【世界企業に躍進した、JTのM&A戦略とは?】
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以前、ご紹介した『日本株は、バブルではない』に、ビジネスパーソンにとって興味深いキャリアのヒントが示されていました。
引用してみましょう。
<伊藤レポートでは、日本にプロフェッショナルなCFOが不足しているという問題点と、CFOの育成の重要性が指摘されています>
※参考:『日本株は、バブルではない』
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そう、ファイナンスがわかる人材が不足しており、しかもその職種は高収入。経営の根幹にかかわる仕事だから、将来の経営者候補にもなるのです。
本日ご紹介する一冊は、日本にはまだ少ないファイナンスのプロフェッショナルであり、JTのM&A戦略の中核として活躍する著者が、M&A成功の要諦とCFOの役割を論じた一冊。
2兆2500億円の巨大案件となった、英国のたばこメーカー、ギャラハー買収の舞台裏を詳細に書いており、M&Aの実際を学びたい人、CFOの仕事を学びたい人には、おすすめの内容です。
買収・統合時に考慮しなければならないチェックポイントや心構え、関係者への配慮などが示されており、じつに勉強になります。
買収価格の算定や統合における10の基本原則も示されており、転ばぬ前の杖として活用できる内容です。
さっそく、ポイントを見て行きましょう。
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買収の成功とは統合の成功です。統合の成功とは、初期の買収目的を果たし、支払った買収プレミアムを超えるシナジーを産み出すことが出来るかどうかにかかっています
責任権限のルールを買収会社と被買収会社間で明確にするベストタイミングは、買収完了時です
JTは一九八八年に将来の国内たばこ事業の事業量(総売上本数)を予測しました。それまでの事業量の推移を基に多変量解析を行い、二〇歳から六〇歳までの人口と一人あたりの名目GDPといった二つのパラメーターが、強力な事業量の説明変数であることが分かりました。これを用いた将来シミュレーションは、日本国内のたばこの総売上本数が一〇年後の一九九八年頃にピークアウトすることを示唆していました
上場企業で時価総額1兆八〇〇〇億円、手元現預金五〇〇〇億円の会社が、九〇〇〇億円で五〇%超の株式を握られれば、実質の買収コストは四〇〇〇億円です
競争法、いわゆる独禁法をクリアするためには、国によっては統合できないため、オペレーションごと売却する、あるいは、ブランド・資産を売却するというリスクがあります
◆買収交渉からの勇気ある撤退の判断基準
1.買収目的が果たせるか否か
2.買収のために支払うプレミアムを超えるシナジーを実現できるかどうか
交渉でピアプレッシャーほど怖いものはありません。予めしっかり授権をもらっておくことが肝要です
◆統合における10の基本原則
1.One company – one management
2.Fair and equal treatment of all employees, irrespective of company of origin
3.Speed in decision making is critical – 80/20 rule
4.Keep it simple
5.Plan delivery is our #1 priority
6.Strictly minimize disruptions to existing business
7.Capture synergies in a disciplined and systematic manner
8.Separate organization for integration management but all excom members accountable to deliver results
9.In-house management
10.Integration plans will be finalized in the first 100 days after closing
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理屈だけではわからない、買収の実際が論じられており、じつに勉強になりました。
過去のM&A案件の評価と反省も示されており、M&A実務に関わる人にとっては、転ばぬ先の杖となることでしょう。
また、一般のビジネスパーソンにとっても、ファイナンスとは何なのか、CFOは何をしているのかを学ぶ、良い機会となるでしょう。
テーマの割に平易な文章で書かれており、これはおすすめの一冊です。
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『JTのM&A』新貝康司・著 日経BP社
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◆目次◆
第1部 世界で戦う──M&A戦記
第1章 JTの海外たばこ事業
第2章 適切なガバナンスを前提とした任せる経営
第3章 JTインターナショナルの経営
第4章 なぜM&Aを選択したのか
第5章 進化するM&A
第6章 ギャラハー買収
第2部 新CFO論
第7章 門外漢がCFOになるまで
第8章 CFOのミッションとは何か
第9章 CFOはチェンジリーダーである
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