【地方ダメ支店の逆転劇】
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「窓際族が世界規格を作った」
これは、かつて「プロジェクトX」で取り上げられた、日本ビクターのケースで、当時業界8位の中堅家電メーカー・日本ビクターの窓際技術者たちが、日本初の世界規格「VHS」を生み出した奇跡を取り上げた際のコピーでした。
いつの時代も、弱者の逆転劇というのは喜んで受け入れられるもの。それが一度転落した者の逆転劇ならなおさらです。
本日ご紹介する一冊は、ビール業界No.1から転落したキリンビールの元ダメ支店、高知支店の逆転劇を描いた一冊。
著者は、高知支店の躍進を支援した支店長で、その後、四国4県の地区本部長、東海地区本部長を経て、2007年には東京本社の代表取締役副社長兼営業本部長に昇格した人物。
著者自身、左遷人事から大逆転したということで、そこにもドラマがあります。
大きく注目すべきは、それまで注力していなかった料飲店への営業に力を入れたこと(料飲店はビール全体の25%)、「いちばん」が大好きな高知県民の心に訴える広告キャンペーンが当たったこと、そして社内の評価やコミュニケーションを変えたこと、とシンプルですが、それが実行された過程が面白い。
どうしたら危機意識の欠如したダメ組織が一丸となって戦えるようになるのか、良い見本を見せていただいた気がします。
本書の中から、気になった部分を抜き出してみましょう。
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料飲店で飲まれているビールはビール全体の25%でしかありません。75%は家庭で飲まれているのです(中略)本来なら大きい市場に注力するべきですが、わたしは営業力の効きやすい料飲店にターゲットを絞りました
彼女が言うには、「高知の人は自慢のうんちくを語りながら飲むのが好きなんですよ。何しろ、“いちばん”が大好きなんです」。そこで高知の人たちが好きな“いちばん”に関係するデータがないかを調べました。(中略)20歳以上の人口のひとりあたりのラガーの瓶ビールの消費量が1年で30本ぐらいあり、全国で1位でした(中略)「この300万円を使ってダメなら、もうごめんなさいしよう」という気持ちで仕掛けたのが、「高知が、いちばん。」という新聞の15段広告でした(中略)「ラガーは高知で日本一飲まれているらしい」という情報が数カ月で一気に市場に広がったという手応えがありました
思いもしなかったような事態が起こりました。社長はその翌日東京に帰って、すぐに、たまたま新聞社の取材がありました。そのときになんと、「現場の声でこういうことがあるので、ラガーの味を元に戻す」と言ってしまい、そのコメントが新聞の記事になってしまったのです(中略)年初、高知新聞の取材を受けました。高知新聞は高知県での購読率は約80%を誇ります。そこで、「高知の人の声でラガーの味を元に戻しました」というタイトルの記事が出ました。まあ、もちろん本社は認めていないのですが(笑)、高知の人々には喜びをもって迎えられました
会議廃止で目に見えるいちばんの効果は、内勤の人数を減らすことに直結したことです。資料作成や事前打ち合わせなど会議の準備と報告書が必要なくなったため、内勤業務が削減され、内勤者を現場の営業にまわすことができました
上司を見るな、ビジョンを見ろ
やりすぎの無駄というのもあります。そこまでやらなくてもいいのにやっていることも結構あるものなのです
途中で考えを変えました。いくらキリンのほうがよいですと言っても聞いてくれないので、こうなったらそこはすっぱりあきらめ、今キリンを飲んでいる人たちだけを大切にする。その方たちにもっと喜んでいただくことだけに専念する。と考え方を変えてみました。そうすると、キリンを飲んでいる人の幸福度が相対的に高まり、水が高いところから低いところへ流れるように、自然とアサヒからキリンに変わるのではないだろうか。これが正解でした
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ファクトを掴むことで、大逆転の糸口をつかむ、ライバルが注力してないところに注力する(勝てるところで勝つ)、ローカライズする、既存客を大事にする、うまくいったやり方を横展開するなど、教科書通りではありますが、ここまで見事にやり遂げたケースは、そう多くないでしょう。
生きたケーススタディとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『キリンビール高知支店の奇跡』田村潤・著 講談社
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◆目次◆
第一章 高知の闘いで「勝ち方」を学んだ
1995年 高知の夜は漆黒だった
1996年 負け続けの年
1997年 健康になろう
1998年 V字回復が始まった
2001年 ついにトップ奪回!
第二章 舞台が大きくなっても勝つための基本は変わらない
四国での闘い──違う市場でも基本を貫く
東海地区での闘い──現場主義の徹底
全国での闘い、そして勝利
第三章 まとめ:勝つための「心の置き場」
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