーブルを作り、スマホを作り、そして鏡ができたことで、自画像ができ、自分中心の文化ができた。

そして、音に関しては、たまたま速記を学んでいたスコットが音を記録しようと考えたおかげで、電話が生まれ、あらゆるテクノロジーの開発拠点となったベル研究所ができた。

やがて、ド・フォレストが開発した「オーディオン」が生まれ、それが真空管になり、ラジオ技術に適したジャズが大流行する。

このジャズが流行したことで、白人と黒人の共通の文化基盤が生まれ、人種差別政策に打撃を与える。すべてはつながっているわけです。

感動したのは、あらゆる技術は、それを生み出した人間のドラマに支えられている、ということ。ある人間のドラマが生み出した技術が、次の人間のドラマにつながっていく、その流れに感動するのです。

たとえば、超音波装置のもとを発明したフェッセンデンは、「音を使って見る」というアイデアが人の命を救うと信じ、ドイツの潜水艦から愛するイギリスを守ろうと必死に説得しますが、念願叶いませんでした。

しかし、彼が作った超音波装置は、いま妊婦健診に大活躍し、病院で大勢の命を救っています。

また、公衆衛生問題に取り組んだニュージャージーの医師、ジョン・レアルは、父親が南北戦争中に感染した水を飲んだことで亡くなっており、その仇を取るべく、リスクを取ってジャージーシティの貯水槽に塩素剤を加えました。

いま、われわれが安心してプールで泳げるのは、彼のおかげです。

革命の歴史を読んでいるのに、思わず涙がこみ上げてきて、たまらない気持ちになりました。

基本「買い」の一冊ですが、念のためにいくつかポイントを拾ってみましょう。

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二酸化ケイ素の融点に達するには、加熱炉の温度を摂氏五四〇度近くまで上げなくてはならず、しかもヴェネチアはほとんどが木造建築物でできた都市だった(中略)ガラス職人はヴェネチアに新たな富の源をもたらしたが、近所を焼き払うというありがたくない慣習ももたらした。一二九一年、ガラス職人のスキルを存続させ、なおかつ市民の安全を守ろうと、政府はガラス職人を再び追放の身としたが、その旅は短かった――ヴェネチアの潟をムラーノ島まで一キロ半ほど渡ればよかったのだ。ヴェネチアの首長(ドージェ)は図らずも、イノベーションの拠点をつくり出した。ガラス職人を小さな町ほどの規模の島ひとつに集めることによって、創造性の波を引き起こし、経済学者の言う「情報波及」のある環境を整えたのだ

グーテンベルクの偉大な技術革新には、別のあまり知られていない効果もあった。大勢の人々に、自分が遠視であることを初めて気づかせたのだ。それが明らかになったことで、眼鏡の需要が急増する

一八〇〇年には、高エネルギーの環境でのみ育つものを収穫し、低エネルギーの気候帯に出荷することで、富を築くことができた。しかし氷の商売は――おそらく世界貿易史上一度限りのこととして――そのパターンを逆転させた

世界中で急成長している大都市のほとんどは熱帯気候帯にある。チェンナイ、バンコク、マニラ、ジャカルタ、カラチ、ラゴス、ドバイ、リオデジャネイロ。人口統計学者は、このような暑い都市の人口は二〇二五年までに一〇億人以上増えると予想している

実際には、ド・フォレストが発明に一役買ったテクノロジーは、本質的にクラシックよりジャズに向いていた。ジャズは初期のAMラジオのスピーカーから出る圧縮された金属製の音でもよく響くが、交響曲の非常に広いダイナミックレンジは中継で大幅に失われてしまう。シューベルトの繊細さより、サッチモのトランペットの鳴り響く音のほうが、ラジオではうまく再現される(中略)多くのアメリカ人にとって初めて、アフリカ系アメリカ人が主体となって、黒人のアメリカと白人のアメリカとに共通の文化基盤が築かれた

フェッセンデンは、音を使って見るという自分のアイデアが、人の命を救うことを願っていた。彼はドイツの潜水艦を探知するのに使うと当局を説得できなかったが、最終的にオシレーターは、海だけでなくフェッセンデンが予想もしなかった場所、すなわち病院でも、大勢の命を救っている

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紹介し切れないほどの感動のエピソードがあり、とくに第3章「音」と第4章「清潔」は必読です。

原書のタイトルは、“How We Got to Now: Six Innovations that Made the Modern World”ですが、まさにわれわれの世
界を作ってくれた偉大なるイノベーションの歴史をたどっています。

全米ベストセラーとなった本だそうですが、十分納得できる、読み応えある内容です。

ぜひ読んでみてください。

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『世界をつくった6つの革命の物語』
スティーブン・ジョンソン・著 大田直子・訳 朝日新聞出版

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◆目次◆

序章 ロボット歴史学者とハチドリの羽
第1章 ガラス
第2章 冷たさ
第3章 音
第4章 清潔
第5章 時間
第6章 光
終章 タイムトラベラー

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