2016年5月2日

『靴下バカ一代』越智直正・著 vol.4304

【「靴下屋」を創った男の経営哲学】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482223567X

経営には、王道と覇道がある。

王道は質の経営、覇道は量の経営であり、規模拡大を第一義とする会社は、まず覇道の会社と言っていいでしょう。

しかしながら、中小企業が良い会社を作ろうと思ったら、目指すべきは王道の経営。

本日ご紹介する一冊は、その王道を堂々と歩み、靴下業界で確固たるポジションを築いたタビオ(「靴下屋」で有名)創業者の越智直正さんによる一冊です。

大企業が狙わない、規模の小さな婦人用靴下に目をつけ、ひたすら高品質の商品を作ってきた同社が、どのように考えて経営をしてきたのか、じつに興味深いところです。

なかでも読み応えがあったのは、丁稚時代に大将から学んだという経営の教え。

大阪商人の基本の教えと、中国古典が絶妙に混ざり合って、骨太の経営論が展開されています。

さっそく、気になった部分をチェックしてみましょう。

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50年以上前、丁稚奉公先の大将によくこう言われたんです。「音楽家や絵描きが自分の思いを形にしたら楽譜や絵になる。靴下には靴下屋の心や精神が表れるんや。靴下だと思うな、自分自身やと思え。いい靴下を作りたければ、人間を磨け。人格にふさわしい商品しか作れない」

◆大将から教わったこと ※一部紹介
・商品と残品は似ても似つかぬものだ。商品は利益を生み、残品は赤字を生む
・計算ばかりするな。キタナイ商売人になるぞ。そろばんぐらい目ではじけ
・予算などあるか。予算は発想を限定する
・まず頭を使え、次に体を使え。銭は最後の切り札だ。銭さえ出せばばかでもできる
・儲けの秘訣は、貧乏人は金持ちを、金持ちは貧乏人を相手にすることだ

一生懸命に頑張っていれば、仕事があなたを守ってくれる

自分で職業を選ぶのではない。仕事があなたを選ぶのです

◆ダン(タビオの旧社名)の創業理念
「凡(およ)よ、商品は造って喜び、売って喜び、買って喜ぶようにすべし。造って喜び、売って喜び、買って喜ばざるは、道に叶わず」
※二宮尊徳の言葉をアレンジした

その頃、紳士物市場は大手メーカーがかなりのシェアを押さえていました。これに対し、当時まだ市場規模が小さかった婦人物には大手はあまり手を入れておらず、参入企業は中小メーカーや問屋が中心。婦人物だからと、品質よりデザインを重視するメーカーがほとんどでした。僕は自分のところの靴下の品質に絶対の自信がありましたから、この市場に懸けた。おかげさまで気付いたら婦人物靴下のトップブランドになっていました

競争をして覇道に入ってしまえば、経営の楽しさがなくなってしんどい部分だけが残る。相手からも疎まれる。だから、そうならないように、僕は誰が何と言おうと戦わない経営をする。同じ戦うならば、自分の理想と戦いたいと思うのです

仲間の利益をまず優先せよ

◆隋の文帝楊堅の妻、伽羅からの手紙
「あなたは天下取りという一日に千里走る虎の背に乗っているのです。乗った以上、途中で下りることはできません。もし途中で下りれば、たちまちその虎に食い殺されますよ」

僕は経営というのは商品の研究だと思うんです。商品が良くなかったら売れない。売れなかったら経営なんか何の役にも立ちしませんのや

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中国古典をこよなく愛する著者の経営哲学が、約240ページにわたりびっしり書かれており、じつに読み応えのある一冊でした。

「靴下」となっている部分を自分の扱う商品に置き換えれば、きっと著者のメッセージが強烈に伝わってくると思います。

ぜひ読んでみてください。

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『靴下バカ一代』越智直正・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482223567X

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◆目次◆

第一部 丁稚時代 超人誕生編
第二部 創業時代 昭和豪傑編
第三部 黄金時代 悲願達成編
第四部 承継時代 無限激闘編
<特別インタビュー>越智勝寛社長

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