2016年4月18日

『KISSジーン・シモンズのミー・インク』 ジーン・シモンズ・著 vol.4290

【ロックスターによる最強ビジネス訓】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822251233

著者の個性があまりに強力な場合、読者はもちろん、編集者さえもそれに引っ張られて、コンテンツに勝手なイメージを抱いてしまう。

それゆえに埋もれてしまう本があるわけですが、本日ご紹介する一冊は、その典型例でしょう。

『KISSジーン・シモンズのミー・インク』は、ロック界のスーパースター、KISSのジーン・シモンズが、起業やビジネスについて論じた一冊。

正直、あまりにロック風の表紙から、手に取るのをためらっていましたが、パラパラ読んでみてすぐに「これはすごい本だ!」と気づきました。

ナチ強制収容所の生き残りである母を持ち、7歳で父に捨てられ、貧しい幼少時代を送ったジーン・シモンズが、どうやって学び、挑戦し、身を立ててきたのか? 起業家は絶対注目の内容です。

前半を自分の半生、後半を読者へのメッセージにあてているのですが、断然面白いのは、著者の半生を書いた前半でしょう。

ニューヨーク州クイーンズの地下室から始まった著者の学びのプロセスは、必ずや若い起業家に刺激になると思われます。

リアルな金の話、人間関係よりもキャリアを優先する思想、カネを生み出す思考術…。あまりに生々しい話に、引いてしまう人もいるかもしれませんが、起業家なら、きっと受け止められるでしょう。

さっそく、ポイントをチェックしてみます。

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同級生の男の子たちが休んだり、バカやったり、怠けている週末、私はタイプ以外の仕事もこなした。サウス・フォールズバーグのパインズ・ホテルのプールの監視員をして70ドルから100ドル稼いだ(中略)車を持っていなかったから、その維持費を払う必要がなかった(中略)人付き合いもあまりしない。その頃、私はよく女の子に「ちょっと来てタイプを手伝ってくれないか?」と頼んだものだ。これでデート兼用だ!

相手には私に正しい相場を教える義務なんてない。自分が売ろうとする商品の価値を正しく把握しておくのは売り手の責任だ

実質、すべてのことはビジネスなのだ。すべての活動に損益計算書がある。ないなら持つべきだ。すべての活動に予算がある。ないなら持つべきだ。すべての活動に利益を得る動機がある。ないなら持とうと努力すべきだ

私は何百万回失敗しようと気にしない。私が成功し続けてこられたのは失敗を恐れなかったからだ。私はいきなり本番に飛び込む。それをする資格があるかどうかも、外野の批判も一切気にしたことがない

ビジネスにせよ私生活にせよ、大切なのは優先順位を間違えないことだ。ゼロサムゲームの難局に迷い込んだときは、それなしでは生きていけない最重要なものが何かを考えなければならない

起業家のゴールは誰に助けてもらえるかを考えるのではなく、誰を助けるかを考えられるようになることだ

配偶者や恋人が「私とキャリアのどっちが大事なの?」と聞くかもしれない。そういうときには「まず自分のキャリア。次にあなただ」と正直に答えることだ。「私たちが望むような生活を送るためにはまず十分なカネを稼がなければならない」と言うことだ

思った通りのことを言うこと。言った通りのことをすること。口から出た言葉は契約も同じだ。きみの評判は周りに広まる

誰も訓練軍曹に好感を抱いたりはしない。しかし鬼軍曹はきみたちに戦場で生き残る術を教える。きみたちが戦場に出たとき、鬼軍曹に教えられたことがきみたちの命を救う。きみたちは訓練軍曹を憎み、嫌うだろうが、その軍曹こそもっとも大事な友人なのだ。誰かに強制されなければ厳しい課業をこなせない。人はあまりに厳しいタスクを自分に課すことはできない。

もし「きみ」というブランドが機能していないのなら、今すぐに「きみ」を変えろ

私は自分が稼いだ金額の25%から50%を貯金している。今でもそうだ

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いろいろと感銘を受けたのですが、なかでも冒頭の謝辞に、深く感銘を受けました。

<1セントの大切さを教えてくれた母に、人生の意味を教えてくれた家族、シャノン、ソフィー、ニックに、そして小さな移民の子にも、アメリカの土地で生まれた子どもたちと同じようにチャンスを与えてくれたアメリカ合衆国に感謝を捧げる>

これは、著者がどんなに苦しい環境にあっても学びを忘れなかったということであり、また、自分を成功に導いた要因を正しくとらえ、かつ感謝しているということの表れです。

多くの人間は、環境に文句を言うか、それを一切忘れて傲慢になるかのどちらかですが、真の成功はそのどちらにもありません。

厳しく、現実的な教えがあると同時に、人間として大切なことにも気づかせてくれる一冊。

「ロックスターのビジネス書なんて」と偏見を持たず、また表紙のイメージに違和感を感じても、ぜひ読んでいただきたい。

きっと熱くなること、うけあいです。

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『KISSジーン・シモンズのミー・インク』ジーン・シモンズ・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822251233

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