2016年4月26日

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』 マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー・著 vol.4298

【ハーバードで人気の東洋哲学とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152096128

日本中を熱狂の渦に巻き込んだベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』のマイケル・サンデル教授。

※参考:『これからの「正義」の話をしよう』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152091312

本日ご紹介する一冊は、ハーバード大学でそのマイケル・サンデル教授を凌ぐ人気の中国史専門家、マイケル・ピュエット教授による注目の一冊です。

現在、ハーバード大学内で「経済学入門」「コンピュータ科学入門」に次いで第3位の履修者数を誇る、マイケル・ピュエット教授の「古代中国の倫理学と政治理論」を一般にわかりやすくまとめたもので、なるほど目からうろこが落ちました。

普段、欧米の自己啓発書を読んでいる方なら、きっと共感すると思いますが、われわれ現代人は、つい以下のような考え方をしてしまうと教授は説いています。

<ほとんどの人は、自分の心をのぞき込み、自分が何者かを知り、自分の人生がどうなるべきかを決めるのはいいことだと思っている。だから、どの職業が自分の個性や気質にもっともふさわしいかと思いをめぐらし、どんな相手が自分に似つかわしいかと思案する。そして、本当の自分や、就くべき職業や、運命の相手が見つかれば、充実した人生を送れるものと信じている>

『さあ、才能に目覚めよう』がベストセラーであり続けるのも、就活中の自分探しがなくならないのも、「ありのままの自分」幻想が根強いのも、基本は同じ。

※参考:『さあ、才能に目覚めよう』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532149479

しかしながら本書は、こうしたわれわれ現代人の思い込みを打ち破り、東洋哲学による新たな自己のとらえ方、人生の切り拓き方を提案します。

どんなことが書かれているか、さっそく見て行きましょう。

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自己を定義することにこだわりすぎると、ごくせまい意味に限定した自己──自分で強み、弱み、得手、不得手だと思っていること──を基盤に未来を築いてしまう恐れがある。中国の思想家なら、これでは自分の可能性のほんの一部しか見ていないことになると言うだろう

ありのままの自分だけが自分なのではない。いつでも積極的に自分自身をよりよい人間へと成長させることができる

<礼>を通して新たな自分を見つける

あらゆる生きものにはなんらかの性向がある。つまり、ものごとに決まった反応をする傾向があるということだ。花に太陽のほうへ向かって伸びる生来の性向があり、鳥や蝶が花を求める傾向を示すように、人間にも性向がある。人間の性向は、他者に感情的に反応することだ

行動パターンを打破することは、自分以外の人も鍛えようのある柔軟な存在だと気づくきっかけになる

わたしたちの言動の一つひとつは、仁を実践するか、仁を損なうかのどちらかだ

唯一の規範は仁だ。孔子にとって、仁を修養し実践することが、倫理にかなった人になるただ一つの方法だ

偉大な人物になる人とそうでない人を隔てるのは、やみくもに感性のみや知性のみに従うのではなく、「理性+感情」である心に従う能力だと孟子は説いた。心を修養することで、賢明な判断をくだす能力が育つ

はっきりした指針や安定した世界があるという観念を捨て去れれば、わたしたちに残るのは道案内をしてくれる心だ。心がすべてであり、わたしたちはともにすごす人たちとの関係を通してそれを育てていく。心はものごとを正しく感じとり、成長のための地ならしをし、自分にあるものを生かすのを助けてくれる。そうすれば、自分はこういう人間だと思っていたものがすべて変わりはじめるはずだ

宇宙のあらゆるものは、出現したときはじめは柔らかくしなやかだ。つまり、最初に生じたとき、万物は子どものようなものだ。まだ道にとても近いため、若木や草の葉のように柔らかくしなやかだ。ところが、ときとともに万物は硬くなり、ほかのすべてのものから分化する。世界を分化したものと見なせば見なすほど、道からかけ離れていく。世界を相互に関係のあるものと見なすほど、道に近づいていく。道に近づくことで力が手に入る。しなやかさと弱さの力を利用できるからだ

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孔子や孟子や老子…。中国の偉大な思想家たちの思想をたどりながら、どうすれば悪い行動習慣を打破できるのか、新たな自己を発見できるのか、欧米の自己啓発書にはない視点を打ち出しています。

キャリアや人間関係、就職、自己修養を考える上で、大いに勉強になる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー・著 早川書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152096128

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◆目次◆

1.伝統から“解放された”時代
2.世界じゅうで哲学が生まれた時代
3.毎日少しずつ自分を変える──孔子と<礼><仁>
4.心を耕して決断力を高める──孟子と<命>
5.強くなるために弱くなる──老子と<道>
6.まわりを引きつける人になる──『内業』と<精><気><神>
7.「自分中心」から脱却する──荘子と<物化>
8.「あるがまま」がよいとはかぎらない──荀子と<ことわり>
9.世界じゅうの思想が息を吹き返す時代

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