2015年12月26日

『シフト 2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来』 マシュー・バロウズ・著 vol.4176

【2035年】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478026548

年末年始が近づくと、つい来年以降の予測モノを読みたくなるのですが、今年はちょっと早めにご紹介します。

本日ご紹介する一冊は、『グローバル・トレンド』の執筆責任者で、元米国「国家情報会議」分析・報告部長のマシュー・バロウズ氏が書いた、未来予測モノ。

政治、経済、軍事、テクノロジーなどの話題を中心に、これから世界がどうなっていくのか、わかりやすくまとめた一冊です。

<「個人」へのパワーシフト>、<日本は「過去」の国になる>、<ドイツはイギリスより先に没落する>、<バイオプリント肉を食べる未来>など、刺激的な見出しが並んでいますが、内容のほとんどはどこかの研究所・機関が調べたものです。

行間に、国の栄枯盛衰を見定めるプロの視点が入っていて、じつに興味深く読めました。

著者はケンブリッジ大学(博士号)で歴史学を学んだようですが、こういう視点で歴史が読めるようになると、政治・経済のニュースに触れても、判断が違ってくると思われます。

先日、セミナーにゲスト登壇したドラ・トーザンさんも、「フランスではもっと深く歴史を学ぶ」という趣旨のことをおっしゃっていましたが、まさにその深さを感じるモノの見方です。

どんなことが書かれているのか、さっそくエッセンスをチェックしてみましょう。

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個人と権力の闘いは永久になくならない。しかし長い歴史のなかで、現在その振り子は個人の側に大きく振れている

「2030年までに、世界の人口の過半数」が中間層になると見られる。2030年の世界の人口は83億人と推測されているから、EUの見積もりでは40億人以上が中間層に属することになる

重要なのは、拡大する中間層が成長のエンジンになることだ。歴史的に、中間層は資本(工場、機械、住宅などの物理的資本から、教育や保健などの人的資本まで)を積極的に増やしてきた。同時に歴史は、中間層の定着は、格差に大きく左右されることを示している

腐敗なしで資源管理ができない国は、「滅びる運命」だ(中略)残念ながら歴史的に、急速な経済発展は汚職や組織犯罪を活発にすることがわかっている

北米とヨーロッパでは向こう20年間、中間層の消費が年0.6%しか増えないとの推測もある。一方、アジア開発銀行によると、アジアの中間層の消費は2030年まで年9%のペースで増えそうだ

2013年5月、世界の90の調査機関が参加して、前代未聞の調査が行なわれた。携帯電話とそのGPS機能を利用して、コートジボワールの全国民の行動が記録・分析されたのだ。まず、携帯電話の利用状況から貧困地区がわかった。「可処分所得が増えると、移動パターンや携帯電話の使用パターンが多様化する」

2013年のピュー・リサーチセンターの調査では、一般のイスラム教徒が民主化を強く支持する一方で、政治における宗教の役割の拡大を求めていることがわかった

グローバルパワーの四つの尺度(GDP、人口、軍事費、技術投資)によれば、2030年までにアジアは北米とヨーロッパの合計を抜き、世界のパワーの中心になる。中国は2020年代に世界一の経済大国になりそうだ

2030年、途上国の多くの都市では、18歳未満の住民が60%に達する。そこに十分な雇用、教育、社会参加の機会がなければ、若者は犯罪組織にとって格好のターゲットになる

「少なくとも先進国では、20~40年後には、ほとんどの赤ん坊が体外受精で生まれるようになるだろう。親または親以外の誰かが、複数の胎芽から、生まれる子にいちばん受け継いでほしい遺伝子を持つ胎芽を選ぶ。そんなことが現実になる」(スタンフォード大学法律・生命科学センター ハンク・グリーリー所長)

交通事故の原因は90%以上が人為的ミスだから、自動運転車が普及すれば激減するはずだ。また、現在都市空間の60%が車道や駐車場など自動車のために割かれているが、アプリを使って必要なときに車を呼び出せられるようにすれば、そのスペースは大幅に減らせる

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個人と権力、中国とアメリカ、雇用とロボット…。緊張状態にある二者を出しつつ書いているので、自ずと緊張感あふれる文章になっています。

約350ページの厚い本ですが、これならさらりと読めると思います。

未来予測モノがたくさん出ているため、既視感はあるのですが、著者の政治・経済を見る目が勉強になる一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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『シフト 2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来』
マシュー・バロウズ・著 ダイヤモンド社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478026548

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◆目次◆

序章 分裂する「21世紀」の世界
第1部 メガトレンド──未来への大転換はすでに始まっている
第1章 「個人」へのパワーシフト
第2章 台頭する新興国と多極化する世界
第3章 人類は神を越えるのか
第4章 人口爆発と気候変動
第2部 ゲーム・チェンジャー──世界を変えうる四つの波乱要因
第5章 もし中国の「成長」が止まったら
第6章 テクノロジーの進歩が人類の制御を越える
第7章 第3次世界大戦を誘発するいくつかの不安要因
第8章 さまようアメリカ
第3部 2035年の世界
第9章 「核」の未来
第10章 生物兵器テロの恐怖
第11章 シリコンバレーを占拠しろ
終章 新たな世界は目前に迫っている

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