2016年3月21日

『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか?』 岩崎一郎・著 vol.4262

【指導者のための脳科学】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844374583

以前、「現代文のカリスマ」出口汪さんにエリエスでご講演いただいたことがありますが、30分ほどやった国語の授業に感銘を受けました。

若い頃、感性だと信じて疑わなかった現代文の読解問題が、100%論理で解明できることがわかったからです。

つまり、きちんと学べば国語で100点は取れるということです。

このように、世の中では曖昧なスキルと思われていることでも、じつは論理に基づいていて学習が可能である、というものは多々あります。

しかし、まさかマネジメントがそうだとは……。

本日ご紹介する一冊は、あのカリスマ経営者、稲盛和夫氏の経営哲学・言動の意味を、脳科学者が解き明かした注目の一冊。

脳科学的に部下をやる気にさせる方法、良いチームを作り、集団知性を高める方法を、バッチリ論理的に理解できます。

稲盛氏の講和や『京セラフィロソフィ』、『成功への情熱』から引用したエピソードをもとに、それを裏付ける脳科学の研究論文を紹介しており、どこから読んでも理解できる、スキマ時間読書にも最適の構成です。

稲盛氏から正式に許可をもらった本ということで、帯には、「私の経営哲学の科学的根拠がこの一冊に示されている」とコメントが載っています。

さっそく、内容を見て行きましょう。

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部下と仲が悪く、やる気をなくさせてしまうリーダーとの嫌な経験を思い出すと、脳の二つの部位が不活性化することがわかりました。エラーの検出に関わる部位(前帯状回)の動きが鈍くなり、難易度の高い課題を解くときに、ミスが起こりやすくなってしまいます。それと同時に、過去の成功体験をイメージする部位(後帯状回)も活動が鈍くなるため、自分に対してどんどん自信を失ってしまうという負のスパイラルに陥ってしまうのです

島皮質は人の気持ちを察することに関わり、ここが活性化すると人の気持ちに敏感になるため、チームワークが改善します

米国国立衛生研究所のザーン博士らの研究から、リーダーの感謝の気持ちが深くなると、メンバーのやる気を引き起こす脳内物質ドーパミンの放出量が増加することがわかっています

信頼度の高いリーダーを持ち、社会の役に立っているという気持ちが強いと、電話をかける数がそれ以外のメンバーよりも3倍高く、集めた寄付金の額が7倍も高くなっていました

脳内オキシトシンの濃度が高くなると、人に思いやりをかけたり、愛情を持って相手に接したりと、他人を信頼する行動をとるようになります。さらに、オキシトシンには次のような二つの効果もあります。一つ目は恐怖心を引き起こす扁桃体の活動を抑えることで、果敢に挑戦する気持ちが起こりやすくなります。二つ目は、やる気を引き起こす脳内物質のドーパミンの効果を増幅して、モチベーションをさらに高めるという効果です

米国ハーバード大学のタミール博士らは、話をするときと聞くときの脳の活性の違いを調べました。その結果、人は他の人の話を聞くより、自分が話をするときのほうが、気持ちを前向きにしたり、やる気を起こさせたりする脳の「モチベーション回路(報酬系回路)」が2~3倍も活性化することがわかりました

目的論型リーダーが話をしているとき、部下の脳(側頭葉)の活性は、原因論型リーダーが話をしたときの3倍にはね上がります

セロトニン欠乏の人の脳では、復讐心を抱くときに使われる脳の回路が、正常な人の5倍も活性化している

より大きな社会的意義のある“人生の目的”を持っている人は、そうでない人に比べて2.5倍以上もアルツハイマー痴呆症になりにくい

グループの中に一人だけ話をし過ぎる人がいると、集合知性が低くなる

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稲盛氏の言葉の引用に脳科学の研究論文の解説が続く、という決まったフォーマットのため、単調でやや中だるみしますが、全体としては興味深く読み進めることができました。

下手な心構え本を100冊読むより、これ一冊読んで納得した方が、リーダーシップを実践する際には役立つと感じました。

ぜひ、チェックしてみてください。

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『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか?』岩崎一郎・著 クロスメディア・パブリッシング
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844374583

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◆目次◆

Chapter1 部下との信頼関係を築く!
Chapter2 惚れられるリーダーになる!
Chapter3 仕事の意義を伝えて部下のやる気をおこす!
Chapter4 リーダーが描く未来のビジョンがメンバーを鼓舞する!
Chapter5 ミッションを掲げてメンバーの心を動かす!
Chapter6 フィロソフィを共有する!

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