2015年8月6日

『日本株は、バブルではない』藤野英人・著 vol.4034

【必読!「伊藤レポート」とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478066353

相場格言に、「国策に売りなし」という言葉がありますが、アベノミクスはこの格言の正しさを裏付ける結果となりました。

さすがに株価も2万円を突破して、「もう終わりだろう」ムードが流れているわけですが、それに対して「まだまだ上がる」根拠を示したのが、本日ご紹介する『日本株は、バブルではない』です。

著者はご存じ、ベストセラーも多数書いている、レオス・キャピタルワークス最高運用責任者の藤野英人さんです。

本書のなかで著者は、経済産業省が音頭を取り、伊藤邦雄・一橋大学大学院商学研究科教授がまとめた通称「伊藤レポート」を紹介し、今後株価が上がり続けるという主張の根拠を示しています。

では、この「伊藤レポート」とは何なのか?

本書のなかで著者は、伊藤レポートの概要を示すとともに、それが意味するところ、どうやって株価に影響を与えるのかまで、丁寧に解説しています。

まずは、伊藤レポートの概要を、見出しだけでも見てみましょう。

◆「伊藤レポート」概要の見出し
1.企業と投資家の「協創」による持続的価値創造を
2.資本コストを上回るROE(自己資本利益率)を、そして資本効率革命を
3.全体最適に立ったインベストメント・チェーン変革を
4.企業と投資家による「高質の対話」を追求する「対話先進国」へ
5.「経営者・投資家フォーラム(仮)」の創設

なかでも重要なのは、株式投資の長期的パフォーマンスに影響するとされる、ROE向上への言及です。

資本コストは大体7%ぐらいですから、それを上回る8%以上、というのが「伊藤レポート」が目指すところであり、これを実現するために発表されたのが、「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」です。

本書にはこの2つについても解説があるのですが、中身を読んでみたところ、確かに機関投資家と上場企業経営者にとって無視できない事項が並んでおり、今後はより株主の意見を反映した経営にシフトしそうな予感がします(つまり、株が上がる可能性)。

すべてのレポート、コードを紹介するわけにはいきませんが、いくつかポイントを抜き出してみましょう。

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新しい「仕掛け」というのは、「伊藤レポート」、「スチュワードシップ・コード」、「コーポレートガバナンス・コード」の3つです。いずれもアベノミクスの成長戦略が具体的に記されている『日本再興戦略』に基づいて作成されたもので、企業と株式市場に改革を迫るアベノミクスの「新・三本の矢」ともいえるものです

伊藤レポートでは日本がそのように、投資家・株主が自らの役割をきちんと果たして、その結果企業のパフォーマンスと資産運用パフォーマンスを大きく上げていくという「資産運用大国」になることを謳っています。それこそが少子高齢化の問題解決の解であるということです

ROEは企業の収益性と株主の長期的な収益性の両方を表すものなのですが、2012年時点では欧州の主要企業の平均が15%、米国が20%であるのに対して、日本は約5%程度となっていることが伊藤レポートで指摘されています。アベノミクスによって2014年までには、日本の主要企業の平均ROEは8%程度まで上がってきましたが、それでも欧米に比べてかなり低い水準です

企業が目指すべきROEの最低目標は8%

他社には真似できない価値を提供できて新規参入も難しいようなら、価格決定力も握れるので価格競争にも巻き込まれずに高い収益を維持できます

◆長期的に株価パフォーマンスが良い企業の4つの特徴
1.顧客への価値提供力
2.適切なポジショニングと事業ポートフォリオのための選択と集中
3.継続的イノベーション
4.環境変化やリスクへの対応

伊藤レポートでは、日本にプロフェッショナルなCFOが不足しているという問題点と、CFOの育成の重要性が指摘されています

今後は上場企業ではCFOを中心に資本効率を考えながら貸借対照表上での改革が進んでいくでしょう。具体的には、
・在庫がムダに積みあがってないか
・生産のリードタイムはもっと短くできないか
・受取手形・売掛金などはもっと圧縮できないか
・設備の稼働率をもっと上げられないか
・ムダに抱えている金融資産はないか

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これまでの日本は、企業も個人もがっちりお金を貯めこみ、さして有効な投資もせずに来ていたのですが、著者によると、この企業のお金が動くことで、株式市場が盛り上がる、というのです。

「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」が伊藤レポートが目指すところを半強制・強化するとなると、本当に企業が変わる可能性はあると思います。(書ききれないので、この2つは本書で確認してください)

美味しいのは、本書の後半に、「キャッシュリッチで株価上昇余地の大きい株」一覧が載っていることで、価格と買い時を間違えなければ、有用なリストとなりそうです。

ぜひ読んでみてください。

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『日本株は、バブルではない』藤野英人・著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478066353

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◆目次◆

はじめに
第1章 「新・三本の矢」で動き出した「2匹のタヌキ」
第2章 日本経済にのしかかる3つの問題と、異次元緩和で日本はどうなるのか
第3章 「伊藤レポート」の衝撃──日本企業が本気で変わり始めている
第4章 「スチュワードシップ・コード」「コーポレートガバナンス・コード」で証券業界も投資信託も変わる
第5章 今こそ、日本株を買いなさい

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