【マイナス金利で経済に何が起こるのか?】
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以前、インドネシアの博物館を訪れた時、これからの世界経済について、大きな気づきを得ました。
それは、これからの世界経済では、かつての香辛料貿易で栄えた港の周辺が栄えるだろう、という気づきです。
その博物館には、香辛料貿易のルートを刻んだ板があったのですが、それを見て、これからは欧米、アジア、インド、アフリカのいわゆる天然の良港が栄えると思ったのです。
なぜかと言うと、世界中で人口爆発が起こった場合、大量の物資が必要になるわけですが、それらは船でしか運べないからです。
どんなに飛行機が発達しても、やはり物資は船で運ぶしかない。だから、港の周辺は栄えるのです。
これからの世界経済の実体を捉えるには、「海」を学ぶこと。
そう思っていた矢先に、素晴らしい本が届いたのでご紹介します。
『海から見た世界経済』は、東海大学海洋学部教授の山田吉彦氏がまとめた、海の経済学。
海上輸送の現状から、海洋資源開発の今、岐路に立つ日本の水産業、世界の食料問題、これからの海の可能性について、各種データを紹介しながら、丁寧にまとめています。
さっそく、気になったポイントをご紹介しましょう。
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2014年の定期コンテナ船の動きを見ると、「北米向け・北米発」および「欧州向け・欧州発」の荷動きが増加傾向にあります
新航路として期待されているのが、「北極海航路」です。地球温暖化の影響を受け、北極海の氷が減少しています。そのため、かつて通年、氷に閉ざされていた北極海において、7月~11月にかけての時期だけ、船が通れるようになりました(中略)ヨーロッパからの積荷が最初に着くことができるアジアの港は、日本の太平洋に面した苫小牧、鹿島、清水などの中堅港です
日本の排他的経済水域内には、多くのコバルトリッチクラストが埋蔵されています。その埋蔵量はおよそ24億トンと推定され、採取可能量は、2.1億トンであり、時価100兆円を超える価値を持つといわれています
日本の魚介類の輸入先は、第1位がチリ(1371億円)、第2位がアメリカ(1288億円)、第3位がロシア(1183億円)、第4位が中国(1171億円)となり、上位4国だけで、全体の40%を超えています。日本が輸入している水産物の品目の内訳は、金額ではエビ2262億円、サケ・マス1901億円、マグロ1869億円の順
中国に次いで世界第2位の水産業生産量を持つ国は、インドネシアです。年間の漁業・養殖業生産量は、1927万トン(2013年)で、世界全体の10%を生産しています
日本が輸入しているエビ類の総量は約16万7000トンですが、その15.5%ほどは、インドネシアから輸入しています
インドネシアは、世界最大のカツオ・マグロの捕獲国
地中海貿易において、船が出航する前に資金が渡され、商船が無事にビジネスを終えて帰港すると、元金に利子をつけて返還する仕組みがありました。冒険貸借と呼ばれるもので、船と積み荷を担保とした金銭消費貸借契約で、海難事故にあい担保に損害を受けた場合、債務が免除されるという条件でした。このときの金利は、一航海当たり2割から3割という高利だったようです。それだけ、海難事故のリスクは高かったのでしょう。まさに、保険制度は海の世界から始まったのです
「イギリス人は島に住んでいるから、たくさんの船を持って世界中と貿易をして、7つの海の王者となった。日本もそのすばらしい島国根性を持たなければいけない」(中略)島国根性の本来の意味は、「逆境をも乗り越え前に進む、不屈の精神。チャレンジ精神」
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本書によると、2014年の世界の海上輸送量は、およそ105億トン。1990年は約43億トンだったそうなので、この25年間で、2.4倍以上増加しています。
日本経済は相変わらず低迷しているわけですが、本書を読むと、世界経済の明るい未来が見えてきます。
「北米向け・北米発」および「欧州向け・欧州発」の荷動きの増加傾向、「北極海航路」の開拓による日本の港の可能性、時価100兆円、日本の排他的経済水域内にあるというコバルトリッチクラスト、インド政府による漁業振興など、注目トピックが満載で、読んでいるだけでワクワクしてきました。
関連の企業名まで出ていたらバッチリでしたが、そこは自分で調べれば、大きなチャンスが見えてきます。
これは、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『海から見た世界経済』山田吉彦・著 ダイヤモンド社
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◆目次◆
はじめに 「海」がわかれば、世界がわかる
第1章 海で成り立つ世界経済
第2章 海を制する者が、世界を制す
第3章 「海」の奪い合い──海洋資源開発
第4章 岐路に立つ日本の水産業
第5章 7つの海で繰り広げられる水産資源争奪戦
第6章 海から生まれた文化と富
おわりに 母なる海の魅力
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